涙
「すみません。眞さん。僕、眞さんに魔術を教えられません。」
ファルは開口一番にそう言った。
「魔術を教えられないってどういうことだ?」
眞がファルに聞いた。眞は今にも泣きそうな目でファルを見つめている。
「実は、僕のせいでこの国に魔術師がせめて来るかもしれないんです。魔術の使える人は、彼らの標的です。最悪の場合、眞さんが連れ去られてしまうかもしれません。ですから、眞さんの安全のためにも魔術は教えられません。ご……ごめんなさい。」
ファルは泣きそうな目で言った。
「なんだ。そんなことか。俺が魔術を使えるようになったらそいつらを倒すから心配するな。」
眞はほっとした顔をした。
それを聞いて、ファルは驚いたような顔をした。
「えっ? 怒らないんですか? 僕のせいでこの国が危険にさらされるかもしれないんですよ。」
「ばか。怒るわけないだろ。異能力バトルとか面白そうだ。」
「えっ?」
喜ぶ眞を見て、ファルは口をポカーンと開けた。
「ほら、早く魔術の練習を始めようぜ。」
「眞、ファルが教えたくないって言ってるのにダメに決まってるでしょ。」
私は慌てて眞を止める。
「え~。別にいいだろ。教えられないとはいわれたけれど教えたくないとは言われてない。」
「そういう問題じゃないって。ダメに決まって——」
すると眞が急に驚いたような顔でファルを見た。
私も慌ててそっちを向く。
ファルの目から……静かに涙がこぼれていた。
「えっ⁉ どうしたのファル。」私は慌ててファルに駆け寄る。
「僕、迷惑じゃないんですか?」
「どうしたんだ急に。」
眞が慌てて聞く。
「……僕のせいで危険な目に合うかもしれないんですよ。僕、本当にここにいてもいいんですか?」
「ばか。いいに決まってるだろ。それにお前は俺に魔術があるって教えてくれた。夢を見させてくれた。それなのに迷惑に思うわけないだろ。」
「じゃあ僕、本当にここにいてもいいんですか?」
「いい。いいに決まってるだろ。」
ファルの目から涙がこぼれ落ちていた。
ファルは涙を拭いて、微笑んだ。
「ありがとうございます。」
なんだか久しぶりに笑ったファルを見た気がして、私もいつの間にかうれしくなって微笑んでいた。




