眞
次の朝、私は今朝あいつが言っていた言葉について考えていた。
彼は(ファルが周りの人間の魔力を上げるほど、周りの人間は不幸になっていく)といっていた。
いったいどういう意味だろう。
ファルに聞いてみるか。
私はファルを起こしに行った。
すると、ファルの様子がおかしいことに気が付いた。
ファルは布団の中で震えていたのだ。
「どうしたの? ファル。」
「ごめんなさい。」
ファルは布団の中に体を隠したまま言った。
「何が? もしかして、昨日あの人に言われたことを気にしているの?」
ファルは昨日、突然現れた男達に(いない方がこの世界のため)と言われていた。そのことを気にしているのだろうか。
ファルは、少しだけ布団の中から顔を出してこっちを見た。
「僕のせいで、異世界から魔導士が攻めてくるかもしれないんですよ。怒ってないんですか?」
その目は涙が今にも溢れそうだった。
私は慌ててファルの頭をなでる。
「大丈夫だよ。何があってもファルのことは私が守るから。心配しないで。」
「…僕のことはいいんです。羽月さんや、この学校の皆さんに何かあったら心配です。最悪の場合、この国が滅びてしまうかもしれないんですよ?」
布団の中からファルが顔をのぞかせた。
私のことを心配してくれている顔だとすぐに分かった。
その顔がどこか可愛らしくて。私はぎゅーっとファルを抱きしめる。
「ファルはいつも優しいね。」
すると、ファルは顔を真っ赤にして私から離れた。
「や、やめてくださいよぉ…」
「だって、ファルが可愛いんだもん‼」
「…前から思っていましたけれど、羽月さんって僕のお母さんに似てますね。」
「ファルのお母さん? どんな人だったの?」
「お母さんは僕が辛いとき、いつも励ましてくれた人です。ですがある時、急になくなってしまいました。…でも僕、母がいなくなった時の記憶がないんです。」
「記憶がない? なんで?」
「分かんないんです。お父さんに後で尋ねたら、心臓発作で亡くなったと聞かされました。…そんな兆候も全然なかったのに。」
私はもう一度ファルを撫でる。私にできることなんてこのぐらいだ。
「今日は学校休む? 先生に報告しておこうか?」
「いや、大丈夫です。行きますよ。着替えていますから、羽月さんは先に行っていてください。」
「うん。分かった。」私は部屋の外に出て教室のある本館まで歩いていく。
すると、途中で眞に出会った。
「なあ、今日は楓が一緒じゃないのか?」
「後から来る。あと、楓じゃなくてファルだから。」
「ファル? あだ名か何かか?」
「まあ、そんなようなもの。」
ファルが転生してきたことはまだ言わないでおこう。
「そういえば、俺に異能力の使い方を教えてくれるって言ってただろ。いつになったら教えてくれるんだ?」
「そうだな。ファルが元気になったら一緒に特訓する? あと、正しくは異能力じゃなくて魔術だから。」
「ファルは今、元気がないのか?」
「うん。自分のせいで異世界から魔導士がせめて来るかもしれないって気に病んでる。」
「異世界から魔導士が攻めてくる? つまり、異能力バトルみたいなものか?」
眞は目を輝かせていった。
「なんでそこでワクワクするの? ファルは最悪の場合、この国が滅びるっていってたよ。かなりただことじゃなさそうだけど。」
「何言ってんだ? この国が滅びることはないだろ。俺たちが魔術っていうのを使えるようになれば、全員倒せるだろ。」
「ずいぶん楽観的だねえ。」
本当に呆れてしまう。
「まあとりあえず、今日の放課後に魔術の特訓だな!」
「えぇ~。」
ため息をつく私を気にせずに、眞は楽しそうに走っていった。
その後ろ姿を見て私はため息をつく。
本当に眞は昔と変わらない。
それに呆れつつも少し嬉しい自分がいた。




