転生
『出来損ない。』
これは僕が転生する前に何度も聞いた言葉であり、死ぬ直前に最後に聞いた言葉でもあった。
僕の魔法は促成魔法と言い、人の魔法を開花させ、新たな能力を発現させることができた。
僕が小さかったころは、だれもが僕の魔法を褒めて、すごいと言ってくれていた。
だが、この魔法を使って周りの人の魔法を底上げしているうちに、周りの人の魔力は上がり、能力は強くなり、次第に僕は必要されなくなっていった。
僕の魔法には制限があって、完全に成長しきった能力はそれ以上成長しなかった。
僕の兄も、父も、自分の能力を強化しきると僕のことを貶すようになった。
まるで使用済みの道具のように。
ある時、僕は兄に呼び出されて、家の実験室へ向かった。
すると、僕の兄が三人、僕が来るのを待ち構えていたかのように待っていた。
どうしたのか、と僕は聞いた。
兄は言った。僕はもう必要がないと。
僕を軽蔑した目で見つめていた。
兄は言った。僕を別の世界に転生させる、と。
転生させる薬は、人を処刑するときに使うものだ。
犯罪者を別の世界に転生させて、国外に追い払うために使う。
だが、最近はその薬が闇のルートから出回っていて、その気になれば簡単に手に入ってしまうようになっている。
僕はたちまち両側から兄に抑え込まれた。
一番上の兄が僕に近づいてくる。
兄は言った。僕のような出来損ないはいないほうがこの世界のためだと。
兄は注射器を取り出して僕の右腕に差した。
透明な白い液体が僕の体の中に入ってくる。
少しずつ、意識が薄れている気がした。自分が別の人間になっていくような感じだ。
意識がなくなるころには僕の体がなくなって、真っ白な世界に取り込まれた。
意識がどこか別の場所に飛んでいくような感じがした。
はぁ。私は朝食を机の上に準備しながら、小さくため息をついた。
寮生活が始まって今日でちょうど一か月、次第に教室の中のカースト順位が決まり始めていた。
根暗で人の輪に混じるのが苦手な私は、すでに教室の最底辺に位置づけられるようになってきた。
そこまでは何となく想像できていたからまだいい。
だが、私は憂鬱な理由は他にある。残念なことに同部屋の人にかなり嫌われていることだ。
彼女はカースト上位に立っている、クラスの中のマドンナだ。
教室の最上位の人と最底辺にいる人が同じ寮部屋に入った時のことを想像してみてほしい。
…ただの地獄だろう。
それにより、私は朝四時に起きて、部屋の掃除、洗濯、料理を任されてしまった。
それを全部こなそうとすると睡眠時間は四時間にも満たない。地獄の生活である。
そんなことを考えているうちに、朝食のトーストが焼けた。焼いたベーコンと卵をその上に乗せた。朝食の準備ができた。そろそろ学校が始まる。起こしてもよい頃合いだろう。
私はクラスのマドンナ—〈園崎 楓〉を起こしに、ベッドまで向かった。
ちなみに、起こす時間が遅くても早くても何かしら文句を付けられる。
私はびくびくしながら彼女に近づいた。
「おはようございます楓様。そろそろ起こしてもよろしいでしょうか。」
敬語を使うことを忘れないように気を付ける。
彼女は瞼を小さく開いた。長いまつげがぴくぴくと動く。
「…。」
「朝食の準備が整いました。起こしてもよろしいですか?」
「あの…。」彼女はこっちを見てうろたえたような表情を見せた。
今日はどっちで叱られるのだろう。私はびくびくしながら次の言葉を待つ。
「…ここ、どこですか?」
「はぇ?」
思わず私の口から変な声が漏れ出た。
「僕、転生してしまったのでしょうか?」
「はい⁉」