95話
「見つけたぞ」
サイクスがカナリアに近付く。後ろを振り返るカナリア。その目はどこか寂しげな目をしていた。退屈によるものか、どうなのかは誰も知らない。
「へぇ、僕を殺そうってこと、ね。人間が、僕を。浅はかだと思わない?参加者である、君が僕に殺せると思うかい?答えはノーだ。僕を殺すのは僕だけさ」
影から鎖が伸びる。破壊したくても出来ない。寂しげな目は消え、「愉悦」と「虚無」が混じり、死を撒き散らす暴君となる。
「う、動けねぇ。スキルは、、、使えねぇ、神と人間はここまで違うのか」
「神?これはただの副次効果だよ。権能でもない、「虚無」の副次効果さ。「神性」は知ってるかい?「神性」、死を克服した者が得る。神格と相乗し、神性が強ければ強いほど神としての位が高くなる。邪神にも存在する。
僕は、神性を権能に込めた。権能が手の中にあるなら神性は永遠に失われず、増え続けるのさ」
そう言い終わると
「つまりだ、神は名ばかりの存在なのさ」
冒涜する。神の存在意義など我関せずと踏みにじった。
「何が神性だ!!俺は神を超えるんだよ!!」
叫ぶ。無意味だった。カナリアを前にそんな事叫ぼうが無意味だ。神はそれに応えなかった。
「俺はあいつをお前から解放しないといけねぇんだよ!」
また叫ぶ。叫ぶだけだった。
「神なんざ関係ねぇ、あいつを」
「ねえ、早く終わってくれない?いちいち叫ぶのやめてよ。頭が痛くなるでしょ」
無価値だった。
鎖が絞め上げられる。苦しむサイクス、肉体が軋む音が聞こえる。
「があっ、まだ、死ね」
何故か鎖が解かれる。温情か気まぐれか、答えは誰も知らないのだ。
「何のつもりだ」
睨みながら問う。
「ははっ、別に。面白い参加者が死ぬのは刺激が足りなくなると思わない?つまりだ、君は僕を殺そうとした結果、僕の愉悦に負ける。無様だね」
「何が目的だ。俺はお前を殺そうとした、俺を殺さなくていいのか?」
「参加者の楽しみは守るべきさ。ゲームの主催としての矜持さ。で、も〜、簡単に返したら面白くないわけ」
影が伸びる。影から不死者が出てきた。それは前に呑み込まれた人間の成れの果てだった。サイクスは顔を歪める。人間としての拒否反応だった。
「じゃあ頑張ってね。僕は退散するから」
そう言い残し、その場から去る。不死者は近くに居たものに襲い掛かる習性があり、サイクスに襲い掛かる。
「アアアッ、クソがっ!!俺は結局何も!!」
自身の無能さに嘆き、不死者を殺してゆく。その嘆きはいつか大きな力になるだろう。




