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愉悦と虚無の神  作者: ka
77/121

76話

「フフ〜ン、僕の勝ちだね」

そう自慢げに喋るカナリアの視線は地面に倒れている魔王に向けられている。

魔王は火力が足りず、押し負けクリティカルヒットした。ゲームで言うと会心が発生していて会心ダメージがバカ高いカナリアの攻撃をモロに喰らったから倒れ伏している。会心ダメージの%はその時の気分によるが大体400で調子が良いとき時は5000出る。インフレについて行けねぇよ。運営は頭がイカれてんのかよ。


「はぁ、はぁ・・・・今回は私の負けだけど次は勝つからね」


「いつでも来なよ。今みたいにしてあげるよ」

魔王は脚を引きずりながら去って行った。その背中を見て

(ここで刺したらどうなるんだろうな〜)

と謎の好奇心が湧くカナリアであった。

(ルイ君の所に戻らないと)

転移を発動し闘技場に戻る。そこにはサイクスと友人や婚約者を失ったゴミ共が言い争っていた。ルイは迷っていた。知らない誰かを生き返らせるのか、そのまま放置しこれ以上の犠牲を出さないか。


「僕はどうすれば良いの?あの人達を蘇らせたら誰かが犠牲になる。こんなのどうしたら…」


「迷ってるね。そんなに難しいことかな?」


「カナ?どこ行ってたの?」


「気にしなくて良いよ。ルイ君は失わなかった運が良い人なんだよ。どうする?死体を蘇らせるかそうじゃないか。どっちが良い?「虚無」か「愉悦」の僕か。「虚無」は破壊も創造も両立してるから思い通りの結果を生み出せるけど代償があるから代価を払って欲しい。「愉悦」はどうなるか分からないギャンブル。どうしたい?」


「「虚無」の代償は?」


「そうだな〜君の家族」

ルイを指差しそう言う。思い通りにするならそれ相応の代価が要る。この代価は予想外だった。


「か、家族…僕の事情で巻き込むわけには」


「なら、カードを使いなよ。ここにある死体はカードを使う事で奇跡が起きて蘇るよ?」


「・・・・・」


(沈黙か。分かってはいたさ、ルイ君は他者を犠牲にするのは絶対に嫌う。この行き着く先が最悪な選択肢を提示してる時が愉しい!)

「さぁどうする?僕を頼り身内が消えるかカードを使い見知らぬ誰かが死ぬか。どちらにせよ」

次の言葉を言おうとした瞬間ルイがカードを取り出す

「もう良い。そんなに生き返らせて欲しいならお望み通りにしてあげるよ!!」

ルイがカードに魔力を流す。カードが光ったと思ったら死体がピクリと動き次々と生き返った。そして、別の国で大量の人が失踪した。

何故この選択をしたのか、ルイは吹っ切れてしまった。沢山のゴミに言われ続けたせいで。ルイは実感した、人間は汚く、自身が良ければそれで良いと考える生きてる価値が無い。だが、これはルイが綺麗な部分しか見なかった結果であった。

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