60話
「何言って」
その瞬間ルイが吹き飛ばされた。観客が増え、歓声もあった闘技場が静寂に包まれた。理由は明白、ルイが吹き飛ばされることなんてあり得なかったからだ。
「まさか死んでないよね?そんなので僕に挑む資格があるとでも?」
目の前の少女とも少年とも言える奴からの発言は上位者の発言であった。
「油断してた。本気で行かないとこっちが殺られる」
「腕見てみなよ」
ルイの腕には鎖が巻かれていた。カナリアが鎖を振り回すと身体が浮かび回された。そして地面に叩きつけられた。
「あははっ!自惚れていたね?今までは勝ててたから今回も同じようになると。今の状況でそんな事考えれる?ほら、答えてみてよ」
「はぁ、はぁ、考えれないさ。でもね、これを使ったらカナでもキツイと思うよ?」
「[慈悲]か。なら、こっちも同じようにさせてもらうよ」
放つ空気が変わり両者が本気だと分かる。その時そこに現れるは!なんてことは無く真面目にやるのが飽きてきたから遊んでみただけ。牽制として魔法を撃ちルイはカナリアに幻覚を見せようとしたが効かず逆に攻撃を喰らってしまった。
「弱いね〜それが[慈悲]?まだ僕は[暴食]も何にも使ってないよ?ほら、頑張れ♡頑張れ♡こんなことしても意味無いか。あはは」
「油断してるのはどっちかな?」
「ガッ!」
(吹き飛ばされた!?何もされて無かったはず。僕が遊んでいた時に何かしたな?[慈悲]の本領は、確か相手の動きの強制。いや〜面倒くさくなってきたかも。でも死は強制出来ないから一安心か)
「形勢逆転」
「はは、それは考えが甘いんじゃない?[虚想反転]」
「ガハッ」
「危ないね〜ヒヤヒヤしたよ。あれはね、嘘と真実を入れ替えるんだけど今回は僕が負ったダメージをルイ君に与えるっていう風にしたんだよ」
「はぁ、はぁ、流石元神ってことか。最悪な相手だよ」
「はは、諦めな。この戦闘は互いの主張を押し通すためのでしょ?無意味じゃん」
「これでカナが止まってくれると思ったんだけど」
「止まるわけ無いよ」
「そうだったね…」
「弱いくせによくやるよ」
「強い方だよ。カナが可笑しいだ、け」
「おや、寝てしまった。寝言になっちゃった。あはは」
(かく言う僕も疲れてはいるんだけどね。弱いのは事実なんだけど瞬間火力に対する僕の耐性がなさ過ぎるのが酷なところ。)
笑いながら闘技場から出ていった。ルイはサイクス達に担がれ医療室に連れてかれた。容赦が無いカナリアを見て観客もとい野次馬共は恐れ、再度認識した。相手は人間では無くただの化け物と。
(くだらない。元から化け物なんだから認識し直すする必要なんてなかったのにさ。本当に馬鹿だよね。はは、本当にくだらない)
その時の眼は冷たく、人が見たら凍りつきそうになるほど




