116話
魔王はカナリアの事を全て忘れた。亜空間の存在も、何もかも。カナリアに関する事を忘れられた。いずれ、そうしようと考えてたカナリア。まあ消したところで意味が無い。どうせ世界をリセットして終わりなんだし、気まぐれでやっただけ。らしい。私にはよく分からん。
〘終焉への片道切符〙 カナリア自身がプレイヤーとして、世界を「終焉」へと導くゲーム。
NPCはこの世界全ての生命、最終的に「虚無」を到来させ「終焉」に至ればゲームクリア。
このゲームにポーズも、リセットも無い。
矮小な存在が「終焉」に抗えると思うな、誰も抗えないからこそ「終焉」や「虚無」である。
「と、作者が説明してくれたから僕からの説明はこんな感じ」
砂時計が一定時間ごとに出現して、中の砂が落ちきると一つの国が「虚無」によって消される。
砂時計は破壊可能で世界中にランダムで1個出現する。砂時計が出現した場所は魔物、異形が大量に湧いてくる。これを乗り切って砂時計を破壊しよう!ってゲーム。コンテニューは無し、僕もそれに該当する。
我ながら、キツいゲームだね。さ、ゲームを始めようか。
とある国。上空に砂時計が出現し、魔物や異形が湧き出てくる。急な魔物の襲撃によってさぁ大変。逃げ惑い奴、勇敢に立ち向かう奴、誰かを押しのけ自身の安全を優先する奴。この3つに別れていた。
このゲームは唐突に始まり、砂時計を壊すか、諦めて国が滅ぶ様を見届けるか、2択なのだ。ちなみに、砂時計のHPは6万、一般人が500回〜1000回ぐらい連続で攻撃すれば壊せる。割と簡単なのだが、砂時計に近付けば近付くほど、狂気に侵される。
遠距離攻撃は効果が無いので、近付く事を強制されるのだ。
つまり、国を見捨てるか、死ぬか。周りから指を刺される人生か、潔く死ぬか。
え?人間はそんな、冷たくない?え、人間ってこういう生き物だと思ってるんだけど。
「あちゃ〜、今回は失敗か。次は・・・・ないことを祈っていなよ」
さてどうしようか。ランダムに設定したから暇になるんだよね。最後の砂時計が出るまでは。さて、何をしようか。そ、う、だ、な〜ふふっ、良いこと思いついた。
仮面を装着し転移する。国があった場所は土地すらも無かった。「虚無」によって消されたのだ。
場所は変わり、貧相な村に来ていたカナリア。怪しい仮面を着けた人物が来たことにより人間は各々の家に籠もっていた。
カナリアはメガホンを取り出し・・・・え?なんでそんなの持って。あ、私の所持品から減ってる。まあ良いか。
メガホンを使い喋る。
「愚かな人間の皆様〜。君たちは運が良い。僕の権能の実験体になれる。こんなに素晴らしい事は無いよ、泣いて喜んでね」
結界でここと外を隔離した。ふふっ、ここに「虚無」を到来させる。神格の「虚無」を全開で行こう!
カナリアの肉体が巨大な球体に変わる。大量の目があるように見えたり、触手が飛び出しているように見えたりと、形は見る人それぞれだった。
それは見る事を身体が拒むが、目を逸らす事が出来ない。
球体はドス黒く見えたり、鮮やかに見える。それは平等そのものだった。平等に破滅を、死を、齎す。神でも抗えないのである。平等が動き出した。人間は狂気に呑まれ、カナリアを崇拝し始めた。
貧相な村は元から無かったように、いや、虚空だった。そこの未来、過去、現代がすべて消えたように。本で表すのなら、ページが千切られ、そのページが見れないのと同じだった。
球体は人の形を取る。カナリアに戻ったようだ。
「「虚無」そのものになったのは初めてだね。あれが僕・・・・ふふっ、全てを無に帰すのが僕ってこと、ね。面白いじゃないか、「愉悦」が「終焉」を齎し、「虚無」へ終着する。そして「虚無」から始まる、と。最高だね」
呟く。前作でも「虚無」を全開で使わなかったのだ。[虚無の神]は人型専用の権能であり、「虚無」は異形形態専用の神格だった。
最悪のゲームは唐突に始まる。終焉を防げるのか、答えは誰も分からないのである。
メガホン返して。