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愉悦と虚無の神  作者: ka
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99話

え〜と、場所を変えて。

ここは、王城の訓練場。普段は兵士が使う場所だが、今は2人。真剣と素手、素手なのに真剣と打ち合い火花を散らしている。

「愉悦」しか使っていないカナリア、スキル全てを使い必死に戦うルイ。武器の優劣など存在せず、魔法を、魔術を使おうが無意味だった。


「ははっ、そんなので僕に勝とうとでも?考えが甘いんじゃない?やっぱ、人間が支配する世界はゴミでしかないね」


「何で人間を卑下するの?そんなに嫌い?」


「僕が遊ぶ道具でしか無い。それ以外は存在しない。まあ、嫌いってわけではないよ。でもね、人間が必要なのかと聞かれたら必要無いって答えるよ」

その発言を聞いたルイは倒れる。脚を払われたようだ。


え?今カナが速く


(くだらない思考はやめたほうが得策なのにな〜)

ルイの影から鎖が出現した。拘束される。動くことなど出来無い。

「くだらない。お前如きがゲームを終わらせれるとでも?烏滸がましいにも程があると思わない?クソみたいな事言って、世界を救う?人を助ける?お前には人を、世界を救う手なんて無いんだよ。あったとしても届かない。諦めなよ、神である僕に運命を握られ、弄ばれ、死ぬ。そんな人生良いと思わない?考える必要も、何も無い。素晴らしいじゃないか」

邪神の発言だった。慈悲も慈愛も無い、冷たい発言だった。冷たいと言っても顔は嗤っていた。口が裂けそうなぐらいに。


「うるさい。僕は、そんなの認めない。僕は、僕は、世界を救う勇者だ!!」

学園の時はカナリアに頼っていたルイが、話す。決心は希望へと昇華したのだ。勇者らしく強大な悪に立ち向かう姿だった。


「はっ、そんな事言っても何も起こらないんだよ。サイクス?もそうだった。神性だの何だの言ってたけど世界はそれに応えることなんて無かった。「虚無」から始まり「虚無」で終わる。この世界、宇宙は虚しさしか残らない。希望なんて存在しないんだよ」

淡々と告げる。


「想いは理想を叶える動力になるんだよ!!神なんて関係無い、僕は自分の手で!人を救うんだ!!」


「そうかそうか。じゃあ、ここで死ぬ?想いは理想を叶える、ね。戯言にしか過ぎないんだよ。虫は虫、太陽は太陽。結果を覆すなど到底不可能だ。全ては虚しいんだよ」

ここは過程だ。まだ変数は存在し、結果が変わる事なんて当たり前。カナリアは誤算していた。人間の願いとまだ過程に過ぎないことを。

突如眩い光が視界に映り込む。奇跡か、絶望への歩みか、光はルイの武器に集約し消える。武器が進化した。意思は無い、がルイの人への「慈悲」がそれに応え、進化を果たした。


−−−−−−−−−−−−

それは、持ち主の要望に応え、形を変える。

持ち主はどうやって使うのか、慈悲をかけるのか、変数だらけである。


変幻自在

狂気耐性

冒涜無効

崩壊拒否

事象具現

希望強化

−−−−−−−−−−−−


カナリアにメタをはれる武器になった。崩壊も冒涜も狂気も否定し希望によって理想を叶える。勇者のように、人々の前に立ち悪を打ち払う。


神は微笑んだのか、悪魔によって道を開拓されたのか、作者が遊んだのか。答えは作者の都合によって変わる。


「あいつ…やってくれたね。まあ良い、多少道がそれただけ、僕に勝つなんて到底不可能なんだから」

危機感を抱いたのか、カナリアの影が伸びた。影から蛇、象、虎、動物を模した“何か”が這い出てくる。それは冒涜的で狂気を孕んでいた。[空虚な矛]を片手に、虚月を片手に、髪は触手に、[虚数空間]のゲートは常に開きっぱなしになり万全の状態だと分かる。仮面を着け語る。


「この身体には上限が存在する。時間によって僕は消耗し人格が消え、この世界に辿り着いた僕と変わる」


「何を」


「だから、愉しもうって話さ。僕を飽きさせないでね?」

カナリアが動いた。それは速かった、目で視認するなど不可能で、死が急激に迫ることを知覚する。


「速っ」

防ぐ事など不可能だった。いや、防ごうとするのは烏滸がましい、神に逆らうのは赦されないのだ。常識は狂気によって崩れ去る。


「見えないんだ。少しは愉しむことができると思ってたのに。残念だよ、僕の首に手をかけれると思っていたのに。それと、1つ良いことを教えてあげる。()()()はプレイヤーではない。プレイヤーは殺されるか殺すしかできない。そして、クリアするには参加者が僕を殺すしか無いんだよ」

ルイはその言葉を聞き止まってしまう。

周りを見ると鎖で拘束されていることに気づく。

その状況を作ったカナリアは行動する。

覇気(オーラ)が溢れ出る、その覇気は脚に集約し、ルイの首付近を蹴る。音は鳴らなかった。

静寂がその場を支配する。

途中までは良かった、良かったがそれだけだ。だが、プレイヤーを殺すのはサポーターとしてはあり得ないこと。遠回しになったが殺しはしてないのだ。ただ、ルイに絶望と虚しさを教えたのだった。

希望は存在しないと。

カナリアはその場を去る。ルイを残して。

vanitas vanitatum et omnia vanitas

やっぱりこの世界は虚しいんだね。

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