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謎⑤

 目を開ければ、カーテンの隙間から見える外はまだ暗く布団の横に置いている電波時計に視線をやれば、午前五時を少し回った頃だった。


(あまり、眠れなかった……そりゃそうか。あんな夢を見ちまったらな)


 識が見た夢。それは、洋壱が青い顔をして何者かから逃げながら必死に助けを求める夢。何度も何度も、識の名を呼び助けを求める洋壱らしからぬ姿に識も答えようとしたが、身体が拘束されているかのように重くて動かず、声も発せられず……その繰り返しだった。少なくとも五回以上は飛び起きては寝てを繰り返していた識は、寝不足の身体を起こす。そうして、どうやら悪夢の影響で自然と強張っていたらしい身体に気づき、苦笑するしかなかった。


「とりあえず……水でも飲むか……」


 暖房代を節約するために湯たんぽを使用していたため、布団内は暖かったが出ると流石に冬用の寝間着でも寒い。悪夢の影響と寒さに震えながら台所まで向かう。識の自室は六畳ほどのコンクリートとフローリングのワンルームだ。台所と部屋の間には扉が付いており、開けると通路から玄関扉までの間から冷気が襲ってきた。余計に肌寒さを感じながら通路側の灯りを点け冷蔵庫を開けて、ろ過機能がついたボトルを取り出し、備え付けの棚から透明なプラスチック製のコップを手に取り、水を注いで口に含む。

 飲みやすく、冷えた水が喉元を通る。身体が更に冷えた気もするが、それの方がむしろありがたいとすら今の識には感じられた。


(もう少し寝た方がいいんだろうが……無理だな)


 寝る事を諦めた識は、布団に戻る事をやめて右側ベランダに近くへ配置した高さ調節が出来る白基調の机に向かい、卓上ライトを点けて腰への負担を軽減すべく買った黒いゲーミングチェアへ腰かける。

 そして、未使用のまま放置していたグレーのリングノートを手に取ると、朝倉から昨日聞いた情報をまとめる事にした。

 

 その一:洋壱の死亡推定時刻は一昨日、一月十七日の二十二時三十分から四十分の間である。

 その二:洋壱の死因は溺死。使用された水は海水であったが、洋壱の部屋に海水を使用するような水槽等はない。また、居住している練馬区は海辺からは比較的離れている。

 その三:洋壱の部屋は窓、ベランダ、玄関の全てが施錠されており、彼が常時使用している鍵は彼が普段置いている鍵置き場に置かれていた。マスターキーは管理会社が保管しており、唯一の合鍵は両親の住む実家にあった。

 その四:洋壱の両親には、事件発覚までの三日間温泉街に旅行へ行っており、死亡推定時刻は二人とも就寝していたと供述。これはホテルに問い合わせて確認済みとの事。

 その五:進藤識についてのアリバイも証明済み。代わりと言うべきか、洋壱の入職時代からの同期、永沢栄斗にはアリバイを証明する術が今のところない。


 一昨日発覚したばかりだというのに、ここまで調べがついている事に驚きつつも日本警察の捜査能力が高いのだと感心させられた。


(それとも、あの朝倉刑事が有能なのか……どちらにせよ。俺に出来ることが果たして幾つあるのやら)


 さすがにこの寒さは耐えがたくなってきたため、暖房をつけると識はノートを見つめつつ思考を巡らせるのだった。

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