知①
竹田からの連絡を待っている間、動き出した識達は、まず多中について知ることにした。
もっとも、大まかな多中の遍歴については、竹田とその部下達が既に調べている。
多中という男の過去。
決して恵まれているとは言えない家庭環境があった。
幼少期に両親が離婚し、その後養護施設に引き取られた。
そして、施設を出てからは仕事を転々としていたという。
愛に恵まれて来なかった人生。
そういう人間だからという根拠も、理屈もない。
だが……多中の異様な執念深さは、ストーカー気質と捉える事もできてしまうのでは無いか?
(いや、そう思うことで突破口が欲しいだけなのかもしれない……)
それでも――進むしかない。
わずかな可能性でもあるのなら、一つ一つその可能性を精査していく。
そうして、最後に決定打いたどり着くのが、調べるという事なのだから――
****
「さて、どうしましょうかねぇ。多中の周囲については竹田さんの領分です。連絡を待つほかないでしょう」
「では、連絡待ちを?」
「いえ? 我々は我々で動きます。世那まりかの周囲をより詳しく洗いましょうかねぇ」
「そうは言っても、世那まりかの交友関係はほぼ調べました……あ? 肝心の両親が……」
「そうです。世那まりかのご両親は、現在も連絡が取れていません。正直、嫌な予感がしているのですよ」
「まさか……」
「その可能性も考慮して、ご両親の行方を調べましょう」
世那まりかの両親と連絡が取れないことに不信感は抱いていた。
だが……もし。
もし、多中と世那まりかの繋がりの関係が、良くない方向であったとしたら?
彼女の死後のことまで、まだ調べはついてない。
だからこそ……安否が気になる。
万が一、多中が……。
(嫌な気配しかしないな……多中修次。お前は……何人の命を?)
「進藤さん、あまり険しい顔をしていると余計顔色が悪く見えますよ?」
「朝倉刑事、すみません。ついつい考えてしまって」
「心中お察ししますがねぇ。眠れていないのも理解しますが、身体にガタが来たらいざという時、対処出来ませんよ?」
「経験談ですか?」
「えぇ、その通りです」
「なるほど……」
こうして、雑談を交えながら朝倉の運転で車を走らせる。
向かうは、世那まりかの両親が現在暮らしているはずのマンションだ。
元々、世那まりかの両親は識達が向かった一軒家を購入し暮らしていた。
だが、娘が数々の不審行動をおこなった挙句、事故死したことで家を売却し、マンションにて隠居生活を送っている……はずだと、調べはついた。
問題なのは、その両親が現在行方知れずの状況になっているということ。
彼らは果たして――




