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理④

(世那まりかは……ストーカー気質、か)


 識はこの情報に、自分が光明を見出そうとしている事に気が付いた。

 ――ストーカー気質の彼女とストーカー被害にあいやすい洋壱が、もし出会っていたとしたら……。


(いや、早計すぎるな)

「進藤さん。貴方は現時点でどう思われていますか?」

「朝倉刑事……そうですね。主観が入ってしまっていても、よろしいのですか?」

「えぇ、構いません」

「自分は……洋壱と繋がりがあると思ってしまいます」

「実は、私もそう考えています。まぁ、勘になりますがねぇ」


 二人が今いるのは、乗って来た車の中だ。

 近くの自販機でそれぞれ飲み物を買い、情報を精査していた。

 識はブラックコーヒー、朝倉がミルクティーで、どちらも温かいのを選び、それを飲みつつ二人は話を続ける。


「実際、彼女の毛髪が久川さんの室内から発見されていますし、無関係ではないでしょうし。問題は、どう関わっているかですねぇ」

「多中との関係も、分かっていませんからね」

「そこはまぁ、竹田さんがなんとかしてくれるでしょう。口調やら態度やら、昭和の刑事って感じですが案外柔軟なお方なんですよ?」

「そう、なんですね」

「えぇ、私よりも人望がありますからねぇ。流石歴戦のって感じで尊敬してますよぉ?」


 含んだ言い方にも聞こえたが、識はそこにあえて言及せず、缶コーヒーを一口含むと、ゆっくり飲み込んでから朝倉に尋ねた。


「多中と世那まりか……この二人に接点があるかどうかが、俺は気になります。その点はどう思われていますか?」

「私も同感です。何かしら繋がりがあると思いますねぇ。そこが紐解ければ……と言った所です」

(洋壱……あと少しでお前の死の真相に近づける気がするんだ……頼む。俺に託したんだろ? なら、何か残してくれてるんじゃねぇのか?)


 一抹の願いを込めて、洋壱関連の資料を、携帯端末で再度見直す。何度も繰り返した作業。

 何も、見つからないままのデータの山。それでも、この中に何かないかと……期待してしまう。


(ん?)


 何度も見たはずの資料の一つに、何か引っかかりを覚えた識は、該当資料の表示を拡大して見直す。それは、洋壱が識に最後に依頼して来た時のものであり、内容は室内から盗聴器が発見されたというものだった。


(確か、この時の犯人は分からなかったんだよな……)


 盗聴器が仕掛けられた時期が、洋壱の入居前からだった事から、彼の前の住人に関する物であると結論付けて、警察に提出したのを思い出した。

 

 ――そういえば、あの時、前の住人の名を聞いた気がする。


 (名前は、山田まり……だったな。まりとまりか……似ているが……うん?)


「山田まり……彼女も黒髪だったと聞いたな……」

「山田まり? どなたです?」


 朝倉に尋ねられ、識は先程からの違和感を伝える。一通り聞き終えた朝倉は、考えこんだ後、口を開いた。


「案外、ちょっとした違和感は大事です。調べてみましょう?」


 山田まりと世那まりか。

 この二人がもし……。

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