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解⑦

(多中……こんな名前に聞き覚えは俺は無い。依頼人に田中は何人かいたが……字が違うし、何よりあんな印象的な奴なら忘れるわけがない)


 識は記憶を辿りつつ、自身の車に乗り込むと携帯端末を取り出して、洋壱からの依頼を再度確認する。だが、やはり多中に繋がりそうなものは出てこない。


(やはり、辿るとしたら直近のストーカー女か? だが、どう多中と繋がる? 何も見えてこない……せめてあの監視カメラの……クソ! 気持ちが焦ってやがる!)


 自分が思った以上に動揺している事に気づき、識は深呼吸を繰り返す。とにかく気持ちを落ち着けようとする。

 だが、それでも焦る自分に、識は苦笑するしかなかった。

 

 ****


 結局気持ちが落ち着かなかった識は、事務所に戻り自身の愛車の中で仮眠をとる事にした。背もたれに身体を預け、目を閉じる。

 浮かぶのは洋壱の亡骸のあの惨状。

 不可思議な死に方が引っかかるし、何より犯人の意図が見えない事が不気味で不快だ。

 

(ダメだ……思考が回りやがる……)


 答えが出ないのは承知の上で、識は携帯端末を手にする。暗がりでの端末の光が眩しいが、それでも見る。朝倉から提供された情報に自身が持つ情報を精査する。何度もした作業だが……それでも、何もしないよりはマシだった。


(やはり気になるのは、この女と洋壱と多中の関係。そして……殺し方だ)


 問題であるこの二点に絞って、情報を見直す事にした。視点を変えて情報を確認して行く。

 今までは、洋壱と女、洋壱と多中に絞って情報を精査していたが、この女と多中を中心にして情報を見てみる事にしたのだ。

 

(この女の恰好を多中もしていたと仮定して……となると、多中とこの女には交友関係があるのは間違いない。そして、俺の勘が正しければ……)


 そこでふと、ある事に識は気づいた。

 防犯カメラ映像の、おそらく多中と思われる人物が変装した姿の髪の毛だ。


(カツラではあるだろうが……やけに件の女の髪の艶と似ていないか?)


 髪は人の生活習慣等の影響を大きく反映させると、識は思っている。だからこその違和感。


(もしかして……いや、まだ早計だ。そもそも、この女と多中が本当に交友関係があるのかも分からない。落ち着け、俺……)


 深呼吸をして、一旦思考を切り替える。夜はまだ長い。多中の容態も気になる。

 識は、なるべく動けるようにと身体だけでも休めながら、携帯端末に視線を向ける。

 もう少し、情報を精査するつもりだ。

 ――洋壱とその両親の無念を晴らすと、決めたのだから……

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