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不⑥

「進藤さん!!」


 すぐ近くに、件の襲撃者の男が立っていたのだ。男は識めがけて、手にしている金属バットで殴りかかって来た。


(コイツ!? 俺をまっすぐ狙って来やがった!? という事は……!!)


 間一髪で男の一撃をかわした識は、次の攻撃に備えて体勢を整える。その間に、朝倉が……拳銃をかまえていた。その拳銃に気づいたのか、男は一瞬動きを止めた。それを確認した朝倉が、珍しく声を張りあげる。


「そのまま動くな!! 警察だ!! 貴様を()()()()の現行犯で逮捕する!!」


 その言葉を聞いた途端、男は手にしていた金属バッドをその場に放り投げて、駐車場のフェンスめがけて走り出した。


「待ちやがれ!」


 気付けば識は、男の後を追い走り出していた。フェンスをよじ登る男の足へ、先程彼が手放した金属バットを拾って思い切り振りかざした。


「おっらぁ!!」

 

 男の左足に金属バットが当たる。痛みで思わずフェンスから落ちて、地面に転がる男へ識が金属バットを朝倉が拳銃を向ける。観念したのか、男は両手を挙げて降参した。


 ****


 パトカーに乗せられて行く男を見つめながら、識は深く息を吐く。その隣に来た朝倉が自販機で買ったのであろう、缶コーヒーを差し出して来た。


「大丈夫ですか、進藤さん?」

「ありがとうございます、朝倉刑事」

「少しは安心出来ますかねぇ?」

「どうですかね……あの男が、簡単に口を割るとは思えません」

「おや? その理由は何故です?」

「朝倉刑事が銃を出しても、怯まなかったからです。普通なら、拳銃なんて出されたら動くのやめますよ」

「確かにそうですねぇ」


 そこで言葉を一旦区切ると、朝倉から缶コーヒーを受け取り、開ける。それを確認してから、朝倉もカフェオレの缶を開けた。まだまだ寒いこの時期、温かいコーヒーが身体に沁みわたる。

 一口づつ飲み込みながら、識はあの襲撃者の男の行動を振り返っていた。


(俺をまっすぐに狙ってきた……という事は、洋壱関連の可能性が上がったわけだ。まぁ、俺の仕事の関連って可能性も無くはないが……ソイツは低いだろう)


 洋壱関連というのは、識の勘でしかない。

 だが、少なくとも識を狙っていたのは事実だ。


(こじつけかもしれない。ただの願望でしかないのかもしれない。それでも、この男が洋壱の事件を解決するための突破口になれば……!)


「進藤さん」


 考え込んでいると、朝倉に声を再度かけられた。慌てて彼の方へ視線を向ける。朝倉は静かに息を吐き、ゆっくりと口を開いた。


「この事件、中々業が深そうですねぇ」

「それは何故です……?」

「これを見てください」


 そう言われ、識は朝倉から渡されたタブレットを見る。そこには……防犯カメラに映る洋壱の姿があった――。

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