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MINE's Z  作者: 岩野 匠鹿
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Act.8 プラン

この物語はフィクションです。

運転の際は交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。


「つまり、デチューンだ」



そう言い放たれて少しぽかんとしてしまった空と未来。

呉のチームに挑戦するための戦闘力アップを目論んでいたはずなのに、目の前の男はエンジンパワーを下げると言っているのだ。


野呂山スカイラインのレベルは高く、特に頭を張っている『レッドネイビーズ』は実力派が多く集まる上級チームと未来は言う。ハイチューン車が多い場所に、エンジンパワーを下げたデチューン車で挑むのは無謀だとお嬢2人は熟哉に噛み付いた。



「落ち着け。俺だって野呂山のレベルは知ってる。だからこそだろうがよ」



反発して落ち着かせるように言い聞かせた。

だからこそと言われても、2人の頭の上には?が浮かんで仕方がない。普通ならここはもっとパワーを引き出してストレートでちぎれる様な車に仕上げるものだと思っていたからだ。


だが、熟哉は先程Zを試乗した際の空のドライビングを見て、その決断を下したのだ。



2人を落ち着かせ、なぜZをデチューンさせるのかをしかと話す必要がある。あくまでこっちは店側で向こうは客だ。納得がいかない作業はでき兼ねる。



まず、第1の理由としては、空のコーナー攻略方法によるもの。


空はグリーンラインにてドリフト中心から未来に感化されて、アクセルワークを真髄としたグリップへと変更し、それを試乗に当てていた。

そのコーナリングは遅くはなく、Zと心を一体化させて、その場面でベストなスロットル開度を導く事が、完全では無いにせよ、出来てはいた。


だが、熟哉の観点からして、現在の空の操作はまだラフさが目立ち、460馬力をこのラフさで調整するのはロスが大きいとの事。


NA車やREのようにレスポンスが優れたエンジンならまだしも、時代が進んだとはいえツインターボのレスポンスは先述のリニアなレスポンスに比べると見劣りしてしまう。その中でコーナリング中にアクセルを少し吹かしたとしても、ブーストがかかるまでのクリアランスが、限界領域では痛いハンデだ。一旦ブーストが落ち込んでしまうと、再びパワーを復帰させるまでの時間に、相手側は前へと行ってしまうだろう。


これから呉に行くまで、空にはデチューンした後のZに呆れるほど乗ってもらい、練習をさせる必要があるのだ。



第2の理由は、そんな荒削りなテクニックで460馬力を制すには荷が重すぎる。


純正でも300馬力越えが普通になった現在だが、いくらそれに十分に応える足があったとしても、人間の感覚やスキルに関しては時代が進もうと変化などするわけが無い。人間の進化の過程で、車の操作なんて項目が前提であるわけが無いのだ。


いくら地元で敵知らずだったとしても、見る人から見たら、レベルの低さが伺える。自惚れさせないためにも、今一度自分を省みるいい機会だ。



他にも細かい理由はあるが、大体この2つの理由でデチューンをする必要性を説明。空は最初は不満気だったが、話を聞く度に素直に頷くようになってくれた。何事も吸い取ろうとする姿勢は賞賛できる。














2台のチューニングメニューが決まり、未来に代車を1台貸し出し、空もZの作業が終わるまでの数日は代車で足にしてもらう。


実は、この代車にも意味がある。


未来にはマツダスピードアクセラ2代目を貸し出した。

このアクセラには、本来1速と2速はブーストが落ちる仕様になっているが、代車のアクセラのECUは書き換えられており、ブーストは常にMAXにかかる様にされている。あとは給排気チューンとカムシャフト交換とインタークーラー容量増大を敢行し、280馬力まで引き上げてる。当然FFのままだ。

ただボディは純正の1450kgではなく、フロントを中心に軽量化し、100kg近く減量させてある。エアロはそのままだ。


空には、ホンダビートを貸し出した。パワーとトルクを根からアップさせる為に、GE8型フィットRSのL15Aを換装させ、200馬力まで引き上げている。エンジン換装にあたり、軽量化と剛性アップ、そして足回りも十分に引き締められたハイチューン車である。


しかし、元々ピーキーだったビートの特性が更にピーキーになり、並のドライバーでは手を焼く代物に仕上がっている。逆を言えば、アクセルワークを上手く熟してやらないと、車はすぐさま不機嫌になるので、いい練習となるだろう。



2人にそれぞれ貸した代車だが、熟哉がある指令を出した。


ここ福山市から東に向かって市を股げば、県境を超えて岡山県に入る。岡山県に入って最初の市が笠岡市であり、そのもう1つ東に向かえば浅口市と言う所がある。


その浅口市の北側に、天文台で有名な遥照山と言う山があり、昼は観光客や頂上にあるホテルへ向かう人が多く賑わう場所だが、夜になればひとたび人々は姿を消し、その峠道を走る車が増えてくる様な所だ。


勾配は中々キツく、全体的にコーナーが多く、特にヘアピンが多いコースとなっている。


そんな遥照山にて、指定したタイムをクリアして来いとの事だ。慣れない車なのは分かるが、気合いですぐにでも慣れてタイムアタックを始めろと言う。期間は1週間だ。


















翌日となり、2人は熟哉の言う通りに従い、岡山県浅口市の遥照山へと赴いた。

未来は場所を知っていたため、空を後ろに後を尾けさせ移動。初めて乗る車なので慣れない中だったが、無事にたどり着いた。



一旦頂上まで登ってルートを確認し、車を停めて合流。



「無茶言いますわ熟哉さま…。FFなんて乗った事ないのに」



それぞれ愚痴を零していたが、心の中では必ず意味がある事だと分かっている。まず自分に置かれた課題をクリアさせ、指定タイムを叩き出さない事には前に進めないのだ。



ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます。

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