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MINE's Z  作者: 岩野 匠鹿
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Act.7 初陣に向けて

この物語はフィクションです。

運転の際には交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。


打ち上げが終了し、3人ともGSガレージの居住スペースで眠る。お嬢2人はきちんと布団を被って寝ており、熟哉は机に突っ伏したまま放置。腰が痛くなるぞ。



先日新たに発足されたコンビチーム『GSレーシング』こと『GSR』。ヒルクライム担当の日産フェアレディZ空とダウンヒル担当のスバルBRZ未来による女流レーサー達の華やかな走り屋チームだ。




夜が明けて、部屋の中に優しく日が差し込んでくる。小鳥たちが囀る声が心地よく朝を迎えた事を知らせてくれて、それを目覚まし時計として熟哉が起床した。


ゆっくりとのそっと立ち上がり、無理な体勢で寝ていたツケが回り、腰を抑えながら苦悶な表情を浮かべていた。当然だ。


どれだけ飲んだかは覚えては無いが、目の前で寝ているお嬢2人のイタズラに巻き込まれたことだけは鮮明に覚えている。可愛い寝顔を浮かべて悪魔な事を考えていた奴らめ…顔に落書きでもしてやろうかと悪い考えが浮かんだが、くだらんと直ちに考えを改め、腰と頭を抑えながらオフィスの方へ向かった。今日も営業日なのだ。



オフィスに出向き、デスクを見ると領収書が置かれているのを見て更に怒りが込み上げるが、まぁ4000円で2人がいい関係を築けたなら良いかと気にする素振りを見せない。


頭痛薬を服用しながら、そそくさと開店準備を始める。工場のガレージを開いて、昨日結局出来なかったBRZのメンテナンスをするために入庫させた。同時に、ついででもあるならと空のZも隣のリフトへ載せる。


朝の清々しい、田舎の澄んだ空気と共に車の整備をするのは非常に気持ちがいい。

ただただ素直に動いてくれる、人間とは違い反発も文句も言わない車と向き合うことで、自然と笑顔になり酔いも覚めていく。本当に車が好きなのだ。



しばらくして、お嬢2人が眠気眼を擦りながら、空に関しては来ている服を乱していて下から手を入れてお腹を掻いていた。おっさんかよ…。未来に至ってはさすがの育ちの良さで、服も乱さず髪も乱さず…どうやって寝てたんだ?



2人の目を覚まさせるため、一旦2台のメンテナンスを中断し、電気ケトルでお湯を沸かす。そのうちにコーヒーカップを3つ用意。ひとつは熟哉が飲むようにブラックで、2つはミルクと角砂糖を入れたカフェオレで提供。


半目でお礼を言われて、2人ともゆっくりと熱々のコーヒーをすすって熱っ!!と叫びながら首を勢いよく後ろにスウェイさせた。電気ケトルで沸いた直後に入れたコーヒーだから激熱なのは当たり前だ。寝ぼけているからだと笑い、熟哉の小さな仕返しを達成させた。




3人とも落ち着いて、ある程度飲める温度まで冷めたコーヒーをすすりながら、お嬢2人は昨日話し合った事を熟哉に打ち明けた。



「チーム結成したのか。やることが早い…」



昨日会ったばかりの2人がこうも早く打ち解けてチームとなるか…と思った熟哉だが、バトルをした相手とは言葉を交わすより分かり合える事があるのも知っているため、言葉以上には不思議には思わなかった。


ただ熟哉が不思議に思ったのは、チーム名にGSガレージの名前を起用している事。ショップ直参のレースチームは聞く話だが、単なる走り屋チームの名にショップ名を入れるのはあまり聞かない。


理由を問うと、2台のチューンは熟哉の方に依頼したいからとの事。

その上で、ダブルエースが搭乗するマシンをショップのメインデモカーとし、チューニング費用等は、ショップワークスでレースに出場し、賞金を稼ぐことで払うと言う流れらしい。熟哉が寝てる間に水面下でビッグな事が決まっていたのだ。


普通なら断る話だが、ショップとしても名を売るのは良い事だし、ワークスでマシン製作からレースのマニュファクチャラーとして参加するのは興味が尽きない。ふたつ返事で了承できる案件だ。







話が纏まり、チームの初陣として野呂山に向かうことを告げた2人。熟哉の方も、その峠のレベルは知っているので、BRZはともかく、Zの現状の戦闘力では少々辛いと判断。まず、空もドライビングスキル向上と、マシンの戦闘力アップは必至となった。


未来のマシンもアップデートを実施するため、リフトに上がっている2台のメンテナンスを終わらせにかかる。単に点検をするだけなので時間はかからない。



さて、これからの行動をあらかた決めたので、あとは実行のみ。


まず、未来のBRZのアップデートから。

現在の状態は、ローパワーならではのコーナリング特化マシンに仕上げてあるが、メニューを少し変更する。

給排気チューンとECU書き換えによる燃調で240馬力程だったのを、リフト量が高いカムシャフトを組み込んで、エキゾーストマニホールドをチタン製へ変更。そして、ECUはノーマルを書き換えだったのを完全なスポーツECUへと変更し、スロットルボディの拡大化と各センサーを一新し、レブリミットを引き上げてトルクも増大。結果250馬力にまでチューンを予定。


足回りに関しては部品変更はしないが、減衰力と車高を調整してやる。元々前後の下げを揃えて、減衰力はフロントを硬めにしていたが、リアを下げてフロントをそのままに、リアを硬めてアンダーを強めに出すセッティングを施す。


エンジンパーツが揃うまで出庫は出来ないので、まだテストランとはいかない。今日は未来には代車で帰ってもらう。



次に空のZだが、これは空の兄が組んだということで、熟哉がZの足回りのセッティングを目の当たりにするのは初となる。


空に了承をもらって、熟哉が助手席に乗り込み試乗と洒落込む。

ルートとしては麓までの国道を登り下りを2往復ほど。足の動きや、エンジンの応答性、トルクの出方などを隈なく見る。パーツと睨めっこするより分かることが多い。



道の駅を過ぎて本格的にダウンヒルが開始。グリーンラインにて学んだグリップ走行を用いて安全マージンを残した攻めの走りを見せる。


一応、熟哉は空の走りを客観的に見たことがあるが、見たと言うより視界に入ってきたという方が正しいか…。86に乗って走ってZを抜いたら、後ろからそのZが煽ってきて逃げていた時だ。

熟哉からしたら、なんか煽られてるとしか思わないし、特段気にすることも無さそうな車だったのでロクに見てはいない。







往復も終わり、試乗にケリをつけてショップまで戻ってきた。やるメニューが決まったようだ。



「運転おつかれさん。Zにやること決まったでな」



降りて気が抜けている空を正すように一声をかけた。

やるメニューと言うのは…。



「ズバリ…パワーダウン。つまり、デチューンだ」


ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます。


チューニングメニューに至っては、机上の空論でしかない事をご了承ください。

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