Act.43 交換
この物語はフィクションです。
運転の際は交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。
冗談はさておき、両頬が腫れ上がって鼻血が垂れて来ていても時間は待ってくれないので早速作業へと取り掛かる。
エロ本は結局、没収と言う名目で空と未来に取られてしまったが、作業している熟哉の背後で「おぉ…うわぁ……」なんて声を上げながら食い入るように2人で読んでいる。中学生男子かよ。
マジで冗談はさておき、話を車の作業へと戻そう。
今回やる事は、出陣に向けての最後のセッティング。
それぞれ野呂山にて攻略法を見つけたので、今の足回りやECUのセッティングはそのままに、走行中に異常があり停止してしまうなどショップワークスではあってはならない。
リフトで車を上げてタイヤを取り、空に取りに行ってもらったブレーキパッドを交換する。その間に、エンジンオイルにギヤオイル(Zは上から抜く)、デフオイル、冷却水などを車から抜き取っておく。
ダウンヒルのBRZであればブレーキは生命線と言える重要な部品だ。ある程度使われたパッドで挑むのは如何なものか。パッドを交換すると同時にローターも取り外し、簡単にだが研磨して当たりを良くする。
ヒルクライムのZも同様に、左足ブレーキを酷使して強大なトルクでリアに荷重がかかる事へ抵抗するので、フロントブレーキはとても重要なのだ。
両車共に前後ブレーキパッド交換とローター研磨を終わらせ、再びブレーキを組み上げる。そして、車をもう少しリフトアップし、8〜23mmのメガネレンチを持って各部締めつけ確認し、リアから足回りや各パイピングまで全て増し締めを行うと共に、油脂類の漏れが無いかもしっかり点検。
万が一緩みでもあれば、車はあっという間に棺へと姿を変えてしまうからだ。それに、限界走行を前提としたマシンのため、少しの過小トルクだと剛性も保てないし意図する動きが出来ない可能性もある。そもそも保安基準でも下回り締め付けは必ず着いて来るので如何に大事かが伺える。
各部オイルやフルードを抜き切った事を確認し、漏れも無いことも確認。それぞれのドレンボルトを締め付け、デフオイルとBRZのギヤオイルを注入する。メーカーが推奨する粘度から変えず、正しい量まで注ぐ事が大事なのだ。
タイヤはまだ付けずにリフトダウンし、ブレーキフルードのリザーブタンクに1Lのフルード缶を差し込んでそれぞれのブレーキから1箇所ずつブリーダプラグからエアを利用しフルードを抜き取り。本来フルード交換は車検ごとでも問題無いが、両車共に膨大な熱に晒されている故に劣化は避けられないと踏んで、同DOT数は守りつつ高沸点の高品質フルードを使用。800mLほど抜き取った後、念のため空と未来に自分の車に乗ってもらい、入念にエア抜きも敢行。スポーツ走行するならエア抜きくらいはやっておきたい。
エア抜きも完了しフルード交換作業は終了。水とエアを使ってキャリパを清掃。締め付けたブリーダだが、ブレーキフルードの浸透力は中々でブリーダの極小な隙間から吸湿したフルードが入り込む可能性もあるので、ここも欠かせない。
タイヤを取り付ける前に、新しいタイヤも前持って注文していたのでこれも交換する。ここ数週間でかなりしばき倒したので、トレッドは溶け爛れ、溝も見るからに浅い。これでせっかく交換した部品も全力を出せないので、同グレードタイヤに交換する。
あとはATフルードチェンジャを使用し、ZのATフルードを交換。走行距離はあまり嵩んでいないが、ハードな使い方をしているし、過走行になると交換にリスクが付き纏うので、交換推奨距離にはまだ届かないが交換してしまう事に。駆動系は侮れない。
両車点検と油脂交換を終え、ニューのタイヤを取り付け、リフトから車を降ろした。あとはエンジンルーム内の最終確認。全てキャップは閉めてあるか、油脂類の入れ忘れや規定量まできちんと入れられているかを確認する。整備士なら確認を重ねるのは当たり前だ。まぁ熟哉はチューナーなんだけど。
工場から車を出し、軽くエンジンを吹き上げる。ストレスなくスムースに回転が上昇し、やる気十分なマシンに思わず笑みが零れてしまう。
2人に車を明け渡し、点検終了のお知らせとした。
「待たせたな。…いつまでエロ本読んでんだ?」
店内で待っていたお嬢2人は点検と交換作業1時間強待っていたはずだが、未だに熟哉が部品商の人間からもらったエロ本を食い入るように読んでいた。鼻血が出るくらい容赦無い正拳突きをカマしてきたクセに…。
慌てて読むのをやめて、何もしてないと嘯くが時既に何とやら。呆れ顔でキーを返して1つ注文する。
「ブレーキパッドもタイヤも交換したし、オイル類全て交換してある。出陣までかなり時間もあるし、慣らし運転に行って欲しいんだ。コースは任せるが、70〜80%くらいのアクセルで攻めて各オイルとタイヤを馴染ませてくれ。ただブレーキが新しいからローターとの馴染みが終わるまで無茶はするなよ」
数多くの注文を2人に投げかけ、了承した2人は意気揚々に自分の車に乗り込んだ。
「頼んだぜ。3時間くらいか…16時には戻れよ。戻った時には花菜も来てるし、すぐ出発するからな」
そう言って2人を送り出した。それぞれやるべき事を遂行し、今晩の勝負にコンディションを作るのだった。
ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます。




