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MINE's Z  作者: 岩野 匠鹿
33/44

Act.32 性能差

この物語はフィクションです。

運転の際は交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。


ヒルクライムで勝利を掲げた花菜&エボ。その勢いを失墜させるべからず、今度はダウンヒルに向けて熟哉のMR-Sと相手の4Cがスタートラインに構えていた。


4C側が熟哉に向かって手を降って合図を送り、3本の指を立てられた。そして1本ずつ指が畳まれていき、最後の1本が折れて拳に変わった瞬間に2台はアクセルを踏みつけ、MR同士の戦いが幕を開けた。



ヒルクライム終盤でも言ったように、ダウンヒル序盤ではコーナーが乱列するセクションとなる。ここでは単なるパワー等は邪魔に等しく、エンジンとシャシのトータルバランスが物を言う。


パワーだけ上がった車であればコーナーを速く曲がるのは無理な話だし、足回りやボディ剛性等のシャシチューンだけ行われてエンジンに対してオーバースペックなシャシであればコーナー中の姿勢が安定しすぎてアンダーが強くなってしまうし、旋回性能が強すぎて内側に巻き込んで行くこともある。パワーだけのチューニングよりは断然効果があるが、所謂扱いにくい車となってしまうのだ。


2台ともバランスを少し欠いたセッティングではあるが、元々ポテンシャルの高いマシンのため、上がったパワーに順応出来るボディと腕を持っている。

MR-Sはエンジンスワップしているが、基本のシリンダーブロックは変わってないし、熟哉がパワーを上げてボディを放るわけが無い。

4Cはノーマルで240馬力だが、給排気チューニングにより260馬力まで向上。元々軽い車体のため剛性に不安がある所に目をつけて全体にノーマルの1.5倍のスポット溶接増し、そして剛性アップパーツを前後とフロアに取り付け、レースカーよろしく戦闘力跳ね上がりを実現している。正直、今の熟哉のMR-Sでは相手が悪い。



弱音を吐いたとしても時既に遅し。スタートラインは踏んでいるし、第1コーナーに突っ込もうとしている。もう後戻りは出来ない、逃げることもままならない。尤も、熟哉は4Cのチューン後のスペックを知らないので、ただただレースカーとバトルしている絵面のようになる。


第1コーナーは緩やかな右コーナーから突然やって来る左ヘアピン。右コーナーからフェイントを仕掛け、ヘアピンに向かってハードブレーキングするが、こう言った場面では姿勢を崩しやすい所。両車ABSは搭載されているが、熟哉に至ってはキャンセルしている。右コーナー手前でブレーキングを行い、フロントに荷重が掛かった状態でヘアピンへと突っ込んでいく。


両車ともミッドシップでリアに荷重が偏る中で、フロントへ荷重移動させるとなると、その荷重移動のスキルをしっかり身につけていないとダウンヒルであってもフロントへのトラクションは不足してしまう。ブレーキの強化に加え、FR車に比べてかなりフロントを引き締めてセッティングしているのでかなり挙動がシビアになっているが、それを感じさせないドライビングをする2人は流石と言うべきか。


コーナー中腹でそれぞれのアクセルワークと左足ブレーキの秀逸さを見せていく場面。

4Cはターボ車なのでブースト圧が下がってしまえば圧縮比の低い1.8L車になってしまうので、コーナー中でもブースト圧を下げないようにアクセルを深く開けながら左足ブレーキでフロントにも荷重を持っていく高度なコーナーワークを実現し、綺麗にグリップでクリアして行った。

MR-Sはトルクの薄いNA車なので、どれだけ深くアクセルを踏んでも強化されたブレーキを前にすると230馬力は鳴りを潜めてしまう。そのため、ダウンヒルである事を活かし、重力によって自ずとフロントに荷重がかかる前提でドリフト開始し、アクセルをかなり深く開けながら左足ブレーキは少し踏むだけ。オーバーが強くなるやり方だが、4Cに比べて突っ込みスピードを高くして重力と慣性が車体をアウトに引っ張って行くのを利用したコーナーワークを魅せている。レベルの高い戦いだ。


コーナーでは両車ともスピードレンジは拮抗していて優劣を付けられない。突っ込みではNAである熟哉に分があるし、立ち上がりではトルクの大きい過給仕様の4Cに分がある。ましてや、ミッドシップならではのリアへのトラクションありきで4Cのトルクが活きるため、僅差で熟哉は劣勢を強いられていた。



「ほぅ…。中々出来るな」



感心している場合では無いと思うが、冷静さを欠いてしまっては愚の骨頂だ。はしゃぐ子供を眺める親のような目で前を行く4Cを眺め追いかける。



序盤のコーナー区間を終え、順位に入れ替わりは発生せずままにストレートが多くなる中盤を2台は疾走していた。

重力の影響で馬力差が出にくいと言われるダウンヒルだが、車重がほぼ同じでトルクもパワーも相手方が上であれば差が開いて行くのは至極当然だった。

ストレート途中にはパーシャル域のコーナーがポツポツと存在している。高速コーナーでは踏み続ける事が出来るMR-Sに分があるにしても、それを帳消しにしてしまう長いストレートで徐々に置いて行かれてしまうのが現実。どうにか打破出来なければ敗色濃厚だ。


しばらくリードを譲り、直線区間なのもあってアドバンテージは50m以上広がっている。逆にこれまでしか広がらないのはパーシャル域での抵抗のおかげとも言えるが、正直言ってる場合では無い。



「仕方ないか。相手が相手だし、たまにゃ本気出したりますかぁ」



ため息混じりにポツリと言葉を零した刹那、熟哉の表情が変わった。先程まで焦りの様子もなくのほほんとステアリングを握っていたのに対して、獲物を屠る猛獣のような、敵を討つ眼で前を走る4Cを睨みつけていた。再三と後ろを走った事でデータは取れている。強気で攻めるつもりの様だ。



中盤も過ぎて終盤再びコーナーが点在する区間。ストレートとコーナーがバランスよく配置され、高低差を考えなければサーキットのようなレイアウト。


4Cは相変わらずグリップ走行でクリアしていくが、その走りが最初と比べて随分と静かな走りに変わっていた。おそらく後続のMR-Sとの開いた差を見て、タイヤやエンジンをセーブした走りにシフトした模様だ。

それを見逃す熟哉では無い。そもそも、コーナーではMR-Sに分がある編成なのだ。コーナーが増える終盤で、セーブするのは如何なものか?と問い詰める様に、来たるコーナーをブレーキ浅めに減速を最小限に抑えたドリフトでクリアしていた。5ナンバーサイズ前提でホイールベースを切り詰められたボディでオーバーを抑えながら走るのは簡単なことでは無いが、今のMR-Sは不思議と簡単そうに難なくクリアする。


4Cのドライバーも、後続とのかなり開いた距離に安堵し気を抜いていたのも束の間、ミラーに目をやると真後ろで今か今かと追い抜きを仕掛けようとするMR-Sを確認できた。

ほんの十数秒前まで50mは開いていた距離が短時間でゼロまで縮められたのだ。さすがに焦りを見せてしまう。



熟哉が何をしたかと言うと、端的に言えば序盤中盤は一切本気で走っておらず、2台の性能差を十分に観察していたのだ。吊るしの状態からしても戦闘力自体は4Cが上だと踏んでいた熟哉は、下手に攻めて終盤で息切れさせる事を嫌い、確実に攻めることが出来るセクションが来るのをただただじっと待っていたのだ。


本気を出していないのに、セーブすると言っている中で何故そこまで差が広がらなかったのか? 答えは簡単で、腕の差がありすぎたのだ。性能差がある車でバトルしたとしても、腕の差が天と地の差であれば性能差など無いに等しい。4Cにとっては相手が悪かったのだ。



「覚悟しとけよ〜ここからは容赦出来んでな」




ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます。

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