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MINE's Z  作者: 岩野 匠鹿
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Act.30 豹変

この物語はフィクションです。

運転の際は交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。


レッドネイビースからの宣戦布告とも取れる挑戦を受け、2Lターボを抱えるマシン2台が野呂山北コース麓にて少量の白煙を上げながら走り出していた。



立ち上がりはトラクションがかかるエボが有利であったが、花菜はアクセルを全開までは開けずに、インテRが自分から前に行くのを待っていた。

こちらはスピードを上げてないのでインテグラが抜いていくのは当然。暫定の順位はインテグラが1位という状態でスタート。


前に行ったことを確認して、改めてエボのアクセルを踏みつける花菜。どうやらパワーは向こうの方に分がある様で、ストレート区間が多いこの峠では多少息苦しいか。

少々長いストレートに差し掛かると徐々にギャップが開いて行き、FFである事請け合い、トラクション面で有利であるはずの事を忘れてしまうくらいグングンと登っていくVTECターボ。


それもそのはず、花菜のエボは吊るしからそこまでチューンしていない。このエボは親からの譲り受けで、趣味でラリーをしていた時に使用していたマシンなので、チューン内容は中々本格的となっている。そもそもグループAホモロゲ車両なので本格なのは当たり前なのだが。

ただパワーだけは当時のWRC車両のパワーではなく、350馬力まで引き上げられている。足回りや補機類などを重点的に触られて、二次空気供給(ミスファイアリングシステムの事)やAYCを外し機械式デフを入れたりと、スタビリティ強化を怠っていない。


そんなエボよりも、前を走るインテグラの方がパワーは上だと言うこと。

インテグラは先述の通り、ボルトオンターボ仕様である。某興奮するとニヤケ顔が止まらない人が如く、FFのポテンシャルを信じ続けているのだ。


エンジン内部は圧縮比を下げてポート研磨を施しているくらいで、特にピストン以外交換しているワケではない。

しかし、外付けのターボが容量が大きい。最大ブーストは1.5kgで、元々あるVTECの実力と組み合わさり、2Lながら370馬力まで発揮する。それにインテグラは元より軽いし、そこでトルク増大なので、ヒルクライムでは良い味方だ。

トルクステアが恐ろしく発生するが、それを抑えるのがドライバーの腕次第だ。



ストレートでエンジンの実力を見せつけられた直後、第1コーナーとしてレフト30イントゥの直角コーナーが迫る。

十分にスピードが乗った状態からペダルが折れ曲がりそうなくらいブレーキを踏み込んでスピードを落とす。加速する体勢から一気に前のめりな姿勢になり、荷重が前へと移動する。その恩恵でフロントのトラクションがかかり、コーナーイン側に鼻先が食い込んで行く。


こういう場面では駆動方式の絡みでFFと四駆では攻略方法が異なる。

FFは操舵と駆動、全て前輪が請け負う。ブレーキングによってフロントに荷重が移動し、元々のフロントヘビーな特性から操舵のトラクションが強い。

リアは惰性で回っているだけなので、他のレイアウトとは違い、自分からテールスライドを起こすことはない。つまり、姿勢変化を意図的に作れないのだ。そのため、リアのセッティングをオーバー強めにセットし、少しでも早くコーナー出口に車体を向けるのが定石とも言える。

そのためには速度を殺さない事が命なので、コーナー中はアクセルを深めに踏み、それにより後ろに荷重が移動する事の対策で左足ブレーキでフロントに荷重を残す。

特にヒルクライムではフロントのトラクションが逃げるので、この攻略は必須である。ターボ搭載してるのもあり、ブーストを落とさないためにもアクセルを全開近く踏み付けてステアリングを安定して操作しなければならない。

その中で車体がオーバーステアになり膨らむ場合はサイドブレーキで無理矢理でもリアを流して意図的にテールスライドを産み、姿勢を変える。案外忙しいのだ。


一方四駆では、操舵駆動両方ともフロントが担うが、当然リアも駆動するのでFFと同じというわけにはいかない。

ブレーキングで荷重移動を起こし姿勢変化を作ったあと、慣性がまだ進行方向に残っている事を利用し、アクセルを踏みつける。慣性はアウトに膨らませようとする力と、四輪とも車体が向いたインに進もうとする力のベクトルを上手く調整し、コーナー出口へベクトルが向くようにステアリングを最小限にコントロールする。実際のラリーでも用いられる技法だ。



2台がコーナーをクリアし、しばらく続くS字区間を同様の手口で攻略して行った。



「パワーはこっちが上だし、もう結構離れてんじゃない?」



インテグラのドライバーは高を括り、ちらっと後ろを写すルームミラーを確認。



「え……全然離れん。逆に追いついてないか!」



花菜のエボはコーナーで離されること無くついて行き、ストレートにて生まれたアドバンテージを縮ませながらインテグラを煽っていた。



「速いのは直線だけ? 口ほどでもないじゃないの。タイプR乗りが聞いて呆れるわ」



ハンドルを握ってからと言うもの、花菜の性格がガラッと変わった。いつもは皆の妹で気を使えるとても良い子だ。しかし、こういう時はえげつなく攻撃的になり、少々ラフな所が目立ち始める。



「さぁて、どう食ってやろうかしら」




ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます。

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