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MINE's Z  作者: 岩野 匠鹿
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Act.20 高鳴る心

この物語はフィクションです。

実際の会社、店等とは一切関係ありません。


変な行いによって身体が冷えてしまって、埋め直したお湯で再び温まった。自分で何をしていたのかを理解したくないだろうが、記憶は鮮明穴があったら入りたい気持ちの3人。


10分くらい浸かってから3人とも風呂から上がり、風呂の栓を抜きお湯を流した。

脱衣所にて身体を拭き上げて、備え付けのバスローブを身に纏い部屋に戻る。すると…。



「あぁ…おかえりなさい3人とも。露天風呂はいかがでしたか?」



何かを悟った様な、全ての欲を捨てたかの様な、とにかく熟哉が色んな意味で白くなっていた。


そんな熟哉が、3人とも風呂に入っている時何があったのかを見て行こう。























露天風呂にワクワクしながら入って行った3人を見送り、小さくはあるが布擦れの音が聞こえて女性のキャッキャとはしゃぐ声も聞こえてメンタルがどこかへ飛んで行ってしまいそうになる熟哉。


打開策としてテレビを点けてみたは良いものの、ラブホテルのテレビなんて基本VODに繋がった状態で立ち上がり、当然の様にAVを勧めてきた。

今の状態でAVを観るなど、首を絞めると同等の行いを出来るはずもなく、ぼやきを一言こぼしてテレビを消し、無念無想の境地を目指した。これまでは前回の熟哉である。



そこからしばらく経って脳内は車のことで埋め尽くされかけていた時だった。一応集中は出来ていたため何が起こっても大丈夫だとも思っていた。


しかし、3人が風呂にダイブした時の大きな物音で熟哉の空想世界は一気に現実へと引き戻され、モノを考えようとすると浮かぶのは今頃湯船に浸かっているであろう美少女3人の入浴シーン。


頭を押さえ必死に抗うも無駄な抵抗。物事は悪い方向へと進んで行ったので、熟哉は考えるのをやめた。


ただ考えるのをやめて喋らず静かに天井一点を見詰めていると、今度は風呂の方からイヤらしい声が聞こえて来る。妙なテンションに踊らされて身体を撫で合っているときだ。



「……安寧の地は無いんか」



逃げる場所も無くし、考えることも喋ることも無くした熟哉に残された道は、ただただ悟りを開く事しかなく、全身全霊を使って脳内をお経で埋め尽くして悟りを開くことに成功したのだ。



そして現在に至る。試合が終了し燃え尽きた某ボクサーの様に真っ白になり、まっさらな状態で3人を出迎えた。



「それはウケ狙いでそうなってるんですか……?」



「なわけありますか。僕は悟りを開いたのです。今なら何をされても動じる事はありません」



気持ち悪い敬語を使用する熟哉。それを目の当たりにした3人も先程までの穴があったら入りたい気持ちも薄れて、少し和やかな気持ちになってきた。

ただ発された、何をされても動じないと言う言質が取れたので、イタズラを仕掛けてやろうと思い立つ。



「本当に何されても動じないんですか?熟哉先輩」



無論と言うが如く、静かにゆっくり頷いた白熟哉。


そんな時、熟哉に気付かれないように空と未来が背後を取った。

そして……。



「こちょこちょこちょこちょ!」



「あはははっは!や……やめ……!やめろやぁ!」



子供のイタズラの様に2人がかりで擽り倒した。動じないと宣言した熟哉も2人を相手に不動を貫くほど心頭滅却出来たわけではなかった様だ。

























女性3人でソファに座り込んで、マグカップに淹れたティーパックの熱々の緑茶を啜り、先程までの喧騒を忘れるように寛いでいた。


熟哉は何をしているかと言うと、1回頭を冷やす為に近くのコンビニまでデザートでも買ってくると言い残して部屋を後にした。歩いて行ける距離だし、フロントにも外出する事を伝えたので問題ない。



「豊上さん何買って来てくれるんでしょう?」



「センスが問われますわね。何せファミレスでチーズハンバーグとメロンソーダですから」



「可愛らしいセンスで可愛いお菓子買って来て下さったら熟哉先輩を思わずなでなでしてしまいそうです」



好き放題言ってくれる女性陣。その期待に添えるか熟哉。



コンビニに出向いて30分以上経って帰ってきた。両手にまぁまぁな量の食料を抱え、部屋のドアを蹴り開けて入ってきたのだ。


おかえりなさいと出迎えてくれた3人だが、その目線は完全に買い物袋に釘付けの様子。少しは歓迎してくれてもええやん…。


今回買ってきたのは、まずプリンを人数分、カップアイスも人数分買って冷凍庫にぶち込んだ。あとはポテトチップス各味2つずつ、そしてクッキーやコンビニ特有のスイーツなどなど、ジュースも1.5Lペットボトルを5本くらい……まぁ大量買いである。



「豊上さんって案外」



「こういう所は男の選択って感じがしますね」



「文句あるんなら食わんくていいぞ」



白熟哉から素熟哉に戻って、買ってきたものにコメントを付けられた。

文句では無いからありがたく頂戴する姿勢の3人だが、このラインナップは間違いなく女性向きでは無い。

まぁ4人楽しく談笑するなら、菓子パーティー出来るくらいのが良いだろう。



ポテトチップスをパーティ開けしてテーブルに広げ、クッキーをつまみながらプリンをゆっくりと食べてワイワイと歓談する。


女子が多めの今でしか言えない事とか、実は過去にこんな恥ずかしい事暴露だとか、まさに下らない話で大盛り上がりを見せていた。



「もうこれだけ仲良くなったんだったら、お互い敬語はやめないか?全員さん付けの苗字呼びだろ?」



熟哉から提案が出る。

女性陣はあくまで他人の寄せ集めで結成されたチームなので、ずっと敬語で話して名前を呼ぶ時もさん付けしていた。どこか他人行儀だったのだ。


これからチームは広島県内のみならず、中国地方四国地方、九州や関西東北関東などなど活動を広めていく予定だ。それならいつまでも他人行儀でどこか壁を設けて接するより、仲間なんだからもっと砕けようぜって話だ。



「たしかにそれはありますわ。私はこの話し方は崩せませんが、名前呼びは変えたいですわ」



「私も豊上先輩の呼び名は変えたくないですが、月野さんや小林さんとはもっと親密になりたいです!」



この提案には皆賛同してくれた。

メタい話だと設定上、未来と花菜は変えられない部分があるのでそこは継続するが、空に関しては何も縛るものは無いので、ここで一気に距離を近づけたい。



「じゃ…じゃあ、小林さんのことを未来ちゃんって呼びます。幹島さんは花菜ちゃんで」



「私も月野さんのことは空さんと、幹島さんは花菜ちゃんと呼びますわ」



こういう風に呼び方を変えてくれるだけでも違うだろう。敬語はゆくゆく砕けて行くとも思うし。



「では……空さんと未来さんのこと、お姉ちゃんって呼んでも良いですか…?」



「「……!?」」



熟哉含む3人に電撃が走った。

空は2人兄妹の末で妹弟はいないし、未来はひとりっ子なのでこういう呼ばれ方は初めてだった。そんな中に花菜からお姉ちゃん呼びをされたのでは、2人の心にキュッと来るものがあった。



「「花菜ちゃ〜ん♡」」



そう言ってお姉ちゃん2人が花菜にギューっと抱き締めた。気持ちは分かるなぁと和やかに見詰める熟哉。

過去の花菜を知る熟哉からしたら意外な提案が来たと思ったが、これはこれでアリだ。



「じゃあ改めて、皆よろしくね」



流れも良くなり、大団円で菓子パーティーはお開きとなった。







時計を見るともう日付が変わりそうな時間。明日は福山に帰って一旦それぞれ解散する。皆用事もあるだろうし、休息も兼ねてショップも臨時休業を貫く。

そのためには昼前には向こうへ着きたいので、そろそろ就寝の時間だ。


ベッドは大きいサイズが1つしかないので、4人並んで寝るにはあまりに狭い。


熟哉はソファで寝るから、今日の疲れがある3人はベッドで寝ることを指示した。3人は一緒に寝たがっていたが、強い意志で反対した。ベッドまで一緒になったんじゃ理性が持たない。


部屋を暗転させ、それぞれの寝床へ着く。ベッドでは花菜を挟んで端に空と未来が来る配置。ソファに熟哉が自分の上着をかけて寝る形だ。




3人が寝静まり、寝息が聞こえ始めた頃合に、熟哉は起き上がった。

夜這いを仕掛けるわけでは断じてなくて、3人が風呂から上がったあとすぐに買い物に出かけて菓子パーティーが始まったので、熟哉自身が風呂に入るタイミングを逃していたのだ。


それに3人が起きてる時に壁越しで服を脱ぐのも小っ恥ずかしいものがあるので、この時を待っていたのだ。



「よく寝てるな。この隙じゃ、夜風呂行ってくるべ」



囁くような小声で一応寝耳に伝え置いたので、静かに露天風呂へと向かって行った。



「……? 熟哉さん?」


























お湯が一切張られていない露天風呂を目の当たりにして、栓を抜いて行きやがったとぼやきながら再びお湯を溜め始めた。


その間、腰にタオルを巻いているとはいえ素っ裸で外で待つのも落ち着かないし、冬では無いにしろ寒い。


併設されているサウナのスイッチを入れて、サウナ内であせをかいて待機する事に。



「あっちぃ…上がったらコンビニに行ってスポドリとオロナC買お。オロポが飲みたくなるな」



サウナ上がりのオロポほど気持ちの良い物はない。整った後のご褒美だな。


室温も最高温度に達し、呼吸が苦しくなり全身から汗が滲み出てくる。仕事でかく汗とは違い、体内から毒素を抜いてスッキリと、とても良い汗をかいているように感じる。


そろそろかとスクっと立ち上がり、サウナの扉を解放。風呂のお湯は湯気を立てて満杯ギリギリまで溜まって熟哉が入るのを今か今かと待ちわびている。


どうせ風呂に入ってもまた汗をかくなら湯温を冷まさせまいと思い、壁にかかっていた湯船の蓋を半分ほど被せて保温しつつ、熟哉が入るスペースだけ残して開けていた。



「我ながら完璧な案だ。これなら湯も冷めんし虫とかも入って来んだろ」



自画自賛しながら開けたスペースからゆっくりと入浴して湯気を纏った身体を沈める。お湯の温もりが心地よく、体の疲れを湯が吸収してくれている様だ。



ため息を青天井に吹きかけ、程よく温暖な湯の布団を身体に巻き付けて脱力。心の底から寛いでいた。



そして油断もしていた。



ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます。

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