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MINE's Z  作者: 岩野 匠鹿
13/44

Act.12 仲間

この物語はフィクションです。

運転の際は交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。


「あの燻りは計算通りだ」



熟哉は2人が驚くべき事を打ち明けた。



アクセラを組んだのは当然、代車の持ち主である熟哉率いるGSガレージである。ショップのデモカー兼代車として、5人乗れる乗用車ライクなスポーツとして店に置いていた車だ。


ガチガチなスポーツ走行を前提として組んでいなくて、どちらかと言えば、峠攻めの様なハードなドライビングであれば、まず速く走れる代物では無いとの事。

日常使いを重きにおいて、しかしもっさりとしたレスポンスの悪い、そして踏んだ瞬間パワーがあり楽しさを感じる様な車に仕上げてあるのだ。


そのため、低速ギアのブースト圧低下をキャンセルし、スキルに覚えのない人でもコーナーを安定して曲がれるために、FFでのスポーツ走行ではナンセンスなドアンダーな足にしてある。そして、過度に硬い足で走り屋の車を演出。そんな物を未来に乗らせて、タイムをクリアするよう課していた。



それを聞いて体の力が抜けたのか、ぐたぁ…と机に倒れ込む未来。今までの自分自身の技術が無いだとかセンスが無いだとか自責の念に駆られたのは何だったのかと思うのも当然だ。


熟哉には狙いがあったのだ。

わざとタイムを出すのに不利な車を渡した理由が。



「よく聞け小林さん。実はな、アクセラの実力が向かないと分かったら、小林さんはどうするかを確かめたんだ」



未来はBRZのセッティングやチューニングの際、熟哉が出したセッティングに上手くハマらない時がある。それも当然、お互い人間なので得意不得意はあるし、それぞれの速い走り方というのがあるからだ。

そういう時は、熟哉から小さいことでも報告して欲しいと言われており、素直に従って情報を上げていた。


だが、代車を渡され、慣れないFFでタイムを出せと言われ困惑しない方が難しい。

実際走ってみると案の定上手く走れず、速いは速いが並に比べればの話で、いざライバルを置いて走れるかと言われれば怪しい。


工夫して頭を駆使して走っても上がらないタイムを目の当たりにし、大きくなる焦りに邪魔され、報告と言う大事なことを忘れてすっぽかしていたのだ。


熟哉は、いつ未来からアクセラがかなり走りづらいがセッティングは正しいのか?と言われるのかを待っていたが、最終日まで引っ張られるとは考えてもなかった。

厳しい課題を置いたかなと反省しつつ、自分が乗る車のセッティングが果たしてコースと合っているのかを判断出来なければ、詰められる所も詰められないので、クリアせずにはいられない課題でもあるのだ。



「でも、こうやってちゃんと問題点を言ってくれたね。じゃあ今日のタイムアタックに備えてセッティングを割り出すとしよう」



ようやくアクセラのセッティングを変えてくれるようだ。期限を先延ばしにはしてくれないが、未来のセンスと、この一週間の走り込みのおかげでベースは出来上がっている。半日も走れば完成すると踏んだのだ。


お嬢2人はハイタッチを交わし、課題をクリア出来る目処が経ちそうな今を喜び合っていた。お互いを高め合う仲間と言うのは、何よりも大事なのだ。



「作業入る前に部品取ってくるな。月野さん行ってくれんかったんでね」



空をチラッと睨む熟哉と、ニヤケ顔で惚ける空。それを見てクスクスと笑って元気が出た未来。いい調子だ。

















熟哉は軽トラに乗り込み、部品商へ出発した。その車内で、あることを思い出した。



「……。警戒はしていてやろうか」













































いよいよ最終日まで来て、泣いても笑ってもブチ切れても、この夜の走りが全てを決めてしまう。


遥照山山頂には、いつもよりも張り詰めて今にもはち切れそうなくらい空気が重い。



「悔いない走りを致しましょう。絶対クリアしますわ!」



「同感です!負けませんよ!」



お互いに気を高め合って、必ず2人で課題を成し遂げようと鼓舞。立派な最速コンビとなろうとしていた。


そんな時、この頂上の駐車場広場に上がってくる2台の車があった。こんな時間に珍しいと首を傾げる2人。

どうする?と少々困惑した空だったが、関係ないと走り込みを決行しようとする未来。

その2人を静止させるように、上がってきた2台からドライバーが降りてきた。若い男の2人だった。



「アレか。最近俺らの峠(シマ)で走ってるって言う2台」



「女かよ。ビビるほどでもねぇな。でも可愛くね?」



包み隠すこともせず、こちらに聞こえる声量で何か話している。2人ともああいう男に絡まれる経験は無いが、いい雰囲気ではない事は重々察した。嫌な予感がする。



「よぅよぅお姉さん達。ここを誰の峠と思ってる?」



開口1発目からなんと典型的な…。


彼らの主張では、誰に断ってこの峠を走ってるのか。この峠最速は我々2人組だ。お前らとは格が違う。さっさと場を空けて帰りやがれ。…である。


今どき公園を占拠したがる子供みたいな奴いるんだ…と思いつつ、下らないと未来は相手にしようとしなかった。

一方空はキョドっていたので完全に相手に舐められていた。どかないって言うなら、この女と遊んでやるよと空の手首を荒々しく掴んで来る。



「止めなさい!」



未来はそう言って、掴んできた男に強烈なビンタをかます。



「大の男がこんな事して恥ずかしくないんですの!?」



怒鳴って威嚇するが、野郎2人は全く気に咎めず。何なら強気な女は好きだと言って未来の方にも来る始末。

女手2人では何も抗う術がない。未来も強気に行ったが予想外に相手も引かず来たため、怯えてしまっていた。


万事休すか…。



するとこの広場にまた1台の車がやって来た。それも結構な勢いでやって来て、こちらに目掛けて突っ込んでくる!



「何だっ何だっ!?」



全員ヤバいと察した瞬間、先程までの絡みを解いて避難の体勢に入った。


だがそれを逃がすまいと4人の周りをドリフトターンでグルグルと白煙を撒き散らしながら回っている

そして、出口方面を塞ぐように車が止まった。止まって分かったが、車種はスズキZC32S型スイフトスポーツ。音からしても普通のスイフトじゃない事は一目瞭然だった。


そして、白煙が止み始めた中ドアが開き、出てきたのは。



「熟哉さま!」




ここまでお読み下さり、誠にありがとうございます。

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