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ローズベルト冒険譚  作者: 青いバック
始まり
9/9

9話 メタモルフォーゼ

 泡にまみれた手で食べ終わった食器を洗う。カチャカチャと陶器と陶器が擦れる音が水の音と混ざって静かな台所に響く。二つの音に三つ目の音が乗る。


「ラリンはさ、そのネックレスお父さんから貰って言ったよね?その前はお父さんのおじいさんが持ってたの?」


「そうですね。おじいちゃんからお父さんへ渡って、私へ来た感じです。渡される時にお父さんから、いつか大いなる試練に立ち向かうことになるとか言われて、その時はさっぱりだったんですけど今なら何となく分かる気がしますね」


「……というと?」


「本当に何となくですけど、これから私はカインさん達と旅に出る気がするんです。それが大いなる試練なんじゃないかなって。まあ、私の勝手な想像なのであれですけどね」


 ラリンは頬を緩めて息を吐き出すように笑う。カインはラリンを旅に誘う気はなかった。だから、これはありえない話だなと思って泡と流す。


「おっ、帰ってきたね二人とも」


「本当にくつろいでますね。師匠」


「まあまあそう怒りなさんなって。シワが増えるよ」


「若いのでその心配は無いです。どっちかと言うと師匠の方じゃないですか?心配しないといけないの」


「カイン、それ以上言うと殴るよ」


「はい、ごめんなさい」


「それはさておき、本題に入ろうか」


「本題?」


 何も知らない本題に首を傾げる。本題、中心となる話題という意味が含まれているが脈絡もなく中心になる話題。カインは大体の流れを把握した。別に誰も口にはしてないが、空気感とチェリーの話口調で大抵の事は理解出来た。


「単刀直入に言うと、ラリン。君をパーティに入れたい」


「私をですか?」


「うん、君をだ。お母さんにはもう了承は得ている」


「カインさん、予感的中しましたね」


 コソッと二人には聞こえない声で耳打ちする。


「でもいいの?危険が伴って、何が起きるか分からないよ」


「いいんです。このネックレスを受け取ったなら、それに答えるのが私の役目ですから」


 カインはこの決心は揺らがない、そう思った。強く弛むことの無い炎は燃え上がり、ネックレスが呼応するように眩く光る。夕焼けのようなオレンジが家に充満して、チェリーが強く握るんだ、と叫ぶ。


 ギュッと、力を込めてネックレスを包み込むと割れる音ともにラリンを包んでいく。数秒後、光は消える。


「これは継承成功だね」


「これが私……?」


 灰色だった髪はオレンジに染まって、瞳は燃え盛るような真紅のような色に変わっていた。腕には鉄製のグローブが嵌められており首から胸にかけて、プロテクターのようなものが飾られていた。


「クリン・アルバルクの遺した力がラリンの体に乗り移ったんだ。力とかは、多少相互すると思うけど大体は同じのはずさ。メタモルフォーゼとでも名付けておこうか」


「メタモルフォーゼ?どういう意味ですか、それ」


「変身とかそういう意味さ。安直だけど分かりやすいだろう?」


「確かにわかりやすいですね。語呂もいいですし」


「あ、そうだ。ラリン、もう一度ネックレスを強く握ってみて」


「こうですか?」


 パンっと、早変わりして変身する前の姿に戻る。


「うん。ちゃんと継承されてるね。最後に聞こう、ラリン仲間になってくれるかい?」


「はい、喜んで!」

ではまた。

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