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ローズベルト冒険譚  作者: 青いバック
始まり
5/9

5話 筋肉圧縮

 一ヶ月、カインは特訓を続けた。やらなければならない使命が可視化されたことによって、やる気はみるみると湧いて地獄だと思っていた気持ちも気付いたら薄れていた。


 そして、特訓を終えて新たな問題が一つあった。あまりにも無理やりな筋肉強化をしたためゴリゴリのマッチョになってしまい、町を歩けば子供が化け物と泣くようになってしまった。腕は丸太のように太く、太ももは石のように硬くなっていて化け物だと言われても仕方ない風貌だった。


 世界を守ろうとしている男が化け物と言われては世話がない。カインはこのことをチェリーに相談することにした。


「師匠、この体つきどうにかなりませんか?町歩くと子供が泣くんですよ」


「うぅむ、確かにこれは怖いな。とてもじゃないが世界を救う勇者には見えないな。どちらかと言うと蛮族の王だな」


 顎に手を当ててサラッと酷いことを言うチェリー。


「これからずっと特訓を続けていく度に、人間じゃなくなる気がして怖いんですよね」


「もう既に人間には見えないが。しかし、愛弟子の悩みを解決するのも師匠の役目。この私に任せなさーい」


 チェリーは胸をどんと一回叩いて誇らしげに言っているが、カインはやや不安に思っていた。一体どんなことをされるのか、未知の不安が襲ってくる。その場から動かないように言われ、チェリーは筋肉圧縮と詠唱する。


 丸太のようだった腕は細枝のようになって、石のように硬かった太ももは野菜のように柔らかくなる。一ヶ月前のひ弱だった頃のカインの姿が光が消えると、同時に彼方向こうからやってきた。


「よし、完了」


「これ元の姿に戻ってますけど大丈夫なんですか?」


「大丈夫だとも。見た目はひ弱でナメクジにも負けそうだが、実際は見た目の十倍ほどの筋力が圧縮されている。試しにそこの木でも殴ってみなよ」


 言われるがままに木を殴ってみる。見た目も筋力も一ヶ月前に戻ってしまっているのならば、木を殴った瞬間に指が数本イカれるだろう。そして、チェリーの言う通りに筋肉が圧縮されているなら木がイカレてしまうだろう。さて、神のイタズラはどちらかに傾くのか。カインは拳を固めて木を殴る。


 ミキミキ、と音を立てて木は倒れる。神のイタズラは後者の方に傾いたようで、木も地面に倒れる。指は正常にピースが出来た。圧縮された筋肉は木すらも簡単に折れるようになっていた。


「なっ?言った通りでしょ?私も筋肉圧縮してるんだよ、こんなひ弱でか弱い美少女の姿をしてるけど」


「何百年も生きてるから美少女というよりかは、おばさんじゃ……」


「ん?何か言ったかね、愛弟子?」


 みぞおちに二トンの石を投げつけられたような痛みが走る。ヒリヒリと焼けるように痛く、その正体は額に青筋を立てて、殺意を剥き出しにしたチェリーの拳だった。


「い、いえ。何も言ってません……」


 一ヶ月前のカインからこのパンチであの世に逝っていたことどろう。特訓の成果が思わぬ形で実感出来る。


「よろしい。では、一ヶ月の集大成を確かめるべく明日は私と手合わせしようか」


「て、手合わせですか?」


 あのパンチを受けた後に手合わせをしようと言われて、はい喜んでとは素直に言えない。オークのような筋肉をしたカインのみぞおちをものともしなかった、チェリーの拳は脳が直感的に危険信号を出していた。


 これはもしかしたらおばさんと言われ急遽チェリーが決めたことでは無いのか、と邪推すらもしてしまう。それほどにやりたくなかった。


「え〜もしかして男のくせに怖がってるんですか〜?こんな美少女に怖がってるなんてダサ〜」


 見え透いた煽りをチェリーはする。


「……怖がってなんかいませんし?いやいや、全然怖がってなんかいませんし。いいですよ、明日やりましょう手合わせ」


「はい、じゃあ決まりね」


 カインは単純でアホなところであった。こんな見え透いた乗らせるためにしか言ってないような言葉にもムキになるようなアホだった。


 どうしようもないアホの思考のせいでカインはやりたくなかった手合わせをすることになってしまった。

ではまた。

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