【アルドレイ】
甘い。
「レイ」
甘い、匂いがする。
「アルドレイ。」
重たい瞼を上げる。
霞んだ視界から段々と明確になる視界には、懐かしい友の顔があった。
「しゅ、がー?」
「よう。」
随分と長く寝ていたような感覚だ。
身体が全部重たい。思考が鈍くて、のんびりしている。
「俺、寝てた?」
「………寝過ぎだ、ボケ。」
「ひど。」
ポヤポヤとした自分の口調。どこか違和感を感じつつ、ふふっと笑って。そしてそっと目線を横に向ける。何もなかった。真っ暗な、一寸の光もない世界。
何となく察した。
「……俺、死んだ?」
「ああ。」
「そっか。なら契約執行だね。」
俺の魂をあげる。
そう契約していた。だから、長生きできた。あれ。でも長く生きたっけ?途中から全く記憶がないや。
「…てめえの魂が食いたかった。」
「うん?うん、どうぞ。」
「でも、アルドレイ…お前は早死した。」
「え?」
目線をシュガーに戻す。シュガーの顔が、悔しそうに歪んでいた。
「俺の契約は不執行で、契約は無効だ。」
「シュガー…」
「生まれ変われ。」
魂を喰われたら、未来永劫生まれ変わることはない。でも食われなければ、生まれ変わる。でも、何故だろうか。
「……シュガー……困るんだけど。」
「あ?」
生まれ変わるつもりなんて、サラサラなかった。それはシュガーに出会う前から望んだことなどない。
「俺は、ーー死にたかったんだ。」
生き永らえたかったことは、なかった。
父さんが商人から王になるのも、自分がどんどん立場が責任ある形になるのも、本当は逃げたかった。逃げるために病から抜け出したかった。生がこんなにも辛いなら、それすらも逃げたかった。逃げるために力が欲しかっただけなのだ。
「シュガー。」
目の前でこっちを驚いた顔で見る友人。
「契約が生きなかったなら仕方ない。なら、新たな契約だ。」
本当に悪魔だったのは、誰だろうな。
なぁ、シュガー。




