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悪女語り。  作者: 林 空花
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【女神】



可愛い子、、。


そう初めて思ったのは、自分とは違う生物だった。


女神族、悪魔族、人間。

人間が言語と知性を操る生物を、この3つに分けたけれど。実際はもっと色んな生物が言語を操り、知性を持っている。

人間はあまりにも無力で脆弱で、私たちにとって食い物でもないから、干渉することなく私達は人間がいる世界と自分たちの世界を切り分けた。そうすることでいつしか人間は私達のことなど忘れていって、私達は神や信仰、畏怖、物語の対象としてしか残されなかった。

それで良かった。興味もなかったから。

だけど永劫にも近い年月の中で、時々遊び半分で人間界に行った。楽しくはなかったが、暇潰しにはなった。


暇潰しのはずだったの。


びしゃっ、、

子供が目の前で泥の水溜まりに転がる。


少し驚いて、歩いていた私の足が止まった。

泥水を被った齢5歳くらいであろう少年が、自分に何が起こったのか理解せずにキョトンとしたまま顔を上げる。

白銀の髪に、キラキラとした碧の瞳に、幼いながらも端正さが分かる顔立ち。泥水がポタポタと地面に落ちていく。

少年は私と目が合った。するとニパァッと何がおかしいのか、花咲くように笑った。

私は、はじめて「可愛い」という言葉を自分の心で理解した。


「ーーさまっ」


子は、孤児だった。

私は何を思ったのか子育てをはじめた。自分の世界には帰らず、人間界に留まった。

私が愛したからか、副反応が生じ、子は子の身体のまま成長しなくなった。

無邪気なままでいてほしかったが、どんどん性格だけは大人びていき、でも私が可愛いと思った笑みは変わらなくて。だから成熟しても構わなかった。

私達ははじめは、化け物、異端として見られた。歳を取らない子供に、変な力を持つ女。人間界で不気味でも仕方ない。

本当は子を女神族の地に連れ行っても良かったが、他の女神族に気に入られるのも、嫌われるのも面倒だし。何よりこの子は、海の見えるこの土地で眺めているのが1番良いと思っていた。

治癒の力を使えば、簡単に私達は神格化された。そして私達は住める土地をもらい、そこを神殿にした。そして信仰の対象となろうとした時だった。


子が、死病を患った。


この子を喪うのは、まだ駄目だと思った。

まだ可愛がり足りない。眺めたりない。私は、この子の育手なのだから。


悪魔族が人間を治したと聞いたのは、

その時だった。


私は病は治せないが、等価交換なら別だ。

寿命の入れ替え。悪魔の加護があるなら、その寿命は長い。

罪悪感は今もない、私の可愛い子を私のために生きながらせた。誰を犠牲にしても、何の興味もない。


ただ、もし、一つ後悔のようなものがあるとしたら、それは……


悪魔が、ーー不幸を望んでしまったこと。

私の子の未来を。

呪いは、生まれ変わり、どんな姿に変わっても子々孫々永劫に解かれることはない。



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