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悪女語り。  作者: 林 空花
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隠したかったこと



イクラニ国で力をつける為に、まずイクラニ国で国王と同等の力を持つ後宮勢力のトップとなっていた王妃に接近した。

王妃はハルメニア王朝の初期時代の骨董を収集していた。クルワン家である俺が、ハルメニア王朝の遺産を集めることは難しくはなかった。

王妃は俺から物を受け取り、俺と会話をしていく中で心を許していった。人質となり、侍女やメイドから飯を貰う中で女の機微を細かく察するようになっていった俺にとって、王妃の心中の悩みは分かりやすかった。……王妃が産んだ子は男児ではあったが、後宮で多く産まれた中で王妃の子は5番目の男児であった。王妃の家柄もあり、王位継承の序列は一位だが、それでも不安は拭えない。

俺はいつしかその王子の遊び相手にもなり、そしてその経緯から国王にも近づけていった。国王は、弱かった。国の責務を背負えるだけの男ではなく、周囲の意見に流されていく。

王妃と王子に近づき、俺の囁く意見に耳も心も寄せるようにした。更に彼らによって国王にも俺の考えを囁いた。国王は段々人間不信に陥った。周囲にいる人間は、全員自分を操る悪い奴らで、国益など考えていないと。実際そうであったが、国王は既存の貴族や役人などを処断していった。そして、彼に対して一番甘い言葉を囁く俺が残った。

国にとって一番の害虫が残ったことに、気づける者は権力者にはいなかった。


そして、最側近となったことで得られたのは、情報力。ありとあらゆる国の情報を集める中で、歴史すらを知っていった。歴史を知ることで、現在の民族関係、国関係、宗教関係を知り、対立関係を深く理解していった。その中で、どうしても計画に邪魔な存在があることが分かった。そして、どうしても分からない未知の存在も分かった。


だから、どうしてもこの地を混乱に陥れなければならなかった。






「ユン様っ、待ってください!」


ミランダとマクシミリアンの制止を振り払ってユンは、窓の外を見た途端、走り出した。

ミランダからマルコを脅し、秘密の隠し経路を開けたことを聞いた時から、ユンは敵の本当の目的が分かった。焦燥が納まらなかった。


このクーガンが戦地になってしまったのは、備蓄庫を狙うことに依るものだと思っていた。


どこまで知られたのじゃっ、いや、知らぬからこの地を選んだのか…!


戦争の絵図を描いた者が狙っていたのは、クーガンのこの聖堂に眠る秘密。恐らく3カ国の全員が勘違いしていた。そうだ。だからこそ、今のこの混戦状態は、その者にとって都合が良い。


急がなければっ…


ハーデン聖堂の祈りの場。

隠し通路は、クーガンの土地から星を描くように通路が繋がっている。そして描かれている星の中心がハーデン聖堂の祈りの場。

数百年前、この宗教が生まれた時からこの場所は決して知られてはならないことを抱えている。


ユンは息を切らして走り、祈りの場のドアを勢いよく開ける。そして、後から走ってくるミランダとマクシミリアンを気にせずにドアを開けて、一切光りが通らない暗闇の部屋の中心に行く。

外から聞こえる怒号や銃撃の騒々しい音は、ユンには聞こえなかった。聞こえるのは自分の心音と息切れした呼吸。


「はぁっ、はっ……」


息を切らして中央に行く。

祈り場としてのこの部屋は、非公開とされ、ユンの立場である大司祭にならないと誰も入れない。後継となったマルコにも、口頭でしかまだ部屋の全容を伝えていない。


中央にあるのは、棺。


まだあることにユンは安堵して、膝をつく。

そして棺に手を伸ばす。



「ーーーそれか。」



聞いたことのない男の声が、背後で聞こえた。

その時には、遅かった。

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