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悪女語り。  作者: 林 空花
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クーガンの戦い③ 神の声

ユンは祈った。


儀式の準備が整った。

ユンの下には円と共に陣が描かれていた。陣の周囲には何百にもなる散り紙が置かれていた。この散り紙が媒体となり、ユンの力が届けられ、その紙がユンが指定した場所に届けられる。

ユンに今祈りを籠められた紙が、ぶわりと浮き上がる。そしてそれは吹雪のように一斉に動き出し、もうスピードですべてクーガンの避難場所にたどり着いた。そしてそこからは、紙を媒体にして避難場所に結界を張る。

時間も力も根気もいる。

デメリットは、さすがに力の回復に時間がかかること。それくらい、今から使い切る。


ブワッ!!


全身から力を噴出し出す。

それを他の司祭達は見て、圧倒される。目だけじゃない。身体から力の格差を教えられる。


ユンが考えるこの力の真髄は、'読み'だ。

聖力を持った者は、その'読み'が出来た。だからこそ、力が使えるのだ。

大地だけじゃなく、その場にある全ての自然の力を読む。そして、願う。

避難場所1、シュジュス教会。ここはハーデン教の教会だ。しかし、元々この土地で祀られている神は、……水の神。


ユンは深く深く思考を沈めていく。


真っ暗な世界にまで意識を沈めると、莫大なエネルギーをあちこちで感じる。そのエネルギーこそ、元々この土地を護り続けている神聖な神。

ユンは話しかける。


『水神よ。我が名は、ユン。

汝の水を清め、犯しつく者の名。


幸いなれ、北の王。

土地を汚す者を拒絶せよ。

流れ、飲み込め、汝の水……ー現実を拒絶せよ。』


北の王が共鳴する。


その瞬間、ユンはその莫大なエネルギーの一部を与えられる。

ユンは、制御するまで歯を食い縛る。たとえ一部と言えども、自然を扱うのは神に近くなる。その為、制御は困難を極め、更にはその力を使い結界を張るのは……無理な話である。


'ユン大司祭は、天才らしい。'


アーサーは、笑ってユンのことをそう評した。


ユンは、そのままシュジュス教会の周囲に水神のエネルギーを張る。そして、それを制御し、結界として形を成していく。


'そして、……神様は不思議とユンが好きなんだって。'


「………。」


ユンの背後で立ち尽くす司祭の一人は、結界が出来ていくことを気配で察する。

ユンは息を切らし、たった一つの結界でも遠い地で離れてやる疲労は想像を絶する。それをこれから幾つも張り巡らせていく。ユンが死ぬんじゃないかと思った。しかし、それでも……その背中を見ていると思ってしまう。この人は生き抜くのだろうと。


神との会話が上手く、そして好かれるユン。

何故神はユンを好きになるのだろうか。


「!!!」


司祭は、目を見開いた。

ユンの背中に、水神がふっと現れる。姿を少しだけ成しているが、水そのもので。ユンの両肩に触れると、ふっと微笑んで、消えていった。

まるで応援でもしているかのように見えた。今まで何度も話しかけたが、答えてくれなかった水神。それが、あんなにもユンには親身になっていた。


……ーー神に愛される、人間…か。


だからこそ、天才と言われる。




シュジュス教会に避難していた民衆は、仰天する。


「うわぁっ、お母さん、これ何…!?」


少年や少女が騒ぐ。

シュジュス教会の周囲を、淡い光が囲む。キラキラとそれは輝き、多くの粒子が重なり、それは巨大な結界として出来上がっていく。

結界を見たことがなかった民衆は、結界がこんなにも神々しく神聖な風景を作り出すとは知らなかった。

先程まで恐怖に怯えていた民衆は、結界に感動する。中には安堵よりも、美しいモノを見た感動で涙を流す。




届け。

織り成せ。届け。拒絶しろ。廻れ。流れろ。


´ユン´


………………………なんで……






ユンの深層心理は、ユンさえ知らない。

人間が意識の沈み、神に語りかけることにより、神はその人間の意識の中に入れる。意識に触れることを神は好む。

西の王、水神は、泳ぐようにユンの意識の中に潜っていく。そして、一つの玉に触れる。その瞬間、ユンの意識が水神に流れる。



ユンの意識が、哭いていた。


その瞬間、水神がユンを包み込むように抱き締めた。慰めるように、そっと。



『泣くな、人間。』



その瞬間、結界が出来上がった。






そして、クーガン全体の結界。備蓄に結界。更には散り紙が一人一人の市民に貼り付いて、市民一人に結界が張られた。


ユンの目が開かれる。


瞳を見た周囲の人間は、目がもうユンではないと気づいた。


『久しぶりの生身。ふぅ。随分と私の力を使いこなせる人間ね。』


ユンの声ではない、女性の声。

ユリアは、そんなユンの身体を乗っ取った'何か'と目が合う。'何か'は魅惑的に微笑んだ。


『あら、貴女、彼のお気に入りじゃない。』


「え?」


『今ご飯中みたいだけど、また会った時はよろしくね。』


「は?ご飯?」


『ふふ。あ、もう駄目ね。時間切れ。さようなら。』


プツンっと切れたように、ユンの瞼が落ちる。そしてユンはバタンッと勢いよく倒れた。


「ユン様!」


「大司祭!」


ユンに皆が駆け寄っていく、そしてその瞬間大爆発が起こった。



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