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悪女語り。  作者: 林 空花
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クーガンの戦い②



ミキル達はクーガンに結界が張られる前に到着していた。クーガンの首脳陣に会うため、ミキルは王家の紋章が貼られた手紙をハーデン聖堂を守っていた騎士に渡し、ユン達と謁見が出来た。


「そなたが王太子の使者か?……見えぬな。」


ユンは怪訝な表情をした。ミキルが騎士には到底見えなかった。王家の紋章が無ければ、門前払いされていたことだろう。

ミキルはその言葉に返すことはなく、アーサーからの伝言を伝えていく。イクラニ国の侵攻があるが、ナニクン国の侵攻がある可能性など。

驚きもしないので、ミキルはそこまでもう想定していたことを推測する。


「殿下は一日でイクラニ国を後退させる予定です。なので、恐らく昨日には後退させたはず。」


「王太子自ら戦場に?」


「あの方は強いので、問題ないかと。何より王族が最前線にいれば兵の士気は高まりますし。」


「ーーアーサー様は、無事?」


場に似つかわしくない女性の声。

ミキルは背後を振り返り、ああこの女が…と察する。随分と美しく、そして白色だと思った。


「私に命を下した時点では怪我一つなく。」


「……そう。」


最前線に行ってからのアーサーは分からないと言われたので、ユリアはそれ以上アーサーのことで問いかけることはしない。


「お前が、ミキル?」


ミキルは、その問いに頭を下げる。


「はい。レディー・カエサル。お会いでき光栄です。」


「…私もよ。」


ユリアが騎士ではないミキルの存在を知っていることに周囲は驚いたが、同時にミキルの存在が王族側だと肯定となった。ミキルはやりやすくなったとユリアに感謝しつつ、伝言を続ける。


「殿下の予測では、クーガンには敵が既に潜伏しており、ユン大司祭が結界を張ったところで内部から混乱を誘き出すのではないかと。」


その説明にはさすがにどよめきが起こったが、ユン大司祭とユリアだけは動揺しなかった。

ミキルは、この二人だけで既に動き出していることを察する。


「大丈夫ですか?」


ミキルは、本当はクーガンを守るために配属された。が、二人が動き出しているということはその作戦に自分達は恐らく組み込まれていない。

ユンはにっこり少年のような無邪気な笑みを浮かべ、ユリアも頷く。


「大丈夫よ。」


戦いなど知らなそうな貴族の姫。それでもミキルは、ユリアのその言葉を信用できると思った。

ミキルはそれなら結界の外にいて、敵が来たら撹乱し、数を減らしておきますと言い、ユン達の場から去ろうとする。

しかしユリアを見、足を止める。


「ここからは殿下の個人的伝言です。二人で、良いですか。」


「良いわ。」


「姉さん!俺も行く!」


「大丈夫よ、ガリアーノ。この人は、アーサー様の幼馴染だから。」


「へっ?」


ガリアーノがキョトンとしているが、ユリアはそのままミキルを連れたって部屋を出ていった。



ユリアとミキルは、二人きりになる。

ユリアは改めてミキルを見、ミキルもまたユリアを見た。話には聞いていた。


「……敬語苦手なんでしょ、外すこと許すわよ。」


「どうも。」


「アーサー様にもその態度なら殺してあげたいけれど。」


「怖。」


「で、伝言は?」


ミキルはとっとと言えと言われてる気分になる。

アーサーから聞いていた印象とそこまで違わない。美しく、厳しく、でもどこまでも張り詰めた糸のような存在。


「ーー'守るから、待ってて'。だとよ。」


ユリアはその一言に、どんな意味が含まれているかすぐに分かった。それこそ早くアーサーに会いたいと心から思った。

ユリアはふぅと息を吐き、自分の速る鼓動を落ち着かせる。


「そう。分かったわ。」


多くは問わないその姿勢に、アーサーへの絶大な信頼が見えた。


「……じゃ、俺は行くわ。頼むから死んだり怪我したりすんなよ。俺が殺される。」


「ええ。」


そう言って去っていくミキルを見送り、ユリアはアーサーに聞いていたミキルが想像通りだと思った。

私兵とは名ばかりだ。彼らはただアーサー様と出会い、アーサー様に頼まれたことをする何でも屋。どちらかといえば部下というよりも、本当に利益が結んだ関係。でも、恐らくフィリップ・クルワンがアーサー様にとって表の友人だとしたら、彼は裏の友人。アーサー様が抱えている残酷で冷酷な部分を、誰よりも知っている。

無礼な態度は許せないが、アーサーが信じているのなら信じようとユリアは思い、再び皆がいるところに戻っていった。


「混乱を起こすとして、どうやって?」


ユリアが部屋に戻ると全員で潜伏している敵が混乱を起こすとしたらどんな方法を取るかで話し合っていた。ガリアーノも、それに着いてきたマクシミリアンは話し合いの中心から離れつつも考えている様子だ。ガリアーノはマクシミリアンを見る。


「マクシミリアン、どう考える?」


「えっ、俺ぇ!?」


ユリアはそういえば馬鹿だけど頭が良いのだとガリアーノが言っていたことを思い出す。こんな時にも問いかけるなど、マクシミリアンのことを余程信用しているのだろう。

ユリアもマクシミリアンを見る。そして大きな声を出した為か全員に注目され、マクシミリアンはオドオドしながらも答える。


「俺なら同時多発的に爆発か火事を備蓄庫に起こします。だから備蓄庫の兵士が怪しいです…」


「確かにそれなら備蓄も紛失して一石二鳥じゃ!」


ユンが同意し、全員がなら早く備蓄庫の兵を調べ直さなきゃと慌てる。ユンはそれを手で制す。


「そんな時間はもうない。」


「ですがっ!」


「大丈夫じゃ。ーー我の力の全部を話したことがあるのは、ユリアだけじゃ。他に漏れたことはない。我が全て守ってやる。」


にししっと不敵な笑みを浮かべるユン。ガリアーノはユリアを見る。


「何で姉さんだけ知ってるの?」


「はじめてお会いした時に我の元へ来いとかアプローチしてる中で、こんな力があるぞと見せびらかしてきたから。」


「「……。」」


おい、大司祭。

と、心の中で全員がツッコミをいれていた。




そしてそれから数時間後、爆音と共に大振動が起こり、爆発が起こった。

が、市民だけじゃなく備蓄も全て無傷に終わった。

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