クーガンの戦い
クーガンの町が見えてきた。
ウィリアムは町が見えたが、眉間にしわを寄せる。
クーガンの町全体に薄緑のガラスのようなものが町をドーム型に囲んでいるのが見えてきた。
「ありゃ聖力だな。結界だ。」
「うわぁ、はじめて見たっす。俺。あれが聖力の結界。」
「ああ。聖力がある者でも、一握りの人間しか使えない結界。創った人間が拒まないと決めた者以外、弾き出される。」
ユン大司祭にクーガンを狙っていることがバレたか。まぁ普通は考えれば分かるよな。
ウィリアムは想定はしていたが、思った以上に早くバレたことにため息をつく。ユン大司祭か、はたまた周囲の気づいた人間を甘く見ていた。
「ウィリアムの旦那、どうするんすかー?」
「安心しろ。面倒だが、こうゆう時の案がある。」
ドーンッ!!!!!!!!
「「ぅお!?!?」」
ウィリアムが発言したと同時に、クーガンの結界内部で爆発が起こった。
ナニクン国の兵がポーロ家領地に潜伏していたが、クーガンを目指し始めた時には既に勝ち戦だと考えていた。何故ならクーガンの中にはポーロ家が裏切ると決めた5年前から、聖騎士や市民としてクーガンに兵を潜伏させていた。
ユンが結界を張れば、内部からクーガンを掻き回し、破壊せよと伝えていた。パニックが起こり、内部から潰れてしまえば手間が省ける。何より結界により、市民は逃げ出せない。
残酷な殺戮をする気はなかったので、この選択は省いていたが、結界を張られてしまったのなら仕方ないと思った。
爆発の煙が結界内部に充満する。ウィリアムはそれを冷酷な眼差しで見つめていた。
「ーーー旦那、右。」
ウィリアムの左側に馬上していたムガラの言葉に、ウィリアムは右を見る。そして、目を見開き、楽しげに笑った。
「ふはっ、これは想定外だ。」
ウィリアム達がいる場所から少し離れた崖からこちらを見下ろす一団があった。
こちらを見下ろすその一団は旗を掲げていた、マルコニア国の国旗がはためている。
「50人くらいか。」
「んー、ありゃ騎士団じゃなぇな。」
騎士の格好をしていないし、どちらかといえば自分たちと同じ無法者のような服装。傭兵団。いや、傭兵なのに国旗を掲げている。
「……王族の私兵か。」
ウィリアムの言葉にムガラは怪訝な表情をする。
「私兵?マルコニアは私兵が禁止されてるよな、法で。謀反になる者を作らないため。」
「くく、王妃でも、あの優しい王でもないだろ。なら、王太子だろうな。」
「王族自ら法を破んのかぁ?」
「ーー良いじゃねえの。謀反とかじゃなくて、国の危機のために私兵を動かすなんてな。馬鹿なのか、良い王なのか。」
ウィリアムは、ミアリーの言葉を思い出す。
'うちの子、舐めないでね。あの子はアンベルクと私の子だから、ーーきっと最後は気づく。'
ふっと唇が緩む。笑みが溢れて、ウィリアムは乗っていた馬の方向を変える。それに従って全員が、崖の上の一団の方を向いた。
ムガラが盾を掲げ、それを見、全員が盾を掲げる。弓矢が降ろうとこれから全員が崖に向かう。
「んじゃ、戦うかー!」
これから戦うというのに軽快な声を上げたムガラに全員が声を上げて、崖へと馬を走らせる。
崖の上から馬を走らせるムガラ達を見、一団は弓を引く。そして雨のように弓矢を降らせる。ムガラ達はそれを気にしないように馬を颯爽と走らせる。
「早ぁ。ありゃ馬の訓練を相当受けてるな、ボス。」
アーサーの私兵のトップは、ミキルという名のまだ20代後半の男だった。顔は表情を失ったのか常に無表情だった。
ミキルにそう話しかけた部下は、どんどん弓を撃てーと叫ぶ。
ミキルは盾に顔を隠しているが、馬の動きや守り方を、軍の動きを見、一頭の馬に目をつけた。
「………あれが、ウィリアム・クルワンっぽいな。」
「え!今回の戦争の首謀者っすか?それなら海にいるんじゃ。」
「復讐者なら最後まで滅ぼす過程の最前線にいてぇだろ。」
「あー。なるほど。で、どの馬っすか。」
「あれ。」
「どれ。」
「………面倒くせぇ。」
「ボス、本当ボスの器じゃねぇ…。」
部下が呆れた表情をしているが、それを無視してミキルは視線を爆発が起こっているクーガンを見る。
「ボスぅ、本当クーガン無事っすか?」
「ーーさぁな。」
あの王子と、王子が認めた女が大丈夫って言ってんだから、大丈夫なんだろ。




