表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪女語り。  作者: 林 空花
4/83

仮面


後は無言が続く中で、馬車は公爵邸に到着した。

ユリアはそっと公爵邸を見、豪華絢爛さと公爵邸に入る馬車の列に彼らの家の強さを読み取った。



この国、マルコニア国は、世界に6つある大陸の1番広域な面積を持つハルーシア大陸にある一つの国である。歴史ある国であるが、安定は中々に訪れなかった。

国の始まりは執政官を二人置き、任期は2年とし、また市民会による投票制によるものであったので、民主政に近い政治を行っていた。

が、戦国のような時代は国民に議論の余地を渡し決める平穏よりも即決断を下す王が必要だった。

国外に国内に争乱の時代が続き、現在のハルメニア王朝がやっと誕生した。初代王アーランド·ハサウェイは、元は港町出身の貿易商人だった。

海に面した土地が多いことから、港による漁業、貿易を生業とし、彼は歴史でも稀に見る大商人として成功をおさめた。その裏では、貿易船を守るために傭兵ではなく私兵をつくりあげることをし、国の兵士になるよりもハサウェイ商会の兵になる方が賃金なども高く良いと国中の評判となった。

海戦を戦い抜くために練兵したハサウェイ兵は、国の危機の際には国庫よりも豊富な資源を提供し、歴戦連勝な勇猛果敢な兵たち。

いつしか戦時になると執政官や民政ではなく、アーランドの独裁になっていき、アーランドによる王政を国民は支持した。

ハルメニア王朝の始まりである。


そんなハルメニア王朝誕生の時から一役買ったのは、クルワン家。

アーランド王政にする時に執政官の一人となっていた彼は、由緒正しい貴族だった。彼は貴族らしく、そして貴族らしくない男であった。

彼は現在国民が求めているのは、民政ではなくアーランドであるとすぐに察知し、彼を王にすることを市民会にて提案。多くの同意を得、彼はアーランド王を誕生させた。

更には独裁政権になることは今後の未来のためにならないとし、ハサウェイ家が今後王朝を世襲していく際に、クルワン家含む四大貴族と、国民の市民階級からなる市民会すべてがハサウェイ家の王政を止めることを決めた際は、速やからに王位を退くとする。

それらを初代王アーランドと契約し、ハルメニア王朝は現在200年も続く歴代最長王朝となった。


初代王アーランドと共に、アーランドを王にしたユトバーン·クルワンは英雄とされ、クルワン家は現在も尚王位と国民両方を守る天秤の剣として、栄華を誇っている。



「姉さんは、公爵家初めてですか?」


「ええ。」


公爵邸を見上げているユリアに、ガリアーノは声をかけ、先に馬車を降りる。ユリアも腰を上げ、ガリアーノに支えられる形で馬車から降りる。

二人で招待状を提示し、公爵邸の中に入る。王家よりも歴史あるクルワン家は、さすがというか廊下にまで歴史ある宝物が並んでいた。


「ーーユリア。」


鼓膜に届く、甘く、低い声。

足を止めて、ロビーの前に広がる大きな螺旋階段の上段を見上げる。

ユリアの碧眼に写る アーサー。

白い肌に、金色の髪、美しいグリーンの瞳は光の角度によって色を変える。甘い印象を与え、彼の唇が弧を描くと、その場が明るく光る。


「アーサー様。」


ユリアはドレスの裾を上げ、頭を下げる。それに続くようにガリアーノは一歩下がり、頭を下げる。

アーサーは泰然と階段を降り、二人の目の前に立った。


「ハルメニアの蒼き水に、ご挨拶をー。」


ハルメニア王朝はその歴史から、王子を水に、国王を海に例えている。ちなみに皇后は太陽、姫は月とされ、海の航海に必要な道標として例えられている。


「ああ。ーー行こう。」


視界にアーサーの白手袋を纏った手が入る。

ユリアは顔を上げ、その手を取る。そう、もう物心ついた頃から当たり前の仕草。手を受け取ると、握られる力でその日のアーサーの機嫌すら分かった。


ガリアーノを置いて、二人で会場に向かって歩き出す。

後ろの侍従とも一定の距離を保ったので、誰にも聞こえない声で、ユリアは話す。


「……問題が起こりました?」


「相変わらず超能力者だな、ユリア。」


アーサーは少し呆れたような声をした。

ユリアと二人、遠目でこちらを見てくる同様の招待客に微笑を向けながら、言葉を交わす。


「ルリ嬢が倒れたそうだ。」


「ルリ様が?」


四大貴族の一つ、ポーロ家の令嬢にしてこの前デビュタントを終えたばかり16歳の女の子だ。


「ああ、栄養失調で。」


「それは、失礼ですがダイエットなど?」


「そうだ。」


ポーロ家が財政破綻はしていないはずだ。なら食事を制限させられる理由としては、ダイエット、無理な食事制限だ。


「しかし、先々月のデビュタントの彼女を見ましたが、お太りではないと思いますが。」


「今回のパーティーは彼女にとって大役があって、彼女自身が重責から痩せようとしたらしい。」


「重責………まさか。」


視線だけユリアはアーサーに向ける。アーサーもユリアに視線を向け、瞬きをした。それはユリアの推測を肯定していた。


なるほど、ね。フィリップ様のパートナー役は、ルリ様だったのね。


まだデビュタントを終えたばかりのルリ様には大役だが、フィリップ様が小公爵となるこのパーティーのパートナーは未婚のそれなりの貴族でなければならない。ユリアは、アーサーのパートナーだ。誘えない。後はもう、ルリしかいない。


「ルリ嬢に汚名をつけるわけにもいかないから、天候が崩れて来れないことにするそうだ。」


確かに雲行きが怪しく、ポーロ家は遠い地にある。なら、そこまで噂にはならないだろう。


「となると、フィリップ様のパートナーは…」


「小公爵となるんだ。パートナー無しには出来ない。当日でパートナーなど見つかるはずないから、どうにか他の令嬢に頼み、令息にも事情を説明しようと言ったが、まぁアイツは何とかすると言って、俺を控室から追い出して。」


「フィリップ様なら、何とかしてしまいますよね。」


どくんっと嫌な音を心臓から聞こえた。

彼女が、現れると思った。

それでもアーサーに向けた仮面は、取れることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ