【シュガー】
「なぁ、シュガー。お前本当無謀だよな。」
シュガーはそう話しかけてきた同僚の男を見る。城壁に寄りかかりながらリンゴを食べ、果汁を顎から垂らす男は、そのまま無防備にリンゴを食べ続ける。
「あの、真っ白な色。きっとカエサル家のレディーだ。ほら、殿下の妃候補。」
「知ってる。」
「知ってたのかよ!」
男は思わず怒鳴る。シュガーはそんな男を気にした素振りなく、男の横にある袋からリンゴを取り出す。
「てか、なんで知ってんだよ。貴族だぞ。大体はこんな城壁から出てく時も馬車の中だ。」
シュガーはリンゴにがぶりつき、口の中に広がるリンゴの旨味に満足する。
「見てたから。」
「だーかーら!どこで!」
シュガーは最後の一口を口に入れ、こっちを苛立たしそうに見上げてくる男に背中を向ける。
「…さあ?」
「あん!?」
文句を言ってくる声を背中に、シュガーは勤務交代のメンバーに声をかける。
「交代だ。」
「おう。ん?アイツ何騒いでんだ?」
「生理痛がひどいってよ。」
シュガーの冗談に交代のメンバーはケラケラ声を上げて笑い、喚いている男の方に歩き出す。それを見送った後、シュガーは城壁を後にする。
交代のメンバーは、拗ねている男に声をかける。
「何、ふてくされてるんだ?」
「あ?…………あれ、俺、何にキレてたんだっけ。」
「はぁ?」
先程までシュガーに文句を言っていた男は、キョトンとする。その反応を怪訝に思いながら、交代のメンバーは夜食のリンゴが全部無くなっていることに気づく。
「あっ、お前全部食ったのか!?」
「へっ?あ、あれ。なんで無いんだ!?」
「さっきから何おかしなこと言ってんだよ!!お前しかここにいなかったのに、誰が食うん、…だ?」
あれ、ここにコイツしかいなかったけ?
交代メンバーは何かしら違和感を感じた。そして、それは男もだった。
あれ、俺、誰かと話してなかったか?
「お兄さん、店に寄らない?」
豊満な胸と尻を強調した服を着た女が、魅惑的に手を振ってくる。シュガーはそれを無視し、夜道を歩く。そんなシュガーの肩に、球が一つふわりと落ちてくる。罅が入ったその球に、シュガーはさっきまでの仏頂面とは異なり、【彼】は、それはそれは楽しそうに笑った。




