運命の変わり目
マグダード夫人は、自分の作品が完成したのを実感した。
真っ白な彼女の為に、用意したのは瞳と同じ海の蒼。ただその蒼は、美しい緑にも似た深く濃い色。
彼女より濃い色を用意したのに、やはり彼女は負けることなくよく似合っていた。
「ドレスにプリーツを…?」
腰から下は膨らまず、ストンと身体のラインを出す。プリーツが揺れるたびに、身体の動きをよく表した。
「はい。ユリアさんはやはり所作が美しい。その美しさを際立たせるには、プリーツが最適です。」
「……そう。マグダード夫人。」
「はい。」
「満足です。ありがとうございます。お手を煩わせました。」
鏡越しに微笑みを向けられ、夫人は心が満たされていくのを感じた。
久々にデザインを考え、針を手にした。夫や息子はそんな私に驚きつつ、それでも構いやしなかった。彼女に合うデザインは何なのか想像すれば心が湧き踊り、気づけば寝なくても構わないほど熱中した。
そして、貴族になれたのに、自分はどこまでいっても針と糸を捨てられないのだと悟った。
マグダード夫人を見送った後、ユリアは出掛ける支度を始める。今日は久々にユリアが支援や経営をしている箇所を回ろうと考えていた。
ただ最後に回る福祉施設だけは、時間がかかることを予想していた。
付き添いにキャルサも従えて、ユリアは馬車に乗る。
「お嬢様、そろそろ専任の騎士を選ばないといけないですね。」
馬車の外にいる馬上の護衛騎士を見、キャルサは言う。ちらりと外を見やり、ユリアは面倒という風に息をつく。
「毎回、外に出る度に異なる人が護衛につくより、やっぱり気心知れた信頼できる方が良いですよ。」
「……そうかしら。」
専任となる護衛が出来たところで、どうせ自分は心を開かないような気がしていた。
でも、もしこの世界で物語にあった運命を変えるとするのなら、小さなことからなのかもしれない。
私は脇役であり、細かいことまで物語に描写されていなかった。だが、ミランダと深く関わることはしていなかったが、時折……物語と同じようになる結末になるかもしれないと不安になる。
二度とあんな辛い想いは…したくない……
それだけは、確かなことだ。
「今度騎士の叙任式がありますし、そこで気に入った方を選ぶのもいかがですか?」
「ん。そうね、行くわ。」
キャルサが少し驚いたような顔をした後、すぐに頷く。予定空けなきゃですねーと言うので、そうだと頷き、ユリアは瞼を閉じた。
この時の決断は、
ユリアの運命を変えた。
それは良い方にも、悪い方にも変えた。




