1.78.3 VSレイトを貫通する槍を使ったりスキルで弾いたりが出来尚且つ変幻自在な水を出すのが得意な男性
ルルちゃん初めての反抗です。
正直、ルルちゃんみたいな考え方ってかなり珍しいと思うんですよね。怖いじゃん刃物って。
「いい加減分かって……!」
「わ……」
「私だって……怖い」
その言葉通り、レンを見ずに目の前の敵を見据えているルルだが、両手で持っている短刀を中心に、小さく震えている。腰も引けており、およそ敵に立ち向かう姿には見えない。
「怖いけど……痛みを受けるのも、与えるのも、レンばっかりなのは嫌」
「ル……」
それでも逃げようとせず、眼には力を込めて、前を見据えている。
「……逃げて脅えて失うよりは、裕は余ってる」
「……余裕……って、言っても……」
「私だって!」
「んにぇ!?」
「ん!?」
尚も食い下がろうとするレン。その声を遮るように、ルルは大きな声を出す。レンもドセルも、その唐突の大声にピクリと肩を揺らす。
「私だって、レンが好き!」
「んぇ!?」
そして躊躇うこともなく、愛を叫んだ。
「好きな人を……失いたくない、から、戦う!」
「ル……ぇ……っ……!」
「レンと……レンと同じ気持ち……だから!」
自分の行動に恥じらいを感じたのだろう、少し視線を下げるルル。しかし尻窄みしながらも、ハッキリとした声は出していく。そんなルルの姿に、レンは頬を染めながら俯いている。
「ぃ……分か……った……」
暫く何かを考えていたレンだったが、軈てゆっくりと顔を上げ、ルルと同じように前を見据えた。
「なら僕も、無理はしない範囲で」
そしてルルの隣に立ち、同じ目線になる。
「ルルを守るんじゃなくて」
両手で持っていた短刀を右手に持ち替え、
「肩を並べて……戦うよ」
傷を庇うように少し身を屈めながら、そう言った。そして次に何かを発しようと口を開いた瞬間、
「あ、ちょっと待って」
「え」
「……ん?」
何故かルルが制止した。レンもドセルも疑問符を浮かべながらルルの顔を見た。それをきにしていないのか、当の本人は真剣な眼差しでレンの顔を見つめている。
「その……こう、背中をこっちに向けて、で短刀持ってる右手をあの人に突き出して」
「え、うん」
そしてレンに謎の指示を出した。レンは困惑しつつもその指示に従う。
またこの人……変なこと考えたね絶対。というかレンも拒否りなさいよ。戦闘中でしょ今。
「ふぅ……」
背中合わせになり、レンは右手で持った短刀を、ルルは左手に持った短刀を、夫々ドセルへと向けている。そして、そんな謎の体勢になったことを確認したルルは一つ息を吐いた。まるで何かが始まる前兆のようにも思える。
「逃げて脅えて失うよりは、裕は余ってる」
「……え?」
「好きな人を失いたくないから、戦う」
「え、え? えぇ?」
そしてそんな言葉を……え……?
「……ほら、もう一回さっきのセリフ言って」
「え……さ、え?」
えマジ? この子マジで言ってる? 今この場にいる全員困惑してるよ?
「えっと……」
「ん」
えっと? 待ってレン君? え、言う気? まさか君も言うつもり?
「ル、ルルを守るんじゃなくて……肩を並べて、た、戦うよ?」
「……」
言った……言ったよこの子……目の前で呆れた表情をしているドセルを無視しながら言ったよこの子……
「キマった」
「きま……った!」
「キマってないわ!」
キマってないね。ダラダラだったよね。流石ドセル、良いツッコミだよ本当に。いや良くない。もっと早い段階で止めなさい。
「普通空回ってる事に途中で気づくでしょ……何だったんだろこの、魔法戦士の変♡身を見てる気分は……」
「満足」
「いいんですか! 既にこっちは満足な状態ですよ!」
「何その万全な状態の亜種みたいな言葉! 何でやりきった感出してるの!?」
まだまともに戦ってないのに何でそんなに満面の笑みが出来るのだろうか。特にルル。さっきの震えどこいった?
「……ルル」
「ん」
右手をドセルへと向けるというポーズを解いたレンは、一歩前に出ながらルルに声をかける。
冷静すぎるこの子……切り替え早すぎるこの子……まだ数十秒前に起こった謎の雰囲気の余韻が充満してると思うんだけど。
「僕が前に出るから、ルルは後ろからお願い」
「……」
トタタタタタッ
それだけを言い、レンは短刀を持つ右手を後ろにやりながら真っ直ぐ走り出した。ルルは一瞬目を見開いたが、
「ん」
小さな返事とともにしゃがみこみ、両手と両膝を地面に着けた。
「ふるっ!」
ブォンッ
「ぉっ!」
一気に距離を詰めたレンは、短刀をドセルへと向けず、真上へと投げ飛ばした。
「なっ!?」
攻撃されると思っていたドセルは、槍を両手で持ち防御の体勢をとりながら驚きの声をあげる。そして全く敵意を示さないその短刀へと、一瞬、目を向けてしまった。
「っば!」
が、すぐに目の前へと視線を戻した。
直後、
「るぁっ!」
ゴギャッ
「ぉごっ!?」
右脚でドセルの腰目掛けて回し蹴りをした。
ドッ
ザザッ
ドセルはそのまま数メートル吹き飛んだが、地面に一回転しながら受身を取り、肩膝立ちをしてレンを視界に収めた。
「不意を着いたつもりなんですけど」
ガチッ
若干の不服を申し立てながら、レンは落下してきた短刀を右手でキャッチした。かっこいい。もう一回やってほしい。
「ふへぇ……俺だってレンさん貫いたはずなんだけどなぁ……」
シュッ
「んっ!」
ドセルは呟きながら空中に水の球を生成した。掌サイズの物体を数十個、音を一つだけ出しながら作り上げた。
ガゴッ
「んおっ!」
ドドドッ
が、水が発射される前に、ドセルの背後の地面から縄が、ドセルの背中目掛けて勢いよく飛び出した。
「いったい、なぁっ!」
シュビビッ
計四本、縄の突進を守りの体勢も出来ずにまともに喰らったドセルだが、怯むことなく水の球をレンとルル目掛けて撃ち放った。
ドッ
ゴッ
ヒュッ
ミュイッ
「ごぁっ!?」
「ルっ!」
縄を地面に伸ばしていた故にだろう、ルルは右脚と右腕を、小さくだが抉られるように水の球を喰らう。その呻き声を聞き、複数の鏡でダメージを最小限になるよう対処していたレンは、一瞬ルルの方へ駆け寄ろうと体を捻った。
「ぐっ! 大丈夫!」
「だ、いじょうぶ!」
が、ドセルに背中を見せたくなかったのか、すぐに体を前に向け、そう問いかけた。ルルも地に足以外を付けず、すぐに応答する。
「まぁ、見えるなら余裕か。じゃあ次は、避ける余裕も与えないよ」
バッ
「っ!」
「に!」
そう言った瞬間、ドセルは左手を大きく上げた。レンとルルは警戒の為に立ち上がり、ドセルから目を離さぬように身構えた。
ゴザザザザッ
ゴッ
「あぐっ!?」
ガッ
「にぇあ!?」
直後、二人の体を、重たい音と共に水が襲った。
「に……見え!?」
「水の雨っ!」
「んんっ!?」
貫かれた左腕を抑え、震える声を出すルル。それに対し、レンは地面と衝突して弾けている水滴を目にしながら叫んだ。それで何かを察したのか、ルルは振り向き壁に目を向けた。
「あ、か、壁から!?」
「流石レンさん。気づくの早いね」
先程までレンとルルに向けて放っていたであろう水滴。その一粒一粒が、上空へと引っ張られるように飛ばされている。
「さっきからレンさん達に向けて乱雑に放ってた水」
ドズズッ
シュッ
「っ!」
「ひっ!」
ドセルは再び水の球を生成し、二人に向けて放った。が、今度は当てる気がないのか、二人に掠りすらしていない。
「を、いったん壁に張り付かせて待機」
ビチャ
小さな音に呼応するかのように、ルルが水の軌跡を追うように視線を向けると、水の球が壁に張り付いていた。
「溜めて溜めて溜めまくった後、こうやって上へと飛ばす」
まるで何かに引っ張られるかのように、風に張り付いていた水滴は次々と上空へと飛び立っていく。
「やがて水滴は重力を思い出して」
そしてドセルは上空を見上げ、再び左手を振り上げる。
「雨になる」
「っ!」
ザザザザッ
と同時に、水滴は上昇するのを止め、思いのままに襲いかかった。
「っぐ!?」
レンはその弾になっている水を全身で受けながら、動けずに次々と襲いかかる小さな痛みに耐えるように身を縮めているルルの元へと走った。
「こういう狭い所でしか出来ないけどさ、上と横の複数方向からの攻撃って、受け――
ドゥンッ
ガガガガッ
「っ!」
「ゆぉ!?」
「んっ……」
ドセルの猛撃が繰り返されると思われたのも束の間、突如上空に大きな鏡が出現した。屋根になるようにレンが出したのだろう。壁と隣接しておらず、手を伸ばせば届くのではと感じてしまうほど距離は近く、少し圧迫感もある。
「ル、大丈夫?」
「……俺の水は、一度放ってもまた遠隔から操作はできる」
「……」
「けど、重力を無視すんの難しいから……こうやって雨降れ作戦思いついたんだけどなぁ……」
ドセルは鏡を見つめ、手に持っている槍を方に担ぎながらそう呟く。レンはルルを優しく抱きしめながらドセルを見つめ、警戒している。
ビォンッ
「低い天井で雨降れ作戦は破綻。いいね、滾る」
そしてレンへと槍を向け、微笑んだ。
何だ滾るって。何でそんなどテンプレでコッテコテな戦闘狂みたいなセリフ選んだ?
「まぁでもつまりこれで、レンさんのレイトを大きく削ることに成功した、って事かな」
「っ!」
「あ、でも解除されないように水は定期的に撃っておかないと」
ビッ
「ちっ……」
少しだけ弾ませた声を出しながら、ドセルは水の球を再び放った。頃合いを見て鏡を解除しようとしていたのだろう、レンは舌打ちをしながら、ルルを庇うようにドセルに背中を向けた。
「大丈夫?」
「た……ぶん……」
「……」
レンの問に小さく頷くルル。若干言い淀んだからか、レンは一瞬怪訝そうな顔をした。が、すぐに視線をドセルへと移した。
「僕が水を我慢して突っ込んで――
「いや、私の縄で水を撃ち落としてみる」
「……」
レンがゴリ押し戦法を提示しようとしたが、それを遮るようにルルは鏡を出し、それをレンに手渡ししながらそう言った。葛藤があったのか、若干の不服と共に口を噤むレンだったが、
「分かった。お願い」
「ん」
サァッ
「ぉ」
鏡を受け取り、両手で握りながら頬擦りしながら翻る。そして長い髪の毛でルルの鼻を微かにくすぐりながら、ドセルへと走っていった。
「……ん、何で頬擦りした今?」
やっぱり余裕あるよねあの子。
ルルは小さくその疑問を吐き出した後、再び両手両膝を地面に着ける。
「ん」
トッ
その光景に、ドセルは少し警戒しながら後ろへ小さく飛び退く。と同時に、水を四つ生み出す。
ビュッ
そして四つ同時に、レン目掛けて放たれた。
「ん!」
ビュッ
バシュッ
シャバッ
へシャッ
「おっと」
パシュッ
が、球がレンに届く前に、レンの掌に収められている鏡から縄が現れ、水の球を弾いた。一つだけ弾き逃した球は、ルルの後ろの壁に当たり小さな水飛沫をあげた。
「凄いな……その鏡から縄を出し――
その光景に、ドセルは左手を顎に当てながら分析していたが、
「ぅぉ!?」
ドゴッ
突如その足元から縄が飛び出して来た。一瞬早く察知したのか、ドセルは大きく左へと跳躍し、攻撃を躱す。
「つつ、地面からも出してくるっか」
レンは短刀を、今度は投げ飛ばさず、右手で持ちながら振り下ろした。
ガッ
「ルルさんって、平和な世界の住人とか関係なく、優秀だよね」
「そんな当たり前のことを理解しているのならさっさと降参してください」
「何そのルルさんに対する謎の自信」
が、ドセルは涼しい顔でそれを受け止めた。右手だけで槍を持つという、およそレンの全体重を支えられるような状態には見えないが、レンの刃はそれ以上押し返すことは無かった。
ガキュッ
「っ!」
トッ
「……地面から縄……」
パシュッ
遂には押し返され、レンは大きく後ろへと飛ばされてしまった。ドセルはレンが着地するのを確認した後、牽制するかのように水を放つ。
「んっ……忘れてないのかまだ……」
「……」
そして腰を上げ、槍を左手で持ち上げ、自身の左側にいるルルをチラリと見た後、レンの足元を見つめた。直後、
「ぐっ」
ドシュッ
「ち!」
レンから距離をとるように、後方へと大きく飛んだ。それと同時に、地面から縄が現れる。またしても避けられたルルは、大きく舌打ちをした。
「自分の手足から地面に向けて伸ばしてるなら」
ビュッ
「うぇ! っ!」
そのまま、空中に身を預けた体勢のまま、槍を真横へとぶん投げた。レンはその槍の飛ぶ方向を……ルルへの攻撃だと理解した瞬間、ドセルから視線を外し、ルルの元へと駆け出した。
「まっ!」
「レっ」
が、
ゾズッ
「ぉごぁ!?」
「こんな見えまくりな攻撃でも、避けるのは厳しいよね」
一瞬。遅れてしまった故にだろう。レンの伸ばした右手がルルに触れるよりも早く、二股の槍がルルの体を……右側の鎖骨と肩甲骨を貫いた。
「っぁ……ぁぁぁあ……ル……!」
「うーっし。ルルさん封印」
「が……ぁ……」
ルルの首から弾けるように放出されるその血飛沫。それを全身で浴びながら、レンは乾いた声を出すルルへと近寄り、倒れないように背中と後頭部を支える。
「か、ほう、ほうた、っは無い、な、あ、鏡で、今鏡で塞ぐね!」
応急処置のための道具を持っていなかったのだろう、レンはあたふたしながら鏡を出す。明らかに不適切だとしか思えない対応の仕方に、焦りが隠しきれない様子が見て取れる。
(何で僕が痛み慣れ修行に選ばれたと思うぅ?)
(……この、体外離脱できるから……?)
(もある。でもそれならぁ、僕が教えなくてもイんだよねぇ。こうやって僕以外も体外離脱させられるからさぁ)
(え……)
(僕が選ばれた理由はねぇ)
「くっ……」
「ん?」
「ル……」
「んぃ」
「……ぇ……」
すると、ルルはあたふたレン君の顔を見ながら右手を伸ばした。まるで「離れて」とでも言うかのようなその仕草に、レンも一瞬遅れて気が付いた。
「ル……ん……」
困惑していたが、やがてゆっくりとルルを下ろし、床にぺたりと座らせた。
(皆から、すーぱースパルタ鬼気厳君って呼ばれてるからなんだぁ)
(すーぱースパ……え、早口言葉……?)
カタッ
チャッ
そしてルルは目を瞑り、ゆっくりと、首に刺さっている槍を左手で掴み、
「ぅらっ!」
ザッ
「は?」
タピュッ
槍を、勢いよく引き抜いた。同時に、塞ぐものが無くなった傷口から、真っ赤な血液が吹き出した。
「っ……」
カラッ
「ぇマジ……?」
「ぐっ!」
そして先端が赤黒く染まった槍を捨て、すぐに左手で傷口をガシッと掴んだ。ルルの瞳は白目の面積が大きくなっており、唇に力を込めている。
「んぬっ!」
「う……う、そ……!?」
「ルル!」
それでも尚、指の間から溢れ出てくる血。レンはそれを見ながら、ルルの左手の上から包み込むように、両手で傷口を塞いだ。
「はぁ……はぁ……ひふっ……」
「大、だ、大丈夫!?」
「いっ……ぶ、けど、それ多分無意味」
ルルは一歩引きながら、右手でレンの腕を掴み、自身の首から離した。
まぁ、抑えてるっていっても、着ぐるみ越しでも漏れ出てるからね。いや首から流血してるのに冷静過ぎない? 痛覚あるよね?
「君っ……本、当に別世界出身……?」
「……べ……別に……」
フラフラしているものの、痛みに耐えながらドセルを見つめているルル。武器を手放したドセルを明らかに警戒しつつもそう言葉を繋げた。ルルは数日前まで画鋲が刺さっただけで喚く世界にいたのだ。ご最もな疑問だろう。
「今の私は……」
(串刺しに耐えられない程度でレン君を守れるとか言にしないでよぉ)
「っ……」
シュルルッ
ルルは首の痛みに耐えながらも、レンが差し出した腕を掴みながら二本の足で立ち上がる。そして左肩から縄を出し、首からの出血を、包帯のように巻きながら押さえつけた。
「首を貫かれた程度で立ち止まるほど……軟弱な雑魚じゃない!」
「まっ……!?」
怖いよねこの子。でも本当に怖いのはこんな子を一週間足らずで生み出したログ君なんだよね。絶対に修行内容口外しちゃダメだねレン君が暴動起こす。




