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あいに溢るる  作者: 手石
スコアの変わらぬボーリングな日々
79/107

1.70 メイド服を着ている変態と執事服を着ている変態

カオスと書いて最高と読んでしまいそうです。

 十二月十四日。

 ルート君と共に鏡を腕以外から出す訓練を始めてから五日目の今日。


「んっ」


「おぉ!」


「ルートの方はOKみたいだな」


 僕は全身から鏡を出せるようになっていた。厳密には、二日目の十二月十一日の時点で腕や脚以外からも道具無しで鏡は出せるようになってたけど、ルルの痛みに慣れる訓練が終わるまでは自主練という謎の時間が出現してしまったのだ。ルート君曰く、


「お前要領良すぎだろ流石に引くわ」


 だそうだ。何でだよ。

 後ルルとの訓練にも同席させてよ。僕がルルを甘やかすこと確定だと思ってるじゃん。事実だけど。


「痛みの方は?」


「大丈夫だよぉ。まぁ、たかが数日だから、まだ不安は大きいけど。召喚してすぐの頃よりはだいぶマシになってるぅ」


 そして今日も橋の近くで訓練。今日はルート君ではなくナキハ君が。

 今更だけど……魔王、なんだよね、ナキハ君って……何か王様って感じしないんだけど。


「ん……」


 ザッ


「おぉぁ!?」


 唐突に虚空からナイフを取り出し、左腕に刺した。ルルの顔が一瞬歪んだ。刺された左腕からは真っ赤な血が流れ出ており、その光景は美しいと同時にどこか儚く、そして尊いと感じさせる。

 じゃねぇちょっとルル!?


「ルル!」


「んっ!?」


 僕はルルに駆け寄り、腕に刺さったナイフを抜く。と同時に虚空から包帯を取り出し、出血する部分へと瞬時に巻き付けた。

 何で唐突にそんな! あ、もしかしてあれ、どのくらい耐えられるかを証明したかったってこと!? いやだとしても何もそんな実演しなくても!


「ぁ……痛いよね、大丈夫? これに耐えるって事は相当痛い努力をしてきたんだよね。凄い、いやでもそれよりあ先に舐――


「落ち着いて」


「処置が速い」


「一応レン君も怪我人だからな?」


 僕がルルの患部を両手で添えながら心配の声を上げたが、ルルは涼しい顔をしながら僕の顔を見つめていた。本当に痛みになれたのだろうか。

 たった数日でこの慣れ具合……やっぱりルルは凄すぎる。


「んじゃ、今日からは合同だな。ルルちゃんの鏡覚えさせ訓練」


「は、はい!」


 そんな僕の姿を半分呆れながら見つめていたナキハ君。半ば無理矢理話を進めた。


「じゃあレン君。鏡出して」


「ん……分かりました」


 僕はルルの腕から離れ、両手を器のような形にして差し出す。そして両手の上に鏡を出し、ルルへと見せる。


「っと。じゃあまずは助言無しでレン君と同じような鏡を出してみろ」


「は、はい」


 ナキハ君は僕の鏡を指差しながらルルを見てそう言う。ルルは小さく返事をし、鏡を見つめた。そして目を瞑り、両の掌を真下へと向けた。


「……っ……」


 コトッ


「おぉっ!」


 そして数秒後、ルルの右手から長方形の物体……鏡が音を立てながら落ちた。ゆっくりと目を開け、その鏡を見つめるルルに、僕は歓喜の声を上げる。


「流石ルル!」


「褒めて伸ばすのは良いけど、悪い所も教えるんだよ」


 が、何故かナキハ君は喜ばず、そして驚きもせずに落ちた鏡を拾い上げ、僕達に見せるように突き出した。


「よく見ろ。これ、鏡っぽいけど反射はしてないだろ」


「……」


「その目やめい」


 僕はその鏡を覗き込む。

 ……確かに僕の顔が反射されてないけどさ……いいじゃん別に。そんな細かい事グチグチ言わなくても。


「まぁ縄とは違って周囲の環境に依存して見た目が変わるからな。難しくて当然だ」


「寧ろ簡単に使いこなせるレン君がおかしいぃ」


 鏡をルルに返し、ルルの顔を見ながらそう言う。ログ君は僕の顔を見ながらそう言う。

 簡単に使いこなせる……使いこなせる……


「でも、僕だって完璧じゃないんですよね」


「そうなのか?」


「はい」


 周りからはそう見えてるかもだけど、少なくても僕のこれはちゃんとした鏡じゃないんだよね。


「僕の鏡、こっちの反射する方も硬いんですよ」


「……と、言うと?」


「鏡、何ですけど……強い衝撃を与えても割れない、と言いますか……」


 普通の鏡だと、こう、パリーンって感じで割れるけど、僕の鏡は、こう、ゴンって音が出てくる程度だし。本物とちょっと違うんだよね。


「割れないなら良いと思うけど」


「鏡は割れやすい存在なんです。少なくても、割れにくい僕の鏡は本物の鏡とは違う存在なんです」


「むっずい」


 ログ君が頭を抱えた。

 しょうがないじゃん。僕だってそんなに説明できる人間じゃないもん。


「……鏡を教えてくれた、モクリサさん、っていう人の鏡は割れるんです」


「ん?」


「そして、その飛び散った破片も動かす事も出来ますし。割れやすい方が寧ろカッコイイと思います」


「鏡……なの?」


「……まぁ、うん……つまり何が言いたい?」


 力説する僕を見て、ナキハ君とログ君は疑問の声をそれぞれ上げる。

 何が言いたい? そんなもん一つしかないじゃん。


「完璧じゃなくても良いじゃないですか!」


「駄目だ。ルルちゃん、反射する鏡を創れ」


「何でですかぁっ!?」


 僕の訴えも虚しく、無慈悲な声が駆け抜けるように僕を貫いた。

 良いじゃんさ! 今のままでも十分凄いんだよ! 褒めてよ褒めろよ!


「いいからコツとか教えてあげろ」


「んむぅ……」


「何だコイツ……」


「ルート君みたい」


 僕の反応に、二人は呆れた表情をしながら促す。ルルの凄さをちゃんと理解してないからか、褒める気配が全く無い。不満だ。


「まず、鏡は反射」


「ん」


「で、反射するのは光」


「ん」


「光を反射する物体、っていう考え方で僕は鏡を創ってるよ」


 僕は諦め、ルルに僕のイメージを直接伝える。ルルは僕の言葉に頷きながら小さな声を漏らしている。恍惚。


「確かに、景色を映す物体ってよりは良いな」


「何でですか?」


「鏡を生成する場所は基本的に毎回違う。鏡を出す度に周囲の景色を把握して、それをレイトに込めるってのはシンブルにダルい」


「光を反射するっていう、何だろう、データ的な? それをレイトに込める方が楽だね」


「ほえっへぇ」


 そして僕とナキハ君の説明に、目を丸くしながら小さく艶美な声を出した。

 まぁ、反射っていう情報をレイトに込めるっていうのもなかなか難しいかもだけどね。関係無いけどキスしたい。


「んじゃもう一回。ルルちゃんの邪魔になるからレンは離れてろ」


「せめて先に一回キスさせて」


「やめろバカ」


「今はやめて」


 が、そんな僕の要望も虚しく、無慈悲な声が駆け抜けるように僕を貫いた。






 十二月十五日。

 訓練最終日。今日はナキハ君とルート君とログ君の三人と共に橋の上に立っている。フルキさんとミチルちゃんとカオルさんは城内で遊んでいるらしい。

 何やってんの?

 そんな中、ルート君が白と黒で彩られた洋服を両手で持ち、風で靡かせながら僕達に見せている。


「卸したてのメイド服だ」


「レン君にプレゼントする為に、僕も手伝ったんだよねぇ」


「す……凄い……!」


 そしてその洋服、メイド服を僕に手渡した。その光景に、執事服を着こなしているルルが少し目を輝かせて僕の方を見た。


「ほらほらぁ。早速着てみてよぉ」


「え、あ、は、はい」


 メイド服……まだ一週間も経ってないのにもう仕立て上げて来たの……? すんごいなこの人達……昨日二人が来てたのと同じデザインだけど、改めてパッと見でもきちんと「メイドっ!」って分かるような見た目してるのが凄い気がする。


「……もしかして、この間のも自作……」


「まぁ、俺とログはそういうの好きだしな」


「あ、わ、態々ありがとうございます」


 マジか……てっきりお店で売られてるのかと思ってた……プレゼントとして受け取って良いのだろうか。お金払えるクオリティ……何か……


「訓練しかり、洋服しかり……貰ってばっかりな気がする……あ、えっと、お金を……」


「気にすんな。若者を甘やかしたいだけだよ」


「どういう意味ですかそれ」


 ヴェンドロキ王妃の時もそうだったけど……何かお礼を考えておかないと……

 僕はメイド服を受け取り、服を脱ぐ。レギンスのみはそのままで、上半身は裸になる。


「ん」


「んんっ!?」


 寒いなやっぱり。あの下着みたいな洋服って多分断熱性があったのかな? 結構心地は良かったし。というかルルが目を逸らすんだけど。見てよ。別に見られても困らないからさ。見てよねぇ!

 僕はルルを一目見たあとメイド服をもう一度見つめる。

 あ、スカート部分から頭突っ込めばそのまま着られる。詳しい構造は知らないけど、本当はもっと着づらいだろうし。凄くありがたい。あ待って、これお尻の部分に穴空いてる! 尻尾出せるじゃん凄ぇ!

 僕は頭から被るように着用する。中身は少しゴワゴワしてるが、意外と着心地が良い。スカートは肩幅よりも広く、そして足首まで伸びるほど長い。今は風に靡いており、脛の辺りが顕になり続けている。


「着替えたよ」


「ん……ん」


 そして僕の呼び掛けに、ルルは僕の姿を凝視した。僕は少しでも見える範囲を増やす為に、一度右にくるりと回る。


「どうかな……?」


「っ!?」


 スカートが少しふわりと浮いた。遠心力が働いたからか、一瞬膝下まで顕になった。

 あ……なんか良いかもコレ。ちょっと楽しい。

 僕はもう一度、今度は左にくるりと回転をした後、再びルルを見る。ルルは口を右手で抑え、顔を赤らめ、息を荒くしている。

 ん? どうしたの? 興奮してるの? まさか僕に!


「ちょっと座って。横座りで」


「え……?」


 そしてその姿のまま、ルルは僕にそんな指示を出した。

 座る……? 横座りって事は……ん、このスカートの丈ってかなりあるけど……


「でもスカートが地面に――


「で、左手を床に置いて、右手をパーにして口に当てて」


「え、あ、うん」


 が、僕の言葉も遮り次の指示を出した。僕はルルの雰囲気に押され、指示通りに地面に横座りになる。右脚を左脚の上に乗せ、左手を地面に置く。

 硬くて冷たい床……左脚と左手がヒンヤリしてて気持ちいいけどちょっと嫌な感じする……でもルルの為なら……


「で!」


「にょぇ!?」


「首をちょと傾げながら……はわわって言って!」


「にゃ……な、何はわわって」


「イイから」


「良くないから聞いてるんだけど」


 そして僕の両肩をガシッと掴みながら謎の指示を出した。

 何その単語……? はわわって聞いた事ないんだけど……? どういう意味なの?


「……」


「……」


 そしてルルは期待の篭った麗しの眼差しを僕に向ける。

 え、やっぱりやらなきゃダメ……? あ、でもずっとやらなかったら、この可愛い瞳をずっと僕に見せつけてくれる……いや、ん、やろう、うん。

 僕は右手を口元に添え、ルルの方を見る。そして首を傾げた。ルルはゴクリと唾を飲み込む音を立てる。


「はわわ……?」


「にょへおあぉっ!」


「にょへおあぉっ?」


 そしてはわわをした。瞬間、ルルが仰け反りながら謎の叫び声を上げた。何時ものルルとは違い、感情を剥き出しにしている。新鮮だ。

 というか何その可愛い表情と単語と声色と声量。


「はぁ……はぁ……んぐっ、つ、次! 両手をグーにして! で、両肘とも九十度曲げる!」


「あ、うん」


 そして再び僕の方を見て、再び勢い良く指示を出した。僕は両手を肩まで上げ、指示通りに肘を曲げる。

 というか息乱れてるけど大丈夫なの?


「右手は顔ぐらいの高さまで上げて前を向ける、左手は顎の下ぐらいまで上げて右側に突き出して」


「え?」


「で……はぁ……はぁ……にゃ、にゃん、って言って!」


「え……と……?」


 すんごい細かい指示。え、僕に何させようとしてるの!?

 僕は困惑しつつも、右手と左手を指示通りに配置し、ルルを見る。

 えっと……にゃ、にゃんって言えば良いんだよね……? 何か猫みたい。


「にゃ……」


「ひぁ……」


「にゃんっ!」


「ヘルゼンテルス!」


「ヘルゼンテルスって何?」


「狐耳の子に猫の鳴き声て」


 そしてにゃんっと言った瞬間、今度は前に倒れながら謎の声を上げた。黙って見つめていたナキハ君の声も聞こえてきた。

 ねぇこれ何!? 僕これ合ってるの!? ちょっと不安になるんだけど!?


「あ、じ、じゃあ、後ろから私に抱きついて! で、耳元で「僕が優しくおしおきしてあげる」って囁いて!」


「もうそれメイド服関係ねぇだろ」


「僕が優しくおしおきしてあげる」


「へくじゅしゃん!」


「だから何なのその可愛い叫び声」


「くしゃみみたいだなぁ」


 そして三度目の指示を僕に出した。僕は指示通りにルルの背後に回ってからセリフを耳元で囁いた。瞬間、ルルは僕の腕に手を添えながら仰け反った。

 さっきからルルの考えてることが分からないんだけど……優しくおしおきってどういう意味なんだろう……? 後ルルの首が柔らかいずっと絡めてたい耳舐めたい頬擦りしとく。


「ふぅ……ふぅ……」


 深呼吸する声が聞こえたのでルルから離れた。ルルは下を向きながら暫く息を整えていたが、軈て顔を上げた。


「……取り乱しました」


「乱しすぎだわ」


 そして三人に向かって小さく頭を下げた。何時ものように静かで冷静な声色が、僕の耳を優しく、そして鋭く擽る。


「レンが……凄すぎる……」


「凄すぎるって」


 そして今度は振り返り、僕の全身を上から下へとゆっくりと目を向けながら呟いた。

 凄すぎる……褒めている、んだよね……? 褒めてる……ってつまり……


「……今の僕、そんなに素敵?」


「国創れる」


「どういう感想それ?」


 僕の質問に真顔で答えた。

 国創れる程の素敵さって何……? 僕はあんまりメイド服に関しては詳しくないけど……


「今の、今のレンなら、何しても許される!」


「落ち着け落ち着け」


「メイド服って凄いんだな……」


「服じゃなくて、レン君との相性が良かっただけだよねぇ」


「メイド服に変なイメージ付けんなよ?」


 ルルがこんなに喜ぶなら、これからも定期的に着ようかな……あれ、あの下着みたいな服も興奮してたよね? ならあれと交互に着れば、常にルルが興奮してくれるかな?


「可愛すぎる!」


「え……あ、ありがとう」


 ルルは両手を広げ、僕の顔を見ながら叫んだ。

 ん……こんな直球で僕の事可愛いって言ってくれるなら……毎日これ着ようかな。


「んじゃ、今日の訓練始めるぞ」


「あ、はい」


「一応今日でレン君とルルちゃんの訓練は終わりだ」


 ナキハ君が話をぶった斬るように言った。隣にいるルート君とログ君は一歩下がってその話を聞いている。僕はルルの隣にたちながら三人の顔を見る。


「あそうだ、一応ハヤタさんにメールしときます」


「おん」


 と、そこで思いついた。僕は虚空からスマホを取り出し、メールを開いた。そして文字を打ち込む。


「明日中に帰ります。フルキさんとミチルちゃんはもう少し滞在してから帰ります」


 そう打ち込み、一度確認してから送信する。きちんと送信されたのを確認してから僕は虚空にスマホを仕舞い、再びナキハ君の顔を見た。


「さてと。じゃあ最後になるであろう今日」


「……」


「……」


 そして僕がスマホを仕舞ったのを確認した後、ナキハ君が話を再開した。

 最終日……なのは分かるけど、何、何故すっと言わない……? どんだけ怖いことする予定なの?


「二人で戦ってもらう」


「……は?」


 ……は?


「……」


「……」


「……二人で戦ってもらう」


「は? え、は? い、はぁ!?」


「落ち着け」


 聞き間違いでは無かったようだ。

 何言ってんの? え何、落ち着けるわけないでしょ!? は? 二人って事は、僕がルルを? は?


「レン君はまだしも、ルルちゃんは実戦経験はほぼ皆無。身内とはいえ、殴り合いには慣れといた方が良いだろ?」


「いや、いや、だとしてもですよ!」


「良いのか? 俺とかログ君とかだと手加減しないかもしれんぞ?」


「っ!?」


 僕の訴えようとする声を遮り、ナキハ君は微笑みながら僕にそう言う。

 このっ……! っ、そんな惨忍な提案出来るとかマジかよこの人おい!?


「睨むな怖いわ……で、ルルちゃんはどう? いきなりだし、厳しいかもだけど」


「……か……」


「ん」


「か、勝った方は相手に何でも好きなことをお願いできる権利を得るとかどう?」


「……え?」


「……どう?」


 いきなり話を振られて戸惑ったルルだったが、少し思考した後、謎の提案をした。人差し指を上げ、少し首を傾げている。面向不背。

 と、え、何でも好きなお願い? え、何でも? 何でも!?


「何それ?」


「こう言えば、レンもやる気になってくれる」


「いや、だから何それ?」


 ルルの言葉の意味が理解出来なかったのだろう、ルート君がルルに疑問の声を上げている。


「あー聞いた事あるわ。そっちの世界だと、相手をやる気にさせるときに使う言葉だろ」


「別世界の漫画でよく見る。最終的には地味なお願いに留まりやすいやつだね」


「地味とか言わないで」


 逆にナキハ君とログ君は知っていたのだろうか、ウンウンと頷いている。

 それより何でも好きな……何でも……ん、なら……

 僕はルルの方を見る。


「で、どう? これなら」


「じゃあ僕が勝ったら……お風呂、お互いバスタオル無しで入ろう」


「それはやだ」


「何で!?」


「何でだよ!?」


 即拒否された。

 え、ちょ、のん、なん、何でもって言ったじゃん!? し、な、え、なん、え、えぇ!?


「だってまだ……早い」


「早い、じゃねぇよ! お前、自分で勝者報酬設定しておいて、それは反則だろ!」


「っ! で、でも……ルルが言うなら……我慢、する」


「すんじゃねぇよ!? 相手のお願い聞いて決めるとか何処が何でもだよおい!」


 何でもの範囲に入らないお願い……ルルが嫌がるお願い……残念だけど、無理矢理お願いするのはダメだもんね……

 するとルルは僕の方を見た。


「でもよく考えてみて」


「ん?」


「あ?」


「こんなことしなくても。レンは私のお願いならどんな事でもしてくれる」


「……」


 そして右手をグーにしながらそう言った。その言葉に、ナキハ君とルート君は若干引いた表情をし、ログ君は目を見開いている。


「実質私はメリット無しで戦うようなもん」


「……いや、事実だとしてもそのセリフは酷いと思うなぁ?」


「自覚はある。でも事実」


「ルルの言葉は無下にしたくない」


「めんどくせぇなコイツら……!」


 んでも事実だもん。でもそっか……確かにルルにメリットが無いならある程度は……そうだよね……僕もお願いをちゃんと考えないと。


「はぁ……じゃあ、お願いは勝負ついてから言え」


「ひぇっ!? え、な、えっ!?」


「え、じゃねぇよ。お前のせいだろ。何驚いてんだよ」


「レン君のお願い決めるまで始まらないでしょもう」


 そんな僕達を見兼ねたのか、ナキハ君が溜息混じりにそんな事を言った。少しイラついていたのか、動揺するルルに対して若干強い声色で言い放った。


「良い? お願い事が決まっても、勝負が着くまでは言わないでよ」


「ひぇ……」


「どんだけ裸の付き合いが嫌なんだよ……」


「……」


 何か若干不服……ルルの望み通りのお願いができないとかどう考えてもおかしいでしょ!


「レン君も良い?」


「むっ……わ、かりました……」


「凄い不服そうな顔してる」


 そりゃ不満も募るよ。もしかしたらルルの嫌がるお願いが出てきちゃうかもしれないじゃん。そうならないように考え尽くすけどさ。


「……じゃあ――


「服はそのままで」


「……え?」


「はい、じゃあ二人共離れて」


「え、え何で、このまま?」


 そしてログ君が仕切り始めた。ルルはその言葉に従い、無言で、大きな橋の上で道なりに向かい合うように離れる。

 ちょ、この服地味に動きにくいんだけど、ダメなの? レギンスのみでやった方が戦いやすいって思うんだけど……戦いにくい姿でやれってこと?


「心の準備はOKか?」


「は、はい!」


「……ちょっと怖い……」


「大丈夫、ルルが勝つように頑張るから!」


「八百長やめろー」


「ド直球かつ僕達にも聞こえる声量で堂々と不正行為を宣言しないで」


 何でだよ。いいじゃん別に。

 僕は三人を一瞬だけ睨んだ。


「はいそれじゃぁっ」


 ログ君が右腕を上げ、大きな声を出す。僕は小さく息を吐いた後ルルを見る。ルルは腰を落とし、両腕を前に突き出している。

 今からルルと戦う……ルルと身体をぶつけ合う……ルルと……ん……あっ!? ルルの身体を触りまくれるじゃん!

 僕はやる気満々になりながらルルを見つめる。


「全力で! Let's GO!」


 僕達を確認した後、ログ君は上げていた右腕を勢い良く下ろしながら言い放った。

レン君、本当に全身怪我してるのかしら……?

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