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あいに溢るる  作者: 手石
スコアの変わらぬボーリングな日々
76/107

1.67 レン君とルート君は思考回路が似ている気がします

行動内容が若干違うだけで、この二人は同族の気配満載ですぜ。

「んじゃ、一週間。ここで過ごしてくれ」


「ありがとうございます」


 十九時二十分。

 食事を終えた後、僕達はナキハ君とカオルさん、そしてルート君の三人に一つ下の階にある部屋へと案内された。

 結局ライトさん帰ってこなかったな……何か隠してるの確定だろうけど、隠すって事はあんまり詮索されたくないだろうし……諦めた方がいいのかな……


「後ハニーも。今夜ぐらいはフルキちゃんと過ごせよ」


「え……」


「ほら、何て言うんだ……積もる話とか?」


「あ……まぁそうね。フルキちゃんにとっては、私に会うのは十何年ぶりだものね」


 ナキハ君はカオルさんの脇を小突きながらそう言った。

 そっか。一応フルキさんとカオルさんは幼馴染……そりゃ色々話したいことはあるよね。


「つ、つまり今夜は俺と共にご就寝なさるのですね!」


「……まぁ、今夜だけな」


「いやったぁっ!」


 そんな二人のやり取りを見ていたルート君。ナキハ君におでこがくっつくほどの距離まで近づいた。

 なるほど……いつもはカオルさんと二人っきりで寝てるのかな。いや、だとしても何でルート君と二人っきりになるのかは分からないけども。


「お、こう、興奮してきました!」


「落ち着け」


「何かレンみたい」


 そして後ろを向き、しゃがみながら大きな声を出すルート君。ナキハ君が引いている。

 というか僕みたいって何? 僕は興奮した時はちゃんとルルに抱き着くよ?


「それなら早速、柔軟剤と芳醇な香りと美味しい樹液と舌触りの良いアレを用意しますね!」


「俺との就寝をなんだと思ってる?」


「舌触りの良いアレが凄い気になる」










 扉を潜ると目の前にはベッドが……無かった。

 いや、うん。当たり前だけど。ドバイさんが創り出してたあの部屋がおかしかったんだよ。廊下も何も無く、すぐに寝室だったんだもん。

 目の前には廊下。幅は二人分程あり、右と左の両方の壁に扉が一つずつ配置されている。すぐ横には正方形の箱が置いてあり、その上には説明のし難い形をした装飾品が置かれている。廊下の奥は寝室になっていた。ベッドは玄関からは見えない位置にあり、寝室の壁には扉が見当たらない事から、部屋は三部屋だろうか。


「あ、僕先にお風呂入ってもいい?」


「OK」


「お風呂は玄関から見て右の扉よ」


「ありがとう」


 今日王宮で食べたのも美味しかったけど、ここの料理も凄く美味しかったな……特に肉じゃが。柔らかいから噛むと簡単に両断出来て、そこから口の中に広がるあの、なんて表現すればいいんだろ、あの感覚と、暫く口の中に残る後味が絶妙なバランスで、こう、良かった。何か今日ご馳走されてばっかりじゃない?


「んじゃ、入ろっ」


「ぇ……?」


 ルルの腕を掴み、お風呂へと続く扉へと手をかけた。が、何故かルルは少し困惑している。その場から動こうとせずにいる。


「い、いや、何でナチュラルに脱衣所に連れ込もうとする?」


「え……?」


 そしてしなやかな動きで僕の腕を優しく解き、扉から一歩離れた。

 ぇ……何でそんなに事言うの……? だって昨日一緒に入ったばっかりじゃん! 


「あ……」


 と、そこで漸く気が付いた。

 こんなに拒否するのは……そうだよね……ルルは僕とお風呂に入りたくないって事だよね。


「そう、だよね……ごめん……」


「ん?」


「ルルの事、ちゃんと考えてなかった……嫌なのを読み取れず、無理に……」


「あ……いや、別にそういう訳じゃ……」


 よく良く考えれば、昨日一緒に入った時もからかい半分だったみたいだし……一緒に入ることに抵抗はあるんだよね。僕みたいにはしゃいでる人と違って……


「ごめんなさい……」


「あ、謝んなくても」


「謝るよ」


 僕は頭を下げる。

 僕は婚約者だからって、調子に乗ってたから。断りにくい状態を僕自身が作っちゃったから……


「ルルに不快な思いをさせちゃったんだから」


「いや……不快とかじゃなくて……」


 僕はゆっくりと顔を上げルルの顔を見る。ルルは呆れているのか、少し目を細め、背中を丸めている。


「……じゃあ、お風呂先に入ってくるね」


 ガチャ


「あ……」


 僕はそんなルルから目を離し、後ろにある扉のドアノブを掴んだ。そしてゆっくりと扉を開ける。


「っ……! ま、待って!」


「んっ!?」


 が、扉を潜ろうとした瞬間、ルルに腕を掴まれた。そしてそのままルルに連れられるように一緒に脱衣所へと入った。


 バタッ


「……はぁ……ふぅ……」


「え……っと……?」


 僕は扉を後ろ手に閉め、目の前で背中を向け深呼吸しているルルへと目を向ける。


「……うし……」


 軈て何かの決心が着いたのだろうか、僕の方へと振り返り、黒いセーターの裾の前部分を両手でグッと掴んだ。

 そして、


「っ」


「ひにゃ!?」


「んっ……」


「ちょ、何っ!?」


 思いっきり、胸の下あたりまで捲り上げた。自分のお腹を見せつけるように、少し上体を逸らしている。僕は目を閉じ顔を赤らめ、プルプル震えているルルに若干高揚しながらも、そのお腹とルルの顔を凝視する。


「……どう思う……?」


「……ぇ……?」


 が軈てゆっくりと目を開き、震える声が僕の耳に届いた。

 どう思う……? ちょっと質問の意図が分からないんだけど? え、舐めたいって思ってるけど?


「レンは……コレ見て……ガリガリで骨骨しい私を見て……どう思う?」


「ぁ……」


 そう聞かれ、僕はルルのお腹を凝視する。

 胸から下の部分しか見えないが、ルルの言う通り、お腹の脂肪が少ないのか胸骨がお腹の皮に張りついている。よく見なくても、栄養不足だというのがすぐに分かる。

 ……僕は一年以上ルルにお弁当を作ってきたけど……そっか……あれでもまだ……いや、今はとにかく質問の答え……


「えっと……」


「……」


「舐めたい」


「……え?」


 僕は正直に思っていたことを答えた。

 だって舐め心地良さそうな、舌触りが良さそうな形してるし……味も絶対美味しいだろうし。あ、後……


「頬ずりもしたいかも……」


「そうじゃなくて……」


「え……?」


 が、ルルは少し呆れた顔をした。

 え、何その顔。触りたいんだけど。


「見窄らしいって……思った……?」


「見窄らしい……?」


 見窄らしい……? ちょっと何が言いたいのかが全く分からないんだけど……?


「いや全く」


「……っ……」


「寧ろもっと見せて」


「……ぁ……」


 そして僕は正直に言葉を続ける。ルルは口を半開きにしている。

 あ、ちょ待って服下げないで。もっと見せてねぇ。


「あ、でも……そうだよね……気づけなくてごめん……」


「だから何で謝るの……?」


「……ルルはあんまり見られたくないのに、僕が気づかず見てたから……」


 そうだよね……ルル自身、あんまり見られたいものではないんだね……なら、見ない方が、良いよね……


「謝るの、私の方なのに……」


「え、何でルルが謝るの?」


 何故かルルが頭を下げた。ルルの後頭部がちらりと見える。

 綺麗だ……じゃねぇ。舐めたい……でもねぇ。


「本当は……私も、入りたい……」


「……ぇ……」


 戸惑っている僕に、ルルは頭を下げたまま小さく呟いた。

 ぇ……嘘……え、入りたいの!? 嘘でしょ!? 入ろうよなら!


「んでも、その……」


 頭を上げ、自分の体を抱える。僕からは少し目を逸らしている。


「この体を見られて、レンに幻滅されたらって思うと……怖かったから」


「……ぁ……それは……」


「ほら、前入った時。目瞑ってって言った」


 あ……あれ、そういう意味だったんだ……それに気が付かなくて僕は……いや、どっちにしろ、僕はルルに幻滅なんてしない……!


「……」


「んへぁっ!?」


 僕は無言で、ルルの腹に頬を当てるように抱擁した。他の部分と違って硬い部分が多く、心臓のバクバクする音が爆速で、そして爆音で聞こえてくる感じがする。

 そういえば……確かに、ルルの胸から股の間の部分をしっかり味わったこと無かったかも……手でちょっと触れたことあるぐらいだったし……でも、うん。ルルが痩せすぎなのをそもそも知ってたって事は言わないでおこう。


「……じゃあ……」


「ん……」


 僕はルルから離れて目を見る。

 でももう、違う。前と違って僕を拒む理由はたった今無くなったはず!


「じっくり見ながら、バスタオル無しで一緒に入ってもいい?」


 だから一緒に入ろう! 裸と裸で! ね! 僕は幻滅しないって分かったでしょ! ねぇ! 入ろうよ!


「いや、バスタオル無しはこの体とか関係無しにまだ恥ずかしい」


「何でぇっ!?」








 結局。昨日と同じようにバスタオル付きの入浴となった。全身傷だらけだったので、かなり慎重に体を洗っていたが、途中から面倒になって痛みを我慢しながら体を洗った。それを見兼ねたルルが途中から優しく僕の体を優しく洗ってくれたから今日は良い入浴になった。


「出たです」


 二十時三十分。

 寝室に二つ、玄関と垂直に設置された大きなベッド。僕とルルは奥にある方に腰掛けながら、一緒にスマホを眺めていた時、フルキさんとミチルちゃんとカオルさんの三人がお風呂から出てきた。フルキさんは白い半袖シャツに黒いハーフパンツ。ミチルちゃんとカオルさんはそこから更に頭に白いタオルを巻いている。


「ふふん。ペアルックなのです」


「なのです」


「ペアルックとは何か違う気がする」


 少しはしゃぎ気味にミチルちゃんとフルキさんはそう言った。僕はルルから少し離れながら、三人の格好を見てから言う。

 半袖短パンでペアルックって言えるの? 無地の服でペアルックって言えるの? ねぇ、本当にオシャレに拘ってるの!?


「私達の方がペアルック度は高い」


「……流石にまだ着ぐるみペアルックは難易度高過ぎます……」


「レンの髪の毛がツインテールっぽくなって目立ってるです」


 それに続くように、ルルが両手を腰に当てながらそう言った。似合いすぎて困る。

 というか難易度って何? 着ぐるみだけどパジャマとして使ってるから、多少の動きずらさはあんまり気にならないよ? これ一着でそこそこ暖かいんだよ? 下に何も着なくても良いから楽なんだよ?


「まぁ確かに。ルル以上の着こなしなんて難しいかもだけどね」


「そういう意味じゃないですよ」


「んふ。やっぱりレンちゃんって可愛いわね」


「えぇ……まぁ……ありがとう……?」


 そんな僕達の会話を静かに聞いていたカオルさんが僕の顔を見ながらそんなことを言った。

 かわ……いい……? ん、いや、やっぱりって何? ルル以外から言われても複雑な気分になるだけなんだけど。


「本当に……私と大違いね……」


「……え……?」


 そして唐突に目を伏せた。声のトーンを落とし、卑屈そうに見える。

 ……何その意味深発言?


「大違い……ってどういう意味?」


「……」


 僕は率直にそう聞いた。カオルさんは暫く無言だったが、僕達が腰掛けているベッドとは違うベッドに座り、脚を組みながら顎を右手の甲に乗せた。


「どんなに可愛い素振りをしても、どんなに可愛く着飾っても、私は可愛くなれない」


「……ん……?」


「記憶が戻ってからはより惨めに感じてるわ。さっきも言ったけど、体は男の子なのに心は女の子のままなんだもの」


 そして僕とは目を合わせず、ぽつりぽつりと語り始めた。何となくだが、言いたいことは分かった。


「どっちにしろ……分かりきってはいたわね。私自身の素材が可愛くないから、努力しても無意味な事」


「……っ……」


「でも諦めたくはなかった。努力はしてた……だから、レンちゃんが羨ましいわ」


「……」


「……貴方を見る度に思っちゃうのよ……入れ替わりたい、って……」


 今度は僕の顔をちらりと見ながら語った。

 可愛くなりたいけど、自分自身は努力しても可愛くなれない。だから可愛い僕が羨ましい。ん……何か……


「前世のカオルがどんな人かは分からないけどさ……中身は変わってないんでしょ」


「……ぇ……」


 するとフルキさんはカオルさんの左隣に腰かけた。構図は僕とルルと同じ筈なのに何故か謎の格差を感じてしまう。縮まれ背丈。


「俺は、可愛いを追求してた、記憶が戻る前のカオルは好きだったよ」


「ぇ……!?」


 そしてカオルの顔を見て、直球で、赤裸々なセリフを放った。

 この人ホント……そんなのハヤタさんぐらいしか言える人見た事ないんだけど。顔か? やっぱり顔だろ?


「お、ライバル出現?」


「面白い展開」


「二人がくっつけばナキハ君はフリーになってルート君が歓喜するね」


「三角関係なのです!」


「……あ、どちらかと言えばミチルちゃんは当事者」


 そして三人で茶々を入れた。いつの間にか僕の隣にミチルちゃんが座っていた。


「今の状況、レンはボケに回らないで欲しいのです」


「私、こういうツッコミは向いてない」


「え、なんかゴメン……」


 そして何故かルルとミチルちゃんの二人に非難された。

 良いじゃん別に。フルキさんだって僕がいることをいい事に巫山戯ることあるんだし。手厳しくない?


「でも……今カオル自身が何になりたいのかは全く分からない」


「ぇ……」


「可愛くなりたいの? なりたくないの? それはハッキリして」


「そ……れは……その……」


 そんな僕達を無視し、フルキさんとカオルさんの二人は話を進めている。フルキさんはカオルさんの顔を覗き込んでいる。


「俺は別に、前のまま可愛いを追求しようが、追求を諦めようが、カオルを否定するつもりは無いよ」


「ぇ……」


「そもそも俺を見ろよ。既に可愛いを諦めて生きてんだぞ?」


「それは……そう……だけど……」


 フルキさんは下を向き、左手を自分の胸に、右手を腰の横に置いた。カオルさんはそんなフルキさんからは目を逸らし、徐々に声を小さくしていった。

 可愛いを諦めて……さらっと言ったけど、それかなり辛いことじゃない……?


「カオルさん」


「ぇ」


 僕はそんな二人を見て、割り込むようにカオルさんに声をかけた。


「隣の芝生は青い、って言葉知ってる?」


「え……あ、うん……」

ハヤタさんとのお風呂:三回(全部ノーカット)

ルルちゃんとのお風呂:二回(うち一回カット)

なんやこの謎の格差。

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