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あいに溢るる  作者: 手石
スコアの変わらぬボーリングな日々
66/107

1.58 食レポはまだ早かったということが分かりました

安心してください。今回はきちんと食事の描写はあります。( *˙ω˙*)و グッ!

また出てくるかどうかは別問題です。

 十一時十五分。

 食堂は偽物の王城とは違い、部屋の真ん中に大きなテーブル一つが置かれているのみだ。白い布が被せられており、白くて少しだけ柔らかい椅子が二十脚程並べられている。端から、二席分空けてミチルちゃん、フルキさん、僕、ルルの順で座っている。フルキさんの前方にドウルさんが座っている。

 今僕達はヴェンドロキ王妃とドバイさんを待っている。二人ははセルント王の妹……ヴェンドロキ王妃の義妹と思われる人物へと会う為、裏門へと向かった。僕達は本物の執事さんに案内され、先に食堂へと向かった。ヴェンドロキ王妃曰く、昼食もどうぞ、という事らしい。


「……元々ここに座らせるつもりだったのかな?」


 そして椅子へと案内された僕は、目の前に置かれた箸とひっくり返されているお皿を見て、そう呟いた。


「時間的にも、ドウルさんが止めてなかったら本当にあの執事ごっこを続けてたつもりかもですね」


 僕の言葉に反応するように、フルキさんも呟く。

 服装に関しては、応接室を出る前に着替えている。非常に短い時間でしか着ていなかったので、執事服というなかなか見ることの出来ないルルをもっと眼に焼き付けておけば良かったなと酷く後悔している。

 こんな事になるなら更衣室に突入すれば良かった……何で我慢したんだよあの時の僕……


「というか……よく丁度良いサイズの執事服があったのです……」


「ドウルさんが教えたんですか?」


「はい」


「何故当たり前のようにサイズを把握してるのです?」


「それよりも即席で執事服を作れたのが凄い気がする……」


 でも執事服は僕達にプレゼントするのだという。ありがたい。またルルの執事服が見られるんだもん。これからはヴェンドロキ王妃の事を尊敬の眼差しで見ます。背が高ぇなヒールで水増しすんなとか二度と考えません。でも流石に頂いてばかりはダメだよね……何かお返しを考えておかないと。


「でも結構貴重な体験はした」


「まぁ……前世だと、コスプレという括りで見られる場合が殆どでしたからね」


 ルルも楽しかったようだ。なら絶対後でルルに執事服着せよう。着るのを拒否しない限りは、着せる。


 コタッ


「お待たせ」


 等と考えていたその時、背後から扉を開ける音と声が聞こえてきた。振り向くと、扉を開けているヴェンドロキ王妃とドバイさん、そして見知らぬ男女二人がいた。この二人がセルント王の妹とその旦那さんなのだろうか。


 コツッコツッ

 スッスッ

 トスットスッ

 トットットッ


 各々が各々の足音を立てながらテーブルへと近づいてくる。

 女性の方は水増しヴェンドロキ王妃の肩ほどまである身長とうなじが見える程に短い赤髪。そして何より気になるのは見た目が若い。僕達と同い年と言われてもおかしくない程だ……本当に三十超えてるの?……確かに、セルント王の妹と言われてもおかしくない。若く見える血筋なのかな。

 男性の方はさらに頭一つ分小さな身長と大きな瞳が目を引く。黒髪は少し離れた位置にいる僕から見ても触り心地が良さそうだというのが分かる。光が反射してる。凄い。


「っと。じゃあ、そこに座って」


「了解」


「失礼します」


 ヴェンドロキ王妃の言葉と共に、セルント王の妹と思われる人物がミチルちゃんの隣に、その旦那さんと思われる人がその隣に座った。ドバイさんはドウルさんの隣、僕の前に座った。

 ミチルちゃんが「んぇっ!? ま、ミチルの隣ですっ!?」的な顔をしながら、フルキさんに助けを乞うかのように目を向けている。


「あ……こっち来る?」


「ふんっ! ふんごろなのです!」


 そしてフルキさんが自分の膝をポンポンと叩いた瞬間、ミチルちゃんが這うようにフルキさんの膝へと座り込んだ。

 いや……それ、ちょっと失礼じゃない……? あ、ほら、妹さんがちょっと悲しそうな顔してるじゃん。


「……まぁいいわ。それじゃお願い」


 その光景を苦笑いで見ながらテーブルの側面に着席したヴェンドロキ王妃は、背後で背筋をピンとしたまま待機していた執事さんにそう言った。


「お昼なの?」


「お昼よ」


 執事さんが出入口とは違う扉を潜ったタイミングで、セルント王の妹さんがそう口を開いた。


「……早くない?」


「……ドウルが止めなかったら、丁度良かったんだけどね」


「見るに堪えない、と私は言いました」


「な……何の話?」


「いえ。お気になさらず」


「こいつ、説明が面倒だって思ったわね」


 二人の会話についていけていないからか、セルント王の妹さんは少し前のめりになっている。

 結構気さくに話すんだな……ちゃんとドウルさんの目を見てる……あ、そっか。セルント王の幼馴染だから、妹さんとも面識があってもおかしくはないのか。


「それよりも。ほら。きちんと自己紹介しなさい」


「えぁ」


 ヴェンドロキ王妃は二人を見てそう促した。旦那さんが立ち上がり、ドウルさんとドバイさんの後ろへと回り込んだ。

 自己紹介……何だよね? 何でそこに……ん? 何でドバイさんは笑いを堪えてるの?


「我こそはっ!」


「にゃへ!?」


「っ!?」


 が旦那さんは徐に右手を上げ、大声を上げた。

 え何!? ちょ、え? 自己紹介なのに、何でそんな全力で!?


「地上を制し、天を司るものっ!」


 そして両手を胸に当ててから勢いよく広げる。

 何それ……? 自己紹介なんだよね? 後で僕もやろうかな。


「名をコフク! 二つ名を連結の真人! 以後、お見知り置きを!」


「……」


「……」


「……」


 そして手を合わせ、一礼をした。勿論、状況が全く飲み込めていない僕達は呆然とその姿を見つめることしか出来ない。

 何……何だ、何が起こったの今……? ちょっとカッコよかったなぐらいしか分からないんだけど。


「ん……くっ……ふふ……」


「……」


 ドバイさんの口から声が少しだけ漏れている。それを確認したからか、コフクさんは無言で自分の席に戻った。そして両手で頭を覆った。


「何がっ……何が喜ぶだこんちくしょう!」


 そして低い声で愚痴った。

 どうしたのこの人……? どういう事……?


「はいはい。良いから、自己紹介進めなさい」


「流さないでいただきたいのですが。元凶あなたですよ?」


 そして何事も無かったかなように次へと促すヴェンドロキ王妃。コフクさんはそんなヴェンドロキ王妃の方を見つめ、更に低く呟いた。

 あ、食堂に来るまでに何かをこの人に教えたのかな。いやこの人に何を吹き込んだんだこの王妃。何をどう教えたらあんな自己紹介になるんだよ。


「私はカウジキミ。よろしく」


 そんなコフクさんも無視し、セルント王の妹……カウジキミさんは立ち上がり、その場で自己紹介を始めた。


「最近まで魔王さ……ぁ……」


「……」


「……ん?」


 そして突如、謎の単語を残し、言葉を止めた。「やべっ」みたいな顔をして

 魔王さ……さ? さ、って何……?


「っ! いやね、あの……魔王さ、意外と馬鹿なんだよね!」


「肝が据わってるとかのレベルじゃない」


「最近まで拉致られてた人のセリフじゃないのです」


 そして勢いよく、慌てるように繋げた。その言葉に、ルルもミチルちゃんも半分呆れながらも驚きを隠せない声を出した。

 何でそんなに焦ってるのこの人……? というか、今の本当に「魔王って実はさ」みたいなノリだったの……? 「最近まで魔王さ、意外と馬鹿なんだよね!」ってなるけど。ちょっと文章おかしくない? 「最近まで」って言うなら、馬鹿だった、の方が良くない?


「ほら、だってね! この人、一人で乗り込んで一人で助け出しちゃったんだもん!」


「はぇっ!?」


「マジで!?」


 そして左手でコフクさんを示しながらそう言う。それに反応するようにコフクさんとフルキさんが声を出して驚いた。

 いや、何でコフクさんも驚くの? あれか? 「何でその話するの!?」的な感じなのかな?


「ねぇ? かっこいいわよね!」


「っ……」


 そしてコフクさんの方を見る。コフクさんは唐突に褒められたからか、顔を逸らした。


「ほら、照れてる照れてる。可愛いわよね!」


「両方を兼ね備えてる……ですと……!?」


「どこに驚いてるのよ」


 僕の呟きにカウジキミさんは冷たい声を出した。

 驚くに決まってる……! どちらか片方だけでも大変なのに、両持ちでしょ!? 凄過ぎるでしょそりゃもう!


「失礼します」


「ぉん。ありがとう」


 自己紹介が一段落したからか……いや、してない。僕達自己紹介してない……執事さんが食事を乗せた台車を押して来た。そして馴れた手つきで僕達の目の前に置いてあったお皿を回収し、料理の乗ったお皿と置き換えた。

 え……あ……え……? 何だったのあのお皿……?


「じゃあ頂きましょう」


 そして執事さんが配膳を終えたのを確認してからヴェンドロキ王妃はそう言う。と同時にお箸を手にした。それを見た僕もお箸を持つ。


「い、頂きます」


「です」


「ちゃんと言いなさい」


 そして小さく挨拶をし、料理を見る。

 左手前には白い粉が表面にまぶしてある小さくて丸く、そして硬そうなパンが四つ。右手前に少しだけ茶色い汁と、緑色のワカメと白くて四角い豆腐という馴染みのあるものが入った味噌汁。左奥には茶色いお肉と赤くて細長い人参、薄い緑色のキャベツ等が乗っている野菜炒め。そして右奥には唐揚げがドドンと置いてある。


「何か……あんまり異世界感が無い」


「異世界感?」


 パンを一口食べた時、不意に隣に座るルルが呟いた。

 あ、このパン凄いサクサクしてる。僕の歯を押し返そうとせず、流れに身を任せるように、全く抗わないで砕かれてくれる。食感すごい好きかも。


「それは仕方がない事よ」


「え?」


「だってね。今回の料理は、貴方達の世界の料理を参考にしてるんだもの」


 あ待って。この野菜炒め凄い美味しい。タレの量が絶妙で、しょっぱ過ぎず、かといって物足りなさも感じないこの丁度良さ。お肉も柔らかくて噛みやすいし、キャベツもシャキシャキしてる。


「え……参考……?」


「えぇ。美味しいのよね。私は特にお味噌汁が好きね」


「ええぇ……」


 何この唐揚げ美味っ! まずこの食感何!? さっきのパンと同じで、サクサクとして抵抗しないタイプだし。後隠し味か何かかな、少しだけ、ほんの少しだけ感じられるこのピリッとした感覚と鼻に通るこの謎の香りが絶妙的で、うわやべぇ箸止まらんこれ!


「夢中過ぎない?」


「いやだって。凄い美味しいよこれ! ルルも早く――


「ぐぇ……」


「っ!?」


 等と絶賛していたその時、カウジキミさんが突然嘔吐いた。それを見たコフクさんは、虚空から袋を取り出しカウジキミさんの口元へと持って行く。


「だ……大丈夫?」


「んぐっ……」


 カウジキミさんはそれを受け取ってから立ち上がり、テーブルから離れた。そして離れた位置でしゃがみこみ、袋の中へと口を入れる。


「ちょっと、気持ち悪いかも……がっ……」


「そ、そう……無理はしないでよ」


「ありがと……んっ……」


 そしてコフクさんに背中をさすられながら、カウジキミさんは袋をギュッと掴んでいた。

2023年10月追記

あの……これを投稿した後、身内の結婚式に参加したんですよ……あの、食事の席に案内してもらった時、テーブルの上に空の食器があったんです。で、「さぁ皆でいただきましょう」てなったときにその空の食器を下げて、食事が乗ってる食器が配膳されたんです。はい、あの、このお話の描写のほぼまんまです。

ホントあの、ごめんなさい、本当に知らなかったんです。ボケみたいな感じで入れちゃったんです。マジで、申し訳ございません。

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