1.52 隙を見つけてはイチャつく方々
このペースだと全部で千話とか行きそうでちょっとやべぇって思ってる今日この頃です。やはり一話に収める文字数増やすしか……
五時過ぎ。
「……ん……」
早朝の静かな時間。僕はベッドの上で目を覚ます。まだ寝ぼけており、視界がままならない。が、目の前にあるルルの顔をしっかりと視認する。僕と同じ、ピンク色の着ぐるみのようなパジャマを着ている。
「……」
僕はルルの体に絡み付けていた腕を解き、少しだけ体を起こす。右には未だ可愛らしい寝顔を晒しているルル、左側には笑顔のハヤタさんと険しい顔をしたマユカさん、そして真顔のドバイさんが寝ている。まだ皆寝ているので、なるべく音を立てないよう、ゆっくりとベッドから降りた。
「ん……」
「……っ!?」
すると、目を閉じ静かで可愛らしい寝息を立てていたルルが、小さな声を出しながら身じろいだ。
「……」
「……ぉ……」
そして目を開け、無言で起き上がり、そのまま下の方を見つめた。
髪の毛はボサボサで、目は半開き。頭も少しだけ傾いている。誰も見たことが無いであろう寝起きでボーっとしているルルだ。
あ、よく良く考えれば、この世界に来てから何日も経ってるからクラスメイトで見てる人もいるか。羨ましい。でも僕も仲間入り。
「お……おはよう」
「……ん……おはよ」
が、次の瞬間、目を見開いた。そして自分の頭を隠すように抱え、後ろを向いた。
「お、おおぉ、おおはよ!」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃん……」
そして全力で二度目の挨拶。僕はそんなルルの反応を無視し、近づいた。そしてルルを抱え、持ち上げる。
スッ
「んぇっ!?」
「ほら。早く顔洗っちゃお」
「ぇ……ぃ……か……」
そしてそのままベッドから降ろし、僕は先に洗面所へと歩き出す。
「……私、軽かった……?」
「……ん? ルルは程よい重さだよ?」
「え……ほ、え? 程よい?」
ルルも遅れて僕の後ろを着いてきた。
見られるのを拒んだのはちょっと悲しかったけど……恥ずかしがってるルルを見れたから良いかな……次は目を逸らさないように顔を固定させておこうかな。こう、両手で顔をグッ、と。
ガチャ
何て考えながら、僕は洗面所兼脱衣所へと入っていた。
「ん……というか何で一つしかないんだろう……」
僕は洗面台を見ながら言う。僕の言葉を聞き、ルルも洗面台を見た。
部屋は複数人で利用する前提みたいな構造をしてるのにここだけ一人用って、何かおかしくない?
「……」
「いいや別に」
僕は考えるのをやめ、パジャマ……というよりほぼ着ぐるみだけど……を脱ぐ。ボタンが前に着いているので、それを一つずつ取っていく。
パサッ
「ひえっ……!?」
フードの部分は既に脱いでいたので、ボタンを三つ程取ったらパジャマは真っ直ぐと落ちた。小さな音を立てながら、僕の足元にピンク色の布が広がった。そしてそのまま、僕は下着の方にも手をかけた。
「んぁ!? ま、まっ!」
「っ!?」
瞬間、何故かルルが全力で止めてきた。僕の両手を掴み、必死の形相で。
「な……何、どうしたの?」
「パン、パンツは! パンツ何で脱ぐの!?」
「あ、いや……」
僕はパジャマを洗濯カゴに入れてから、虚空から着替えを取り出す。
「これ。えっと、レギンスを履くから」
「え……下に何も履かないの……?」
「まぁ……僕は履かないかな」
「……分かった」
そして少し渋々ながらも納得したルルは何故か後ろを向いた。小さく揺れる髪の毛にも見蕩れてしまう。
「その、着替え終わったら呼んで」
「……別に見てもいいのに……」
「私がよくない!」
……昨日のお風呂の時もそうだけど、何で見たくないんだろう。別にいいじゃん。婚約者って裸を共有するもんじゃないの?
そう思いつつ、僕は着替える。
モコモコしていて触り心地が良い肌色のセーターと足首まで覆う黒いレギンス、その上に灰色でゆったりとしているショートパンツを身に付ける。
「よし。着替えたよ」
「ん……ん、何か新鮮かも」
「んまぁ確かに。こういう服、着たことあんまりないと思うし」
生前でこういう服を着た事ってあんまりなかった気がする。あれだ、あの時はルルの好みに合わせようと必死だったからだ。ん? じゃあ今のこの服はルルの好みじゃないってことじゃん!?
「……」
「……ん? どうしたの?」
「んぁ……ぁ……ご、ごめん……」
着替え終わっても、ルルは何故か僕をじっと見つめていた。着替えずパジャマのまま。
「あ、着替えも持ってきて無いのか」
「……」
そして思い出したその言葉を、ルルは無言で頷いた。
そっか。昨日のお風呂上がりでもパジャマは持ってきてないって言ってたっけ。
僕は虚空から、今自分が着ているのと違う色の、黒いセーターと水色のパンツ、灰色のレギンスを渡した。
「……ぇ……?」
「……僕とお揃い」
「っ!?」
ペアルック……この前のミチルちゃんとフルキさんの時にも小さく思っていたけど、憧れてはいたから。
ルルは服一式を受け取り、顔をその服へと埋めた。顔が赤いから、恥ずかしがっているのだろう。触りたい。撫でたい。
「えと……」
「ん?」
「後、その……下着も……」
「あ……」
そして顔を埋めたまま、小さくそう言った。
そっか。パジャマも着替えも持ってきてないんだから、下着が無くてもおかしくないのか。
「じゃあ……一旦自分の部屋に戻る?」
「この格好で戻れと」
「その格好のルルも可愛いから大丈夫!」
「っ!? も、そ、わ、私の心の問題!」
両腕を広げ、自分の姿を僕に確認させるルル。しかし、部屋に戻るのが恐らく恥ずかしいのだろうと思い放った僕の率直な感想にたじろぐ。
「なら、僕の下着を貸そうか?」
「……んぇ!?」
僕は虚空から紫色のボクサーショーツを取り出し、ルルへと差し出した。ルルはそれを受け取り、オドオドとしている。
「ぁ、やっぱダメかな?」
「あ……えと……む、胸の方も欲しい……」
「あそっか……どうしよう……」
そっか、下だけじゃなくて上も必要か。僕は胸に何も身に付けないから何も貸せないし……
「あ、そうだ」
僕はどうすれば良いかと悩んでいた時、丁度良い代物があったのを思い出した。
カチャ
「これとかどう?」
「え、な、何これ? タオル?」
僕はロッカーから白い布のような物を取り出す。それを見て、ルルは疑問の声を上げる。
「さらし、っていう名前の下着らしいよ」
「さらし……は知ってる。下着だったんだ」
「ね。下着には見えないよね。タオルみたい」
そう言いながら僕はさらしを手渡した。
下ならまだしも、上の方で男女兼用の下着って珍しいよね。僕が知らないだけで、もっと沢山あるのかな?
「ん……じゃあ、先に顔洗ってて」
「え……でも……」
「でもじゃ……見ようとしてる?」
「い……いいじゃん別に……」
そしてルルの着替えを見ようとした時、ルルが洗顔を進めてきた。
いいじゃん。ルルの着替えをじっくり眺めたいんだもんもう。
「……」
「……わ、分かったよもう……」
着替えず、僕をじっと見つめてくるルル。仕方なく僕は食い下がり、洗面台の前へと立った。良い位置にいるからか、どんなに頑張って顔を動かしてもルルの姿が鏡に映らない。
故障してるのかこれ?
「偶然を装って見ようとしないで」
「んぐっ……」
「……レンってこんなにエッチな子だったんだ……」
「……僕も驚いてる。気が付いたら躊躇が無くなってた」
シャー
そう言った後、洗面台の蛇口を捻った。
でもしょうがないじゃん。長年想い続けていた人と婚約者になれたんだもん。これでも我慢してる方だよ。
僕は鏡と睨めっこしながら、前髪はヘアバンドで留め、後ろ髪はゴムで結び、前へと垂れないように固定した。
「っと」
朝のお手入れが終わったのか、ルルが鏡を見ながら髪の毛を解いた。後ろから見えるその姿を見るだけで昂り、抱き着きたいと感じてしまう。だから抱き着いた。
「ひぅ!?」
腕をルルのお腹へと巻き付かせ、ルルの背中に顔を埋める。可愛い声を出しているルルを耳で感じながら、僕は服の上からルルの体を堪能する。
はぁ……良い匂い……舐めたい……
「ん……思ったんだけど」
「ん、何?」
ルルは僕の腕に手を添えながら鏡を見てそう言った。返事をした後、ルルは僕の腕を解いてからこちらを振り返り、僕の頭とお尻を見てから言葉を繋げた。
「その耳とか尻尾。感覚はどうなってるの?」
「感覚?」
「獣耳を触った時、反応が凄かったから」
「獣耳……? ってこれの……んぇっ!?」
そう言われ、僕はアンスロの方の耳と尻尾を鏡で見る。見てから、レギンスの上部から飛び出ている僕の尻尾が二つに見える程の勢いで揺れているのに気が付いた。
「えと……感覚は……何て言えば良いんだろ?」
「性感帯」
「……は、違うと思う」
「……え、性感帯知ってるの!?」
表現の仕方が分からず、悩んでいた僕の耳にポツリと聞こえてきたその単語を、僕は一瞬考えてから、否定した。
でも何、僕が性感帯知ってる事ってそんなに変なの? そんな声出すほど? 驚きすぎじゃない?
「この耳、好きな人に触られるからあんな風になるだけで……例えば、ドウルさんが触ってもあんな反応はしないよ」
「……便利な耳……」
「べんっ、便利?」
まぁでも、好きな人の範囲は結構広いからな……ハヤタさんにも反応しちゃうぐらいだし。というかこの耳……便利……なのかな……? ルルが言うなら便利なんだろうけども。
「それなら、敏感には間違いないね」
「……まぁ、好きな人前提だけど」
「……」
まぁ確かに、触られて過敏に反応しちゃうなら、敏感って捉えてもおかしくはないかな。
「あでも。それで言うなら、尻尾は鈍感な筈なんだよね……」
「そうなの?」
「そ。そもそも感覚が殆ど無い。何故かルルが触った時は変な感覚したけれども……」
僕は長い尻尾を股を潜らせて前へと持ってくる。そして両腕で抱きかかえる。
感覚が無いから、さっきみたいに勝手に揺れてることに気が付かないし……何でルルが触った時は耳の時みたいな感覚がしたんだろう……不思議……耳は好きな人じゃなくても、触られているっていう感覚はあるのに。
「何だったんだろアレ……」
「……」
「ん? え、ひぇぁっ!?」
ひぇぁつ!?
するとなんの前触れも無く、ルルは僕に近づき、梳かしたばかりの髪の毛を揺らしながら僕のアンスロの方の耳を掴み、撫でた。
え、ちょ、な、何! ぁ……ぁぁっ……!
「こっ……ぉぁ……!?」
「あ、ごめん」
が、僕の反応を見たからか、ルルはすぐに耳から手を離した。
んぇ……え……や、めるの……?
「……な、何で急に触ったの……?」
「……ぴ、ぴくぴくしてて……つい……」
「……」
何その理由可愛すぎる。というか僕の耳ぴくぴくしてたの……? マジかよ自分だと全然気が付かなかった……
僕は少し距離をとったルルに、再度近づく。
「……僕の耳……んっ……さ、触り心地良かった?」
「っ!?」
そして僕は自分の耳に触れながらそう聞いた。
やべぇ触れなきゃ良かった。また変な感覚が来て変な声出ちゃった。
「……ん……うん……」
そんな僕に気が付かなかったのか、ルルはその問いに若干考えながらも答えてくれた。
そっか。良かったのか……良かった、か……
「じゃあ、もっと触る……?」
「……え……?」
「いや、まぁ……ルルが触りたいなら、だけど……」
「……」
ルルは僕のアンスロの方の耳に手を伸ばし、一瞬躊躇しながらも、優しく……
ギュッ
「ほひゃあっ!?」
ほひゃあっ!?
ルルは僕の耳を、結構強く掴んだ。痛くはないが、唐突に訪れたその強い衝撃に僕は変な声が大きく漏れ出てしまった。
「ぁ……ごめ、い、痛かった?」
「ん……だ、いじょうぶだよ……もっと触っても大丈夫」
「ん……わ、かった……」
変な声を出した僕に、ルルは手を離しながら心配の声を上げてくれた。
……ん……い、たくはなかったけど……唐突だったから驚いただけだから……
僕の返答にルルはさっきよりも震えた手で、でも勢いのある撫で回し方で僕の耳に触れる。
「ん……んぎっ……にゃっ……」
「……」
「ぁん……んぁ……ふぁ……」
「口抑える?」
僕は耳に伝わってくるその感覚に身を委ね、何も考えず、声も我慢せず、必死に僕の耳を堪能してくれるルルの顔を眺めながら今を堪能する……
ガチャ
「んっふふぅ……ん……?」
「ん?」
「んっ……んん……」
と思った瞬間、二人っきりのこの空間に突如として謎の声が現れた。
「え……な、何してるのかな……?」
そしてその声の主、マユカさんが僕達を見て、若干引き気味にそう聞いてきた。
あれ……何でここにマユカさんがいるの……? あやばっ、ここ洗面所だったの忘れてた……
「いや、うん……朝っぱらから何してるの?」
「どしたの? ん? うわぉ」
尚も理解が追いついていないマユカさんの背後からハヤタさんも入室し、僕達を見た。そしてマユカさんと同じように後ずさった。
「……」
「んぁ……はぁ……はんっ……んぁ……」
二人の登場により、ルルは僕の耳から手を離した。若干気まずそうに目を逸らしている。僕はそんなルルの顔を眺めながら、ゆっくりと息を整える。
「レン君は大丈夫なの……? 苦しそうだけど」
「ん……ひ、ひぇ……ら、大丈夫です……」
「大丈夫に見えないけど」
「その、ルルとの触れ合いが……んっ……凄く良かったので……」
「……」
ハヤタさんの心配させないようにと、僕は少しづつ息を取り戻しながら答える。
ふぅ……ちょっとだけ楽になったかも……
「規制入る?」
「……いや、ギリセーフだと思う」
「まじ?」
「服乱れてないじゃん」
「なるほど」
すると二人が僕達を見ながら謎の討論をし始めた。
何規制って? 僕達の何を制限するつもりなの? というか服……?……乱れてたらなにかまずいの……?
「距離が近い事に関しては何も言わないけどさ……時と場所を考えて」
「朝っぱらから皆が使うであろう洗面所でおっぱじめないでよ。魅せプか」
「すみませんでした」
レン君変態化へと着々と進んでいる模様です。興奮しますね。




