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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
55/107

1.50.3 VS超バカ力な爆発をしてくる男子と物覚えが良すぎる男子

因みにトヨ兄のこの固くする能力。一応、こうか、という名前の妖精の力です。

 耳を劈くような轟音と共に起きた超爆発。そして周囲を覆うほどの濃い煙。

 校舎の一角で起こったその事態。既に避難は完了しているのか、近くには誰もいない。


「……ふぅ……」


 そんな状況の中数分。未だ微かに舞っている煙と共に、トヨは安堵したかのように息を吐いた。

 壁はそのままだが、教室の扉とガラス、さらには天井の蛍光灯は粉々になっている。トヨの固くする能力が届かなかったのだろう。


「流石に危ないやり方だったな……」


 そんな周囲の状況を確認しながら、そう呟く。そして目の前に視線を戻し、片膝を着いている男の元へ歩き出した。

 そして男の目の前で屈み、懐から手錠を取り出した。


 グッ


「っ!?」


「耐える訓練してねぇとでも……?」


「マジかよ……!?」


 瞬間、トヨの腕を男がガシッと掴んだ。そしてトヨを勢いよく引き寄せ、


「熱いのが苦しいことぐらい……俺自身が一番分かってんだよ!」


 ドゴゴッ


「んぉっ!」


 その腹めがけ、大きな球を三発放った。先程までの指鉄砲とは違い掌から出しており、大きさは人の顔ぐらいある。

 そんな今までとは違う威力があるであろう球をモロに喰らったトヨはそのまま真っ直ぐ、長い廊下の奥へと飛んで行く……


「イルタリズクっ!」


 ドバッ


「っ!?」


 トヨが釣竿を持ち、叫んだ。クジラが男の足元から出現し、男を丸呑みにする。突然の出来事に男は反応出来ず、そのまま水でできたクジラの中に囚われてしまう。


「おぁっ!?」


 そして釣竿を持ったトヨ共々、長い廊下へと吹き飛んで行った。

 





 ガシャッ


 ドゴッ

 ガッ


「がっ!?」


 軈て校舎の壁まで辿り着き、更にはその壁までぶち破り、トヨは外に放り出された。そして木にぶつかり、小さく跳ねてから地面に転がった。


 ドバッ


「んがっ!?」


 直後、トヨが召喚したクジラが破裂し、トヨと共に外に放り出されていた男も地面へと落とされる。

 場所からして、昇降口から出てすぐに広がる空間だろうか。周囲……恐らく、避難していた人達だろうか……が、唐突に飛んできた二人のことを訝しげに見ている。近寄ろうとせず、遠目に見るように。


「はぁ……はぁ……」


「俺……だってよ……」


「……っ……」


「マジになりゃ……爆発に頼らずにあんぐらいの火力はいけんだよ……」


 うつ伏せになりながらも、顔をトヨの方に向け睨みながらそう言う。


「っつうのによ……」


「っ……」


「モロに喰らった……くせに……ピンピンどころか反撃……」


「……」


「は……クソが……」


 そう言い残し、男はうつ伏せのまま動かなくなった。トヨは息を荒くし、その光景をじっと見つめていた。が、男が動かなくなったのを確認すると、立ち上がり、ゆっくりと男へと近づいた。体が痛いのか、背中を曲げ、一歩一歩の足取りが酷く重たく見える。


「……」


「はぁ……はぁ……」


 近づくと、男の荒い息遣いが聞こえてくる。まだ意識はあるようだ。

 トヨは未だ持っていた手錠を持ち、男の両手へと手を伸ばす。


「体中がズキズキするし……口動かすのもキツい……」


「っ……」


「てめぇを……トヨを、ぶっ飛ばすので全部出しきったからだな……」


「……そうか……」


「んくっ……あの爆発……流石に初体験だったぜ……」


 トヨは未だべらべらと呟く男の両手を男の背中に持っていき、


 ガシャッ


 手錠を取り付ける。男は抵抗する様子すら見せず、身を任せている。


「……」


「……まぁ、あれだ……外でやり合ってたら負けてたかもだし……その、強かったよ?」


「……何で俺が……トヨをこっちにぶっ飛ばしたか……分かるか?」


「……は?」


 取り付け終わり、一段落……と思った瞬間、男が口を開いた。先程までの気力の無くした声とは違い、少し嬉しそうな声色をしている。

 そして男はトヨの後ろに目をやりながら、


「まさかよ……俺が……単騎で突っ込んできたとでも?」


 ドゲァッ


「んだっ!?」


 唐突に、トヨの後頭部に衝撃が走った。

 トヨは横へと吹き飛び、小さく跳ねた。トヨは直ぐに立ち上がり、自分がいた所に目を向けた。そこには、


「っ!」


 脚を振り上げている、背筋ピン男がいた。


「トケジロク君!」


 背筋ピン男が、背中丸め男……トケジロクに近寄り、大きな声で心配の声を上げる。そして両手に付けられた手錠を掴み、外そうとしているのか、ガシャガシャと引っ張る。

 君付けとか可愛いなこいつ。


「気を付けろよ……」


「っ!? だ、大丈夫か?」


「あいつ……触れた人や物を、動けなくする代わりに……固くしやがる……俺の爆発くらってもピンピンするほどによ……」


「はぁっ!? んっ! マジかよ……!」


 そんな背筋ピン男を見ながら、トケジロクは小さくそう伝える。背筋ピン男は立ち上がり、トヨを睨みつける。


「……っ……」


 するとトヨは背筋ピン男へと走り出した。


「っ!」


 そして丸い何かを懐から取り出した。形状から、先程煙を放ったものだと分かる。


「っ!」


 ガッ


「ぎっ!?」


 が、その煙玉から煙を放出させる前に、背筋ピン男が右手を振るい、鏡を放った。鏡はトヨの手首に直撃し、トヨは思わず立ち止まり、煙玉から手を離してしまう。


 ガタッ


 煙玉はそのまま小さな音を立て、地面へと落ちた。


 ズガッ


「っが!」


 そしてそのまま、背筋ピン男はトヨの腹に拳を打ち込んだ。トヨは後方へと吹き飛び、地面で数回バウンドし、転がる。


「ん……くっ……」


 そして停止した瞬間、トヨは立ち上がった。


「……お前、本当に別世界から来たのか……?」


「……まぁ、こっちに来て十何年も過ごしてるからな」


 そんなトヨの姿を見て、背筋ピン男は驚きの声を上げた。別世界の人間を詳しく知っているのだろうか。


「……」


「っ!」


 背筋ピン男はゆっくりと右手を前に突き出した。それを見たトヨは左手で右腕を掴んだ。瞬間、


 ズグッ


「っ」


「……ち……どんな反応速度だよ……」


 トヨの体が一瞬ピクリと動いた。

 何らかの衝撃が起こったのだろうか、トヨは一瞬顔を顰める。背筋ピン男は舌打ちをした。


「攻撃が通らないだけじゃないとか……お前やべぇよ……」


 そして右手を前に突き出したまま背筋ピン男は呟く。トヨは背筋ピン男を見つめ、次に何が来るかを警戒している。


「なら」


「っ!?」


 次の瞬間、トヨの体が浮いた。恐らく男が動かしているのだろうか。右手を上げるようにトヨへと突き出し、軽く握っている。


「何が、したいんだよ」


「こういう事をしたいの」


 意図が全く分からないトヨは、右手で釣竿、左手で右腕を掴んだままそう呟く。それに対し一言返した背筋ピン男は左手を下に突き出し、


 ズォッ


 目の前に鏡を五つ召喚した。大きさはトヨぐらいならすっぽり覆ってしまうほどの、恐らく教室等の扉ほどはあるだろう、長方形をしている。


「……」


「……は?」


 そして次に、組み立てるように鏡を動かした。一枚は倒し、残りの四枚をその側面にくっつけるように置いていく。その光景に、トヨはハテナを浮かべている。


「よし」


「……え……?……っ……」


 軈て無言だった背筋ピン男が小さな声を出した。背筋ピン男の目の前に、鏡で作った即席の箱の様なものがある。トヨからしたら未だ何をしたいのか分からず、戸惑っている。が、トヨは右手に持っている釣竿を強く握った。


「イルタリズク!」


 そして叫んだ。

 トヨの持つ釣竿……いや、釣り糸が背筋ピン男へと突っ込むように動いた。


「っ」


 が、背筋ピン男は半身を動かして避けた。余裕そうな表情と動きだ。

 避けられた……というのに、トヨは表情を変えずに男を見つめた。


「ちょ……危ねっ……」


「がっ!」


「っ!?」


 が次の瞬間、背筋ピン男の後ろから悲鳴にも似た声が聞こえてきた。

 背筋男は振り向くと、水でできた大きなクジラがトケジロクを丸呑みしていた。


「っ! トケジロク君!」


「っ! んむっ! ぐっ!」


「あれだ、俗に言う人質って奴だ」


「お前……本当に別世界から来たのか!?」


 トヨの行動に、背筋ピン男は焦りながらそう言う。が、そんな状況でも背筋ピン男は左手から、


 ゾアッ


「っ!?」


 小さな青い塊を出した。透き通っており、少し波打ちだっている。


「……」


 ピシャッ


 そしてその塊を鏡の箱の中に向かって無言で放り投げた。塊は鏡に当たった瞬間に弾け、液体になって鏡の箱の中に拡がった。


「……」


「……は……?」


 男は左手を動かし、鏡の箱を浮かせる。


「……」


「っ!?」


 そしてトヨの真上に持っていた瞬間、鏡の箱をひっくり返した。


「……」


「まっ!? っ!? そういう事かよ!」


 が、中に入っていた水が落ちることはなかった。波はたっているが、鏡に張り付いているのか重力に逆らい続けている。


「トケジロク君を離せ」


 ピシャッ


「っ!? んっ!?」


 そう言い、鏡の箱の高度を下げた。トヨの顔に、重力に逆らっている水が覆い被さる。


「良いのか? さっさとしないと、お前は溺死するぞ?」


「っ!」


 そして背筋ピン男は息を止め続けているトヨに向かってそう言った。余裕そうな表示をしている。トヨはその背筋ピン男の発言に、少し顔を顰めた。

 背筋ピン男の言葉を理解した……ということはつまり、声は聞こえているという事なのだろうか……?


「良いさ別に。俺は待てる男だからな?」


「……っ」


「何時間でも付き合ってやるよ……息……何時までもつかな?」


「っ!?」


 そんな挑発にも似た言葉を聞いてか、トヨは釣竿を動かし、クジラを地面へと打ち付けた。


 ドグァッ


「っがぁっ!?」


 大きな音を立てながら、クジラは背筋ピン男の目の前の地面に衝突した。少しだけ砂埃が舞っている。衝撃で、中にいたトケジロクが空中に投げ出された。


「っ! あぁそれで良い! 今た――


 プシュッ


 そしてそのトヨの行動に対し嬉しそうな声を出した背筋ピン男だったが、突然背筋ピン男の視界が真っ白に染まる。目の前にあった煙玉にクジラが衝突したことにより、発動したのだろうか。


 トスッ


「んなっ!? ちっ!」


 そして右手を空へと掲げたまま、背筋ピン男は左手で煙を払うように振り回す。


「トケジ――


 そしてトケジロクの心配をしたのか、走り出そうとした瞬間、


「これで」


「っ!?」


 背後から聞こえてきた声と共に、背筋ピン男の首に釣糸が巻き付けられた。


「チェック、っと」


「っ! おまっ! 何でっ!?」


「知ってるか? 煙って気体の中に固体が含まれてんだってよ」


「っ!?」


 背すじピン男は突然背後に現れたトヨに、驚きの声を上げた。それに答えるように、トヨは小さく呟く。


「あんたが俺に見えない何かで拘束した。その何かは、あんたのその腕と連動している」


「んぐっ!」


「それさえ分かりゃ十分。俺とあんたの間に壁を作ればいいってもんよ」


 右手に釣竿を持ちながら話を続ける。

 軈て煙が晴れた。空中には背筋ピン男が作った鏡の箱と張り付く水しかない。


「ほら、手出せ。手錠付ける」


「っ……ト……トケジロク君は……!」


「これ以上は何もしねぇよ。通報するだけだわ」


「本当だなっ……!」


「……」


 そしてトヨの要求を素直に飲む。

 背筋ピン男は空中に漂っている代物たちを消し、両手をトヨの目の前に差し出した。勢いよく行われたその行動に、トヨは若干引いている。


 ガシャッ


 そしてそのまま手錠を取り付けた。

 瞬間、トヨは力が抜けたようにへたり込んだ。


「ふぅ……疲れたわ……」


「トケジロク君っ!」


「……」


 トヨとは対照的に、凄い元気な背筋ピン男。手錠を付けた瞬間、地面に転がっているトケジロクの元へ駆け寄った。


「……チェックはダサかったかな……」


「どういう心配してんだよ……」


 トヨは頭を抱え、戦いの反省ではなく決めゼリフの後悔をしている。

 まぁ確かに。カッコつけてる感満載ではあったね。


「いや、あんだけお前ダセェお前ダセェって連呼してたのに……ねぇ?」


「良かった……あぁ、トケっ、ああぁっ!」


「落ち着け」


 そんな二人を……というか主にトヨを……後目に、背筋ピン男はトケジロクへとのしかかり、頬擦りをした。トケジロクの反応から、この行動は日常茶飯事なのだろうか?


「……お前ら仲良過ぎないか?」


「うるさいぼっち!」


「おい、こいつこんな口悪いのか?」


「……ぼっちは言い過ぎだろ」


「ぼっちは言い過ぎたすまんなっ!」


「……」

背筋ピン男ちょっと可愛いな。

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