1.50.2 VS超バカ力な爆発をしてくる男子と物覚えが良すぎる男子
これから前書き後書きに困ったら叫ぼうかな。
トヨお兄ちゃああん!
いうてトヨ兄、まだお兄ちゃんらしい描写全く無いけど。
「んなぁ!? てめぇ!」
ゴオォッ!
男は炎を、先ほどよりもさらに二回りほど大きく炎を身に纏わせた。
「まさかこの後に及んで逃亡を選択するのかよ!?」
「ほれほれ。捕まえてみなさいな」
校舎目掛けて全速力で走るトヨ。男の方を全く見ずに煽る。真顔で。
「うぜぇ! ごふっ! ッ、オラァッ!」
多量の煙に咳き込みながらも、男はトヨに右手の人差し指を向け、炎を放つ。が、既に煙は男もトヨも包み込んでいる。
ドゴォッ!
そんな状態で当てるのは至難の業だろう。炎の弾はトヨの横をすり抜け、校舎に穴を開けた。
「ちっ!」
「ほわぁ。危な」
男は全速力で駆け、煙の外に出た。そして半壊している校舎の中に入っているトヨを発見した。
「クソがっ!」
トヨを追いかけ、男も校舎の中に入る。両手に炎を移し、いつでも放てる状態にしながら。
「ふはははー」
「ふざけてんのかテメェ!?」
トヨは笑い声を上げ、煽るように廊下を全力で走る。真顔で。もちろん、見た目通り短気な男にはイライラが募る。
「ここは室内! 動きは制限されんだよ! テメェにコレを当てることなんざ……簡単なんだよ!」
「良い例えが思い浮かばなかったのか? ダッサ!」
「っ! ぶっ殺す!」
男はトヨに向けて炎を放つ。が、今度は一発や二発ではなかった……
「うらぁっ!」
「ん?」
奇声にも似た叫び声あげる男。何事かと後ろをチラリと見てみるトヨに、後ろから迫りくる無数の炎の弾が視界に入った。
「んおっ!」
その光景にトヨも動揺を露わにする。
「指先からしか出ないんじゃなかったのかよ!? 乱射? 乱射な――
ドゴォ
「痛ったぁぁっ!?」
軈て当たってしまった。当たった瞬間、トヨは床に手を付き立ち止まった。避けているとはいえ走りながら、更にはこの数だ。一発や二発では済まされない数に触れてしまうのだろう。事実、
ドゴォ
「オゴォッ!」
ドゴォ
「ズガッ!」
計三発、背中に撃ち込まれてしまった。
「んくっ! なん、だよあいつ!?」
「っ!?」
「ショットガンタイプじゃなくてサブマシンガンタイプだったのかよ!」
そう悪態をつきながら、トヨは再び走り出した。球が背中に当たり、煙を出しながら小さな爆発を起きた。トヨの背中にダメージが入るはず……なのだが、当の本人は速度を落とさず全速力で走り抜く。
「……当たったのにあの程度の反応……あいつの体そんなに硬ぇのか……?」
右手を連射し、さらにトヨにも劣らぬ速さで走りながら呟く男。
「……ちっ」
するとトヨは急ブレーキをし、右に曲がった。壁がなく、第一校舎と第二校舎を繋ぐ渡り廊下を走る。
「っ!」
対し、同じく全力で走っていた男は、その廊下を通り越してしまった。
「ちっ。こんなとこにも通路……室内だとあいつの方が有利だったのか?」
呟きながら廊下を走る。トヨはすでに渡りきり、向かいの校舎に入っていった。
「絶対ぇ逃さねぇぞ……クソガキが……」
数十メートルもある渡り廊下を走りきり、第二校舎内の廊下を全力疾走するトヨ。
男とは距離をとれた。が、校舎内のままであることには変わりない。不利という状況には変わりがない。だというのに、トヨは何故か余裕の顔で走っている。
廊下には
ダッダッダッ
と、一歩一歩勢いよく踏みしめる音が響いている。廊下には未だ生徒がちらほらとおり、そんなトヨの全力疾走を訝しげに見る。が、興味を無くしたのかすぐに視線を外す。
そんな光景の中、気にせず走り続けていたトヨだったが、
「はぁ……やべぇ。ちょっと疲れてきたかもな」
限界が近づいてきたらしい。一体どこに向かっているのだろうか。
「はぁ……はぁ……」
軈て壁際……廊下の突き当たりに手をついて息を整える。もちろんそんなことをすれば、
「っと、追いついたぞ。ガキが」
「っ」
追いつかれる。男も相当なスピードだったのだ。簡単に追いつけたのだろう。
トヨは全身で振り返り、男を視認する。
「おいおい。良いのか? そっちは行き止まりに見えるぞ」
男の言う通り、トヨの後ろは壁と赤くて小さい扉のみ。
扉、と言っても部屋のではないのだが。
そして右側は壁と中庭へ行く扉、左側は鍵がかかっている教室のみ。上部は明かりが灯っていない蛍光灯が吊るされている。完全にではないが、道が絶たれている。
「逃げ場はない。どうだ? 大人しく丸こげになる気はないか?」
「やっぱこいつダセェわ」
「っ!? テメェ、楽に死ねると――
「だからダセェよ! もっと捻ったセリフ吐けよ!」
両手を広げる男に対し、やはり気になるのか男のセリフに大きな声で反論した。
確かに自分もダサいと思う。
しかし何故だろう。まだ余裕があるのだろうか、トヨは焦る様子を全く見せない。
「今の状況分かって言ってんのか? そんなに早死にしたいのか?」
男はトヨに近づきながら、両手に炎を溜める。一方のトヨは男の方を向きながら少しずつ後退りをする。
トン
遠くない距離……いや、近い距離にあった壁と背中が、触れ合った。
「自ら行き止まりに向かってくれる。本当に俺はラッキーだな。狙いやすい」
両手をトヨに向け、炎の弾を一発撃った。
「っ」
ガゴォッ
トヨは右腕の肘を曲げ、全身を守るように前に出す。そしてそのまま弾を受ける。またしても小さな爆発が起きたのだが、
「ぐっ……ってぇ……」
「やっぱてめぇ……スキル使ってるな?」
またしても無傷。流石の男も疑問を浮かべる。何かを使ったのかと。
「つぅ……さぁ……どうだか」
「……いや、仮にスキルだとしても、さっきはガッツリ職業も使ってたし……」
答えを見つけられずイライラが男に募る。トヨはそんなスキを見逃すほどの劣等生ではない。
「がっ!」
ドサッ
「大人しくしとけ。今考え中だ」
が、トヨが突っ込んだ瞬間、男は一瞬でトヨの足に指を向け弾を撃った。弾をもろに受けたトヨはよろけ、床に倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「んあ。無駄撃ちしすぎたか」
とそこで、自分が纏っていた炎が小さくなっていたことに気づいた男。すると徐に壁の方へ近づき、
「ふっ!」
ガグァッ
「っ!」
壁に拳を叩き込み、壊した。
今まで爆発攻撃しか見ていなかったが、男自体もかなりの実力者なのだろう……と思ったが、異世界だからそこまでおかしい威力ではないのだろう。
「お前……損害賠償大変なことになるぞ……」
「今それを気にするとかバカなのか?」
壁に手を付きながら立ち上がり、巫山戯てるのか本気なのか分からないトヨの一言。それにツッコミを入れてから外へ出た。が、
「……は? はぁっ!?」
外に生えている木々を見て絶句した。
大きく聳え立つその木々。太陽の光を一切通さないほどの大きさをしている。
「ったくよ。事前調査が足りなさすぎだろ」
「っ!」
「その木はそこの実験室で扱う素材。空を覆い尽くすほどに濃く生茂ってんの」
足を抑えているが、冷静に目の前の木について説明するトヨ。
「テメェ……俺のに気付いてたのか……」
「あぁ。もちろん」
男が何をしたかったのか、トヨが理解していた事に驚きを隠せないようだ。
「太陽の光を吸収して、その光を炎に変えて身に纏ってたんだよな」
「……はぁ……そうだ。お前頭良いんだな」
「エネルギーの元は太陽の光だからレイトの消費を少なく、かつ素早く、そして大きな炎を見に纏うことができるってことだ」
「ちっ」
「俺がいた世界で言うところの……太陽光パネル……みたいなやつだよね」
男はトヨの言葉に、イライラを募らせる。左手で己の頭を抱えた。バレたのが不服だったのだろうか。
「太陽光男……ソーラーマン……ぷっ……」
「っ!? そんなら……ふっ!」
ガッ
煽るように喋るトヨに対し、イライラを募らせていく男。
でも自分、ソーラーマンは結構好きかも。
が次の瞬間、男はトヨを後目に大きく跳躍して目の前の木を枝を掴んだ。
おそらく登ろうとしているのだろう。
「んぉ。わぁお」
ガサッ
木の上へ行けば太陽の光を浴びれる。だというのに特に驚いた声色ではないトヨ。
この様子だと……予想の範疇だったのだろうか?
「……は……? はぁっ!?」
「おぉう。バカかあんた?」
「っ!」
ガサガサパキリと音を立てながら高い木を登った。てっぺんまで登った。が、男が太陽を浴びることは無かった。トヨの呆れ声と共に、男の再絶句の声が聞こえる。
「当たり前でしょ。さっき俺ら長いなっがい渡り廊下を突っ走ったじゃん」
そして男の視線の先、渡り廊下を指差しながらそう言う。建物と建物を繋ぐ渡り廊下。その四階から上の部分が太陽を隠していたのだ。
「て……めぇ……!」
「何その反応? 逆に一階にだけある渡り廊下って何!? ここ学校だからな!?」
男はトヨを睨む。煽っているのか素なのか、トヨは大きな声でそう反論した。
「まぁ、こっちの世界も夕方になったら西に沈むっていう原理だったのは地味に助かったなぁ」
そう言い、吹き抜けになっている東の方を人目見てから、背中の釣竿を手にして振りかぶり、
「ほっ」
男に向かって釣り糸をぶん投げた。
「っ!」
釣り糸が男の左腕に絡みついた。
「うし。んじゃ――
「……ありがとな」
「は?」
が、男は焦りもせずそう言った。
男の右手には小さな鏡が握られていたのだ。
「らぁっ!」
「っ!?」
男は鏡を真上に放り投げ、全身をバッと広げた。両腕両脚を広げ、面積を増やすように。
「くっ……そがっ!」
「んぐっ!」
トヨはすぐに釣竿を振り、男を室内へと戻そうとする。が……一瞬、ほんの一瞬だけ、男の右手に、鏡で反射した太陽の光が当たった。
「らぁっ!」
ガグッ
「んぉあっ!?」
そして室内へと男をぶん投げた。男は床と衝突し、仰向けに倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……」
「……くふふっ……」
「っ!」
が、軈て小さく、そして不気味な笑みを浮かべながら、長い廊下を背にしゆっくりと立ち上がった。トヨはその光景に……いや……
ゴオオォッ
「くははっ! あぁ、無駄だったな! 見ろ! 全力全開だぜ!」
「マジかよ……一瞬浴びただけで満タンまでいくのかよ……一家に一人は欲しいわ……」
男を中心に大きく燃えているその炎を見て、トヨは絶句した。当たり前だろう。鏡に反射した光を、それも一瞬右手に当てただけでこの大きさ。流石に笑えない状況なのだろう。
「さってと……」
「……」
そして背中を曲げ、前のめりになった。そのままトヨの足を見つめ、ニヤリとする。
トヨの足からは出血している。膝を小さく震わせている所を見るに、恐らく立つのも漸くという状況なのだろうか。
「足はもうやったからな。もう機敏には動けねぇな?」
「……っ……」
「なら……俺は勝てるな」
「……」
そして己の勝利を確信したのか、男は余裕そうな表情をしている。両手を合わせ、炎を移す。
「お前が硬くなる理由は分からねぇけど……やり方と条件は分かった」
そして両手を拳銃の形にし、前に突き出した。トヨはその光景を黙って見つめている。
「自分が触れた人やモノを固められる。が、固めたら動けない……自分自身でも」
「っ」
トヨは何かを察したのか、右腕を左手で掴んだ。直後、
「だから、簡単だな」
ドゴッ
男がトヨに向けて弾を撃った。
ドゴッ
先程までとは違い、一発一発を確実に当てるかのように、ゆっくりと放っている。
ドゴッ
放ちながら、男はゆっくりとトヨに向けて歩を進めた。一歩一歩、踏みしめるように。
「こうやって撃ちまくってる間に近づ――
プシュ
「っ!」
が、突然視界が真っ白になった。恐らくまた煙幕の様なものを放ったのだろうか。男は堪らず撃ち込むのを止め、両腕を顔の前に翳した。
「またこれか!」
ガララッ
ガタン
「あぁっ! くそがっ!」
ドゴッ
ゴグッ
トヨとは違い、煙を晴らすための手段を持ち合わせていないのだろうか、両手を振り回しながら、弾を撃ち、煙が晴れるのを待った。
ガガッ
「……ちっ……」
弾を三発放った所で、煙がゆっくりと晴れた。が、やはりトヨは目の前からいなくなっていた。男は周囲を見渡した。
左側の壁に二つ、目の前の扉のすぐ上に一つ、小さな穴が開いている。恐らく、男の放った球はそこに当たったのだろう。
「開かれたドア。壊された壁。どっちも有り得る、てか?」
実験室と書かれた教室の扉、既に扉の形状はほぼ無くなり瓦礫が床に散乱している扉。交互に見ているところを見るにトヨの行方を考察しているのだろうか。
「……」
どちらかをすぐに選ぶ……と思いきや、不意に両手を前に突き出した。
ドグッ
グギッ
「違うな」
目の前の小さな扉に向けて、弾を二発放った。扉は硬い音を出し、金具が外れたのか少しだけ傾いた。そして男は表情を変えず、その扉に近づく。
「その技補具が入ってる扉……多少無理すれば、お前でも入れるよな?」
そして扉に触れるほどの距離にまで近づいた時、手を前に突き出したままそう呟いた。
「教室の扉をダミー代わりに態と音を出して開け、俺がそっちに行ってる間に背後から叩く……ってか?」
そして開かれた実験室の扉をちらりと見て言葉を続けた。そしてまた炎を移すためか、両手を合わせる。
「残念だったな? 技補具の扉の方も音出てたぞ?」
そして再び両手を前に突き出し、球を放とうとしたその時、
「なら俺の思惑通り」
「は?」
ドズッ
「おがっ!?」
ガギッ
男は背中を蹴られた。唐突の出来事なので受け身も取れず、目の前の扉に衝突し倒れ込んでしまう。男は状況が読み込めず、一瞬動きを止めてしまう。
「なっ……! はぁっ!?」
プシュッ
「んぉあっ!?」
そして正体を突き止める為に振り向いた。瞬間、再び煙が放たれた。先程までの白い煙とは違い、水色をしている。
「正解は、蛍光灯で吊られてるでした」
「っ……てんめぇ……!」
トヨは左手に持った煙を放出した物体を床に捨て、右手に持った釣竿を前に突き出しそう言う。釣竿の先……というより、釣り糸は、天井に吊られている蛍光灯に巻きついている。
男はそんなトヨを睨んだ。かと思えば、周囲の煙を見て表情を変える。
「っ! あぁそうだったな……お前のとこだと、ここには消化器ってやつがあるんだったな?」
「……」
「確か、火を消せる道具っていうやつ」
ゴオオォ
そして、さらに一回り大きな炎を纏った。先程とは全く違う、後ろにある壁を覆い尽くす程の大きさだ。
「けど、それはこことは違う世界! 真逆な事してくれたなぁ?」
そしてまたしても拳銃の形をした両手を、嬉々として前に突き出した。
「ありがてぇよ! ほら見ろ、この眩しい程の焔光をよ!」
「じっくり見てるよ。まだまだ俺の計画通りに進んでるからな」
「……あ?」
が、トヨの一言にまたしても険しい顔に戻った。
クシュゥ
ピシュゥ
「お、そろそろ来るか? お前がぶち込んだ炎、漸く引火してくれたか?」
「っ!」
そして男の背後から謎の音が聞こえてきた。
男は勢い良く、外れそうになっている赤い扉を開けた。その中には、
「んなっ!」
三つ。先程男にぶつけ、爆発させた丸い物体が積み重ねるように入れてある。そのうちの真ん中と下の物体の二つに小さな空いてあり、小さな音を出している。
「お前、爆発する時に自分の……表面温度? を上げてんだろ?」
(っ! ヤバっ!)
(死ね)
(っ! 熱っ!)
「っ! てんっめぇ!」
「その上」
左手で右腕を、右手で床を、夫々触れながら目を閉じ言葉を続けた。
「熱いという感覚はある」
(……つぅ……っと。あぁ、手応え無しか)
(っ、あっつぅ……)
(……っつぅ……)
そして優しく呟いた直後、
ドゴゴゴゴゴゴアッ
「……いや、仮にスキルだとしても、さっきはガッツリ職業も使ってたし……」という何気に重要そうな事をサラッと流したのを再び拾っていくスタイル。
というかこの技補具って道具……よく考えたらただのドーピング……いや違う! あれだ! あの、速攻体に聞くタイプの栄養ドリンクだ! 流石に無理あるわ。




