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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
52/107

1.49 凄い一日を過ごしたはずなのに此奴ら楽しそうなのすげぇな

そして二時間程時間が経ちました。

アニメに夢中になりすぎやないか。

というか動画配信サービスじゃなくて、ただの録画系のやつでここまでイけるか普通?

 十八時頃。


「あれ……もう十八時じゃん」


「え? え、もう六時!?」


 何となく時間を確認しようとスマホを見て、今が十八時という中々な時間だということに気が付いた。僕だけでなく、ドバイさん以外の全員が驚いている。


「……いいや。先にお風呂入っちゃいます」


 いつもより早い時間だが、何もすることが無かったので、お風呂に入ることにする。僕は椅子代わりにしていたベッドから降りる。


「あ、じゃあ僕も失礼――


「やめてください!」


「え……いや、そんなに嫌がらなくても……」


 そして僕の後を着いてこようとしたハヤタさんを、全力で阻止した。

 何、何でそんなに当たり前のように着いてくるの? 怖いんだけど。やめて。


「凄い声量。一体レン君に何したの?」


「別に。抱きついたり押し倒したりしゃぉっと危ないから殴らないで」


「ちっ」


 そして恥ずかしげもなく、僕にした事を連ねるハヤタさん。どういう心情で語っているのかは分からないが、ハヤタさんからすれば恥ずかしくもないことなのだろう。

 そしてそんなハヤタさんの言葉を最後まで聞かず、ルルちゃんがハヤタさんの顔を貫かんばかりの勢いで、右手で鋭く殴りかかった。予備動作がほぼ無いことから、体感速度は相当なものであることが見て取れる。そしてその一瞬だけを切り取っても、やはりルルちゃんは美しいという事が分かった。いつまでも見ていたいと思える程のフォームだと。

 が、そんな美拳をハヤタさんは涼しい顔で受け止めた。素直に当たってよもう。


「……というか、それが無くてもお風呂は一人がいいですよ……」


「ぐぅ……これが、思春期ってやつなのね、母さん!」


「仕方ないわ。レン君だって人間。順調に成長してる証拠じゃないの、父さん」


「勝手に僕の親にならないでください」


 昔見た偽父さんみたいに、態とらしく目元に手をやり涙を流すふりをする二人。マユカさんは左手でハヤタさんの肩に手を置いている。

 何処の世界に一歳差の両親がいるんだよ。訳ありすぎるでしょうが。


「息子さんを私に下さい」


「みぇっ!? みょ、ルルちゃん!?」


 ルルちゃんが二人に近づき、土下座をした。ルルちゃんまでもがこの流れに乗ってしまい、むしろ僕が間違っているのではと錯覚してしまう。いや違う。ルルちゃんは正しいから僕が間違ってるんだ。


「ふん! ワシがそう簡単に息子を渡すとでも!」


「ふふふ。それ相応の覚悟か対価はあるのかしら?」


「……何、コレって僕も乗らなきゃダメ?」


 ひぇ……! 綺麗でスっと小さく纏まっているルルちゃんの土下座……二人が狡い! 僕もされたい!

 というかハヤタさんのお父さんがよく分からないんだけど。柔くなりたいの? 堅くなりたいの?


「……はぁ……入るならさっさと入りなさいよ……」


「……うん……じゃあ入っちゃいます」







 扉を潜り、脱衣所に入る。

 当たり前だけど脱衣所は浴室よりは狭い。目視だが、定員は四か五人だろうか。

 右の壁には縦に三つ、横に四つの大きなロッカーがある。左の壁には奥から洗濯機と白くて大きな洗濯カゴ、そして洗面台と鏡がある。ロッカーの右側の中には、召喚者のために用意したのか色々なサイズの洋服が入れてあった。

 銭湯と洗面所が混ざってて何か違和感何だけど。何でこんな構造にしたんだろう。両方搭載しなくても良かったんじゃない?

 僕はシャツを脱ぎ、畳んで洗濯カゴへと入れてからズボンとパンツを脱ぐ。ロッカーの右下にはバスタオルを入れているので、裸のままそれを取り出す。そして洗濯カゴの縁の部分にかける。

 それにしてもアニメって凄かったんだな。ストーリーもそうだけど、映像が綺麗だったし。線一本一本の緩急の付け方も見てて感動したし、動きもパラパラ漫画とは思えないほどスルスルと動いてたし。主題歌やBGMも、そのアニメの雰囲気にあっててさらに盛り上がったし。今回見たアニメは一話完結型だったから気軽に見ることが出来るやつだったし……ちょっと今度他にも面白いアニメが無いか探してみようかな。前にルルちゃんが教えてくれたのはドラマが多かったし。


「レン」


「ふにゅぁっ!?」


 などと考えていたその時、この部屋に居ないはずの声、ルルちゃんの声が聞こえてきた。不意の出来事に、僕は変な声と共に仰け反ってしまう。


「え……ぇ、や、なな、な、何、何かな?」


「えっと……その……」


 そして声のした方、扉の方へと近づいた。

 びっ……くりした……ど、どうしたの急に……? ハヤタさんとマユカさんとの変なやり取りは終わったのかな?


「お風呂、一緒に入る?」


「……へ……? え、ごいっ……ごいっ!?」


「んふふ……うん……」


 が、そんな焦っている僕を気にせず、ルルちゃんは扉越しに、何時ものように優しい口調でそう言った。

 え……一緒……? 一緒って、一緒って事!? え、何言っ……ん……


「え……えと……」


「……」


「……ぜ……」


「……ん……?」


「是非……お願い致します……」


 僕は頭を下げながら、ルルちゃんのお願いをお願いで返した。前の僕ならまだしも……でも……今は婚約者何だから。一緒に入るのを断るのは変だろう。入浴中のルルちゃんと一緒に過ごしたいのは事実だけども。


「……え……?」


「……え? ど、どうしたの……?」


「っ! な、何でもない! えっと……さ、先入って待ってて!」


「え? あ、は、はい!」







 引き戸を開け、中に入る。

 奥には横長の浴槽。右と左、両方の壁には鏡とシャワーと椅子がそれぞれ三つずつ設置されている。そんな洗い場と洗い場の間は二人が並んで歩ける程度のスペースしかない。

 そんな広いのか狭いのかよく分からないお風呂場内で、僕は左側の一番手間の鏡の前で椅子に座って待っている。


 やばい。


 下を向き、その三文字を頭の中で永遠と繰り返す。引き戸の向こうではルルちゃんが服を脱いでいる、という事実が頭をよぎってしまい、先程の告白に匹敵するほど緊張してしまっている。


 キュッ

 シャー


 僕は頭を冷やす意味も込め、目の前の蛇口から冷水を出した。細かな水滴が僕の頭に直撃し、全身と髪の毛を伝って床へと落ちていく。


「冷たっ」


 キュッ


 ガララッ


「ん……お、お待たせ……」


「にぇっ……!?」


 そんな緊張に塗りつぶされている中、ルルちゃんの少し震えた声と扉の音がお風呂場全体に響いた。

 薄紫色のバスタオルで体を覆っており、ずり落ちにくくするためか、バスタオルの上部を外側へと折っている。細長い腕と足、そして普段は見ることがないであろう鎖骨と肩を露出させており、パッと見で分かる程艶やかとしている。抱きしめたくなるほどの儚さと一目見ただけで思考を止めさせてしまうほどの破壊力を持ち、邪念を一切感じさせないのに色気をも兼ね備えている天使のようなルルちゃんが、立っている。


「っ!?」


 ガララッ


「……え……」


 そして顔を赤くしながら扉を閉めた。

 ……え……え、何、何で……!? 嘘……やっぱり嫌だったの? 何で! ねぇ! ルルちゃん!


 ガララッ


「……」


「……え……?」


 かと思えば、またしても扉が開かれた。今度は左手に薄いピンク色のバスタオルを抱えながら。そしてスタスタと歩いてきて、


「ふん!」


 バサッ


「うぇっ!?」


 そのピンク色のバスタオルを僕の股に向けて、思いっきり投げつけた。痛くはないけど、驚きで声を上げてしまった。


「ん……さ……流石に、全裸はまだ早いと思う……」


「……え……?」


 そして僕の隣の椅子に腰かけ、顔を背けながらそう言った。その言葉を聞き、僕は漸く思い出した。


「あ……ごめん……忘れてた……」


「え……わ、忘! 嘘でしょ!?」


「にゃぁ!?」


 バスタオルの位置を調節しながら、僕は呟く。その呟きに反応するように、ルルちゃんの声が浴槽全体に響き渡る。これ以上無いほどの幸福が体全体を駆け巡っていく。

 そうだった。こっちだと普通だけど、向こうだと異性に体を見せるってあんまりしないんだっけ。よく良く考えればルルちゃんも体全体を隠してるじゃん。よく見ろよ僕。


「その、こっちの世界だと異性に体を見せたくない、って人は基本いなかったから」


「……え?」


「あ、他人に見られたくないって人はいるけど。異性だから隠す、って人はいなかったから……」


「え待って」


 こっちの人達って皆、好きな人ならまだしも、異性の体ってだけじゃ興味持たないんだよね。よく良く考えれば、これって決定的かつ分かりやすい違いかもね。

 と、ルルちゃんが僕の方に左手だけを向け、静止を要求してきた。


「まさかこの世界って……え、混浴とか当たり前なの……?」


「え? あ、うん。ホテルとかだと銭湯と室内風呂で分かれてるけど、銭湯は基本的には混浴になるね」


 そしてそんな疑問を口にした。

 そっか確かに。向こうだと混浴って概念自体が殆ど無かったっけ。それ考えると、召喚者がこっちに移り住むのはキツイかもね多分……更衣室も基本男女共用だし。


「ひゃぁっ!?」


 と唐突に、ルルちゃんが無言で僕の肩をガシッ、と掴んできた。顔を近づけ、問いただすかのような勢いで。


「ま、ま、まさか! 私以外の女の裸を見てる、って事!」


「ひぇ……え!?」


 そして僕の目を見つめ、そう聞いてきた。

 え何その質問!? ちょ、近、近い! 待っ、やぁぁっ……!?


「ひゃ……にゃ、僕は基本的には一人で入りたいから銭湯には行ってないから!」


「本当!? 本当なの! 信じるからね!」


「何でそんな、ちょ、どうしたの!」


 そんな僕の言葉を聞いて、取り乱しながらもゆっくりと僕から離れていった。

 よ……良かった、でいいよね? 多分。


「っ……ごめん……と、取り乱した……」


「え……いや……別に、嬉しかったけど……」


「え嬉しい?」


 ルルちゃんのあの突っ込んでくる表情。あんまり見た事が無かったし、何より僕にあんなに力強く触れてくれたし。嬉しい以外の言葉が出るわけないじゃん。


「えと……とりあえず、体洗お?」


「……ん……分かった」


 兎にも角にも。僕は目の前の鏡へと目を向けながらそう言う。実際にはルルちゃんの体を見すぎて頭が変になりそうだから目を外しただけなんだけども。

 将来のお嫁さんになる人の裸をきちんと見て慣れないといけないのに……やばい……無理だ……首元を見るだけで目を逸らしてしまう……本当にどうしよう……


「……えと……」


「ん?」


 すると、椅子に座ったルルちゃんが、僕の方をチラリと見ながら口をもごもごさせている。その姿に、僕は見蕩れてしまう。


「か、レンの髪の毛、私が洗っても良い?」


「……へ?」


「……」


「カミュッ!?」


 そして僕の後ろに回り、僕の長い髪の毛に右手を差し入れ、優しく掴んだ。

 ひっ! ル、ルルちゃんが、僕の髪! 髪! ゃぁああっ!?


「ん……」


「ひゃい! にゃ、えと、お、お願いします……」


「ん……し、失礼します」


 せ……折角、ルルちゃんが素晴らしい提案をしてくれたんだから。無下になんてしてはいけない!

 ルルちゃんは僕の後ろからシャワーを手に取る。一瞬だけ、僕の真横をルルちゃんの体が通り抜ける。

 ルルちゃんが僕の髪の毛に触ってくれる……どうしよう、緊張する。何もしなくても良いはずなのに、心臓がバクバクする。


「ちょ、し、尻尾が凄いことにってる」


「え! あ、ご、ごめん!」


 ルルちゃんに言われ、僕は鏡越しで尻尾が勢い良く揺れてルルちゃんをぶっ叩いているのに気が付き、僕は慌てて尻尾を仕舞う。


「……尻尾も洗ってあげようか?」


「え……あ、いや、だ、大丈夫! 尻尾は汚れないから」


「……よ、汚れない……?」


「うん……その、何故か」


 ルルちゃんが魅力的な提案をしてくれる。が、そんな事をされたら僕も体が多分持たないだろうと思い、僕は断った。

 でも実際、尻尾は汚れが付かないんだよね……特殊なコーティングでもされてるのかな? 他の部位と違って感覚も凄く鈍いし、意外と有り得そう。鈍い癖にルルちゃんにだけは過敏に反応するのって何でなんだろうか。


「……狡い」


「尻尾に嫉妬?」


 小さく呟き、シャワーから水を出す。そして温度をチェックするかのように、自分の手に当てている。

 そして数秒後、僕の頭から暖かい水を流してゆく。髪の毛を持ち上げながら、全体に馴染ませるように。


「そういえば……向こうにいた時も伸ばしてたよね」


「ん……そ、うだね……一年ぐらいしか伸ばしてなかったけども」


 髪の毛を持ち、僕の首のうなじの部分に水を当てながら、ルルちゃんがそう会話を切り出す。


「それってあれ? 私が髪の毛が長い方が好みって言ったのが原因?」


「え? いや、その……ん……その、えと……」


「……」


「……はい……そうです……」


 シャワーを止め、シャンプーを手にし、両手で泡立てているルルちゃんを鏡越しに捉えながら、僕は小さく答えた。もう婚約者だし、別に今更だし、と思い、正直に。


「……何かごめん……」


「……え……何……んぁ」


 謎の謝罪の直後、シャンプーと共に、ルルちゃんの指が僕の頭を刺激した。僕はその冷たくも暖かい、柔らかな感触に思わず小さな声が出てしまった。


「ひゃ……んゅ……きゃ……」


「……」


「……ん……ゃ……いぁ……」


「ちょっと静かにしてくれないかな?」


 ルルちゃんが僕の頭皮をなぞる度に、僕は変な声と共に全身がぶるりと震えてしまう。そんな僕に、やりにくいと感じたのか、ルルちゃんが淡々と注意した。


「ひにゃ……ご、ごめん……」


「ん……」


 僕は両手で口を押さえ、変な声が出ないようにする。

 でも今のルルちゃんの言い方……凄く良かったな……もう一回変な声出せば聞けるかな……あ、いや、そんな馬鹿なこと考えちゃダメだ!

 その後、ルルちゃんが髪の毛を洗ってくれている間、謎の感覚に耐えながら、黙って事が過ぎるのをじっと待った。


「……っ!? ん! んぁっ……ひゃんっ!……ん……ぁぁんっ……」


「……」


 ひぇ……ルルちゃんが、ルルちゃんが、耳、耳! 耳触って! ひ、ぁ、が、我慢しないと! 声、声押さえないと! ぁっ……












「ん。終わったよ」


「ん……はぁ……はぁ……んぁ……」


 目を瞑りながら全身を刺激する頭の感覚に耐え続けて数分。不意にルルちゃんの声が響いた。僕は息を乱しながら両手を口から遠ざけ、前を向く。

 鏡を見ると、長い髪をヘアゴムでお団子にしている僕の姿と、両手を広げているルルちゃんの姿があった。


「あ……ありがとう……」


「んふ」


 僕のお礼の言葉を聞いた後、自分の椅子に戻り髪の毛をかきあげた。ずっとみてられると思えるほどの美しい光景だ。


「ふぅ……ん」


 そして一瞬躊躇った後、ゆっくりとバスタオルに手をかけた。


「ひゃ……ちょ、っと待ってて」


「え……な、何……?」


 その光景を見た瞬間、僕は勢いよく止める。

 あ……危なっ。今ルルちゃん、僕に恐ろしい試練を与えようとしてたよね!?

 僕はルルちゃんの後ろに立ち、両手を前に突きだす。そして、


 ズオオッ

 ズオッ


 鏡をルルちゃんの左右と後ろ、計三つ、囲むように創り出し、長方形の個室を作った。


「ど……どう?」


「あ……あ、りがと……」


 そして壁越しに聞く。

 良かった……ルルちゃんはまだ僕に見せるのを躊躇ってる雰囲気があったから……良かった……


 パサッ

 パサッ


 椅子に座り、一段落していた時、鏡の上に薄紫色のバスタオルがかけられた。今この向こうでは、ルルちゃんが裸になっているということが嫌でも想像してしまう。


 キュッ

 シャー


 そしてシャワーの音が響く。今この向こうでは、ルルちゃんの体に水滴が付いて、より艶っぽい肌になっているということが嫌でも想像してしまう。

 やばいやばいやばい。見えないはずなのに、見ちゃいけないものなのに、想像しちゃう……! あぁ……ああぁっ!

 僕はそんな邪念に満ちた考えを頭から吹き飛ばすように、頭から思いっきり冷水を浴びた。


 キュッ

 シャー


「冷たっ」

まさかの二話連続入浴シーン。自分でもこんなに入浴シーンが長くなるとは思わなかったです。もっとイチャコラしやがれ。

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