1.48 嫌われ者は居場所をなくしてしまいました
頭こんがらがってきた。自分でもちょっと情報多すぎて整理したいなとか思ってるけど面倒だからいいや何でもないごめんなさい。
「その……第一校舎が大爆発を起こして、保健室から西側の昇降口……丁度半分程が……」
僕とハヤタさんは、そのスケールの大きな報告に一瞬固まってしまった。
「あ……ひ、被害は!?」
「幸いにも、爆発による怪我人はゼロです」
「良かった……」
「き……奇跡、ですね……」
が、瞬時に立ち直ったハヤタさん。第一声で被害の確認をした。
流石ハヤタさん……と、校舎が半壊して被害が無いって凄いな……
「でもその、爆発を起こした犯人が……」
「……はい?」
が、更に何かが起こったのか、サリム君が少し言葉を濁しながら話を続けた。僕もハヤタさんも、次の言葉を静かに待つ。
「別世界の人間を求めてやって来た……って言ってまして……」
「……は……?」
そして次に伝えられたその言葉もまた、想像の遥か上を行く内容だった。
別世界の……? え……待って、それってつまり……
「え、う、嘘……え……!?」
「本当です!」
「う……そ……そんな……!」
「楽観的には居られないねこれ……」
あのハヤタさんでさえ、真剣な表情と声色をしている。
まさか、僕達を狙って起こした、って事なのかな……ぇ……だとしたら、僕達のせいで校舎が……
「あ、で、でも犯人は既に無力化しています!」
「え……あ……」
「ですので、被害はもう出ません!」
が、またしても予想外の言葉が綴られた。
無力化……なら安心かな……いや、安心ちゃうよ。校舎ぶっ壊れてんだよ。どうしよ、本当にどうしよ。
「そ、それは良かった」
「でも……その……」
「……?」
僕が安堵の声……まぁふりだけど……をした直後、またしてもサリム君が小さな声を出した。
え何……まだ何かあるの? 怖いんだけど。ハヤタさんが全くふざけないとか恐ろしく恐ろしい場面なんだけど。
「交戦した、トヨ、という名前の……自称別世界から来たという人と共に、犯人の行方が分からなく……」
「っ!? トヨ!?」
「嘘っ!?」
「んっ!?」
が、次に聞こえてきたその名前は、全く聞き覚えが無い人物だった……が、ハヤタさんとマユカさんが稀にすら見ないほどの驚きの声を上げていた。それに対し、僕は驚きの声を上げた。マユカさんはベッドに両手を置き、前のめりになっている。
嘘、僕は知らない人だけど、この人がこんなに動揺する人なの!? 誰なの!?
「っ……分かった。トヨ……の、事は僕達も探しておくよ」
「え……?」
「それは……ありがたいのですが……」
「ん?」
が、またしても尻込みをするサリム君。
ねぇちょっと、やめてよ……すごい怖くなるんだけど。あのハヤタさんが身構えちゃうんだよ? 才能だよ。今度やり方教えて欲しいよ。
「……さっきカルソラに頼んでましたよね? 自分達の出席の状況について」
「あ。うん、そうそう。どうだったの?」
が、今度は僕でも瞬時に理解できる内容だった。心の中で安堵の息を吐いた。
「……そっちにいる四人全員……放校処分と、なっていました」
「……」
「……」
「……は……?」
が、スマホから放たれたその一言に、僕もハヤタさんも再び一瞬固まってしまった。
「はぁっ!?」
「えぇっ!?」
そして絶叫。理解ができず、ただ大きな声を出すことしか出来なかった。ルルちゃんもマユカさんもびっくりしてる。ごめん。
何でそんな……!? だって、ぇ……まさか、僕達のこと……!
「何を……何か、皆さん、いけない事でもしたんですか……?」
「あぁもう! はっきり聞きなさいよ!」
「っ!」
「っ!?」
今にも泣き出してしまいそうな程の掠れ声を出していたスマホから、もう一つ、新しい声が聞こえてきた。
カルソラちゃんだ。
サリム君とは違い、怒気を含んだ声色をしている。
「貴方たち……あのトヨとかいう男と同じで、別世界から来たのよね?」
「……」
「……」
そして、聞いてきた。
サリム君とは違い、遠回しにせず、躊躇もせず、真っ直ぐそう聞いてきた。
「うん」
「え……!?」
「ちょ、ハヤタさん!?」
そしてハヤタさんは短く答えた。
「……最っ低!」
ガゴッ
「え、あちょ! カル……」
ツッツッツッ
その答えを聞き、驚くサリム君を置き去りに、カルソラさんが勢いよく通話を切った。気がついた時には、スマホからは機械音が規則的に流れていた。
「……な……何で……」
「時間の問題だよ。どっちにしろ……二人とも、僕達の正体に関してはほぼ確信してたみたいだし」
「……」
僕から目を逸らし、少し申し訳なさそうにしながらハヤタさんはそう言った。
確かに、サリム君の震えた声の質問も、カルソラさんのあの勢いのある質問も、確信があるからこそ、かもしれない……
「もう……下手に誤魔化しても意味ないって思った」
「……そう……ですか……」
「……多分、召喚者の案内っていう話に乗った時点で、僕達は詰んでたって事だね」
「……」
ハヤタさんの言いたい事は分かったし、理解もできる……じゃあこの沸き上がる感情は何だろう……今の僕、悲しいのかな? 悔しいのかな?
気がつくと、ルルちゃんが僕の頭を撫でてくれていた。気持ち良い……
「ん……お二人とトヨさんは、どういった関係なんですか?」
「んっと……未来の義兄さん、かしら?」
「あ、だね。うん」
「未来……?」
僕の質問に、マユカさんもハヤタさんも隠さずそう答えた。
未来のお兄さん……あ、なるほど。つまり今はハヤタさんのお兄ちゃんって事……だよね? いや、何でそんなに言い方をするの? ほらドバイさんがちょっと引いてるじゃん。
「その……ごめん……」
「え?」
「いや、別に謝ることじゃないって。寧ろ嬉しいよ僕は。苦しめちゃったしさ……」
「……え?」
何故か急にマユカさんがハヤタさんに謝った。
なんの謝罪……? 苦しめちゃった……? 話の流れから、多分トヨお兄さんのことだよね……? さっきのマユカさんのハヤタさん離れもそうだけど……一体向こうの世界で何があったんだろう……
「あ、あの……」
「あ、いや、大丈夫。本当に大丈夫だから」
「……」
僕が何か話そうとしても、ハヤタさんは察知してすぐに話を切り上げようとする。
何だろう。ちょっと嫌かもこれ。
僕はハヤタさんを睨みながら、ため息をする。
「何が大丈夫何ですか」
「……」
「……王城と魔王の元から帰ってきたら、僕も探しますよ」
「……え……?」
「ほら。僕はアンスロ何ですから。人探しは得意な分野ですので」
そしてハヤタさんをじっと見つめ、そう訴える。ハヤタさんは目を見開き……実際は前髪で隠れてるから雰囲気でだけど……見つめ返している。が軈て、
「……あはは……」
「ん」
「……うん……お願い……お願いします」
「別に、そんな頭を下げるほどの事じゃないと思いますが……」
頭を下げ、別人かと疑うほど震えた声を出しながらそう懇願した。
よっぽど大切な人……いや、お兄さん何だけども……あのハヤタさんがこんな風になるって事は、凄く大好きな人何だろうな。なら、僕も頑張って見つけないと。
あれ、何か探すのがメインになっちゃってる。まぁいいや。
「話は終わったかしら?」
ドバイさんがリモコンを持って待機していた。
テレビ見る気満々じゃん。マユカさんが入室した時の画面で止まってるし、続きを見る気満々じゃん。
「無神経が過ぎると思うよ?」
「知らないわよ」
「……いや、むしろこれが当たり前の反応なのでは……?」
すぐ隣で真剣な話をしているのに、楽観的なドバイさんを見てながら、ハヤタさんが呟いた。
よく良く考えれば、この人達にとってはシンプルにどうでもいい相手の話なんだろうな。どうでもいい、どころかさっさと終われとか思ってそうだし。
「それよりハヤタ君!」
「ん?」
「こういう時ぐらいは電話の電源オフっておいてよもう!」
「どしたの急に?」
するとマユカさんは無言で僕とルルちゃんの方を見た。釣られるように視線を移したハヤタさんは、僕達を見て……正確には僕達の繋がれた手を見て、
「あ……ごめん」
謝った。冗談交じりとかではなく、頭を下げて本気で謝っている。
「本当……先輩とはいえ罵倒したかったです」
「え、ルルちゃん?」
「僕が全面的に悪かったとはいえ、恩人に対する口調では無い気がするね」
「全く。折角レン君とルルちゃんがエッチな事する展開になると思ったのに」
「え、マユカさん?」
「気持ちは分かるけど隣で知らずに寝てる僕のことも考えてよ」
二人がハヤタさんの方を睨みながらそう続ける。いつもよりも低い声で、本気で怒っている事が分かる。
え、何、ハヤタさんってルルちゃんに罵倒されてたかもしれないの? それはちょっと狡くない? というかエッチな事する展開って何?
「何も無いなら、コレ見るけど良いかしら?」
そんな僕らを後目に、ドバイさんはテレビをつけながらそう僕達に問いかけてきた。
興味持たないとかそういうレベルじゃないよねこれ。何か悲しいんだけども。
寝ているハヤタさんの横でレン君とルルちゃんがエッチなことしてて、それを扉越しにマユカさんとドバイさんが聞いてる。想像しただけでかなりシュールな光景だな。




