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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
50/107

1.47 因みにこの時の熱弁は本人にガッツリ聞かれていました。やったね

やったね。

 十五時三十五分頃。


「おぉ!」


 コンコンッ


「んんっ!?」


「ん?」


 テレビに夢中になっていた僕とドバイさんの耳に、玄関からノックの音が響いた。

 この部屋に用がある人……思い当たる人はいる……いるけど……

 僕は扉へと近づき、無言で扉を開けた。


 ガチャ


「あ、どうも」


「……」


 扉の奥には思い当たる人、マユカさんがいた。

 え、どうしよう、まだハヤタさんはぐっすり寝ているんだよね……どうしよう……?


「あれ……」


「あ……えと、すみま……あ、その、ハヤタさんは寝てます」


「お……おおぅ……」


 ベッドの上で横になり、小さな寝息を放つハヤタさんの方を見て、マユカさんは若干驚いている。

 まぁそうなるよね。あのハヤタさんが、マユカさんが来てることに気が付かないほど深い眠りに着いているんだもん。


「まぁ、ハヤタさんはいつも頑張ってましたし……寧ろ疲れているのは嬉しいことです」


 体力が無限にあったら、それはそれで怖いし。やっぱりハヤタさんも人間なんだな、って再確認出来て良かったよ。


「あはは……いや……ハヤタ君は一度寝たらなかなか起きないだけだからね」


 マユカさんは微笑みながら僕を見つめていたが、やがてハヤタさんの方へと目を向けた。


 スッスッ


 そして静かにハヤタさんの側まで歩いていく。ベッドの上にゆっくりと乗り上げ、仰向けになっめいるあハヤタさんの寝顔を覗き込むながらゆっくりと座った。暫く無言で見つめていたが、軈て背中を曲げてゆっくりと顔を近づけ、


「……ん……」


「っ!?」


「っ!?」


 ハヤタさんの唇を、自分の唇で優しく触れた。低い態勢故か、まるで二人の唇を隠すかのように髪の毛が垂れている。丸見えだけども。


「……」


 そしてゆっくりと顔を離した。

 かと思えば、


「……」


「っ!?」


 またしてもゆっくりと顔を近づけ、再び唇で覆った。今度はさっきよりも少し長い。


「ん……!? あれ……あれ、貴方達の世界だと、ふ、普通、普通なの!?」


「いえ……あの二人が特殊なだけかと……」


 動揺するドバイさんが、小声で僕に聞く。

 無理もないよね。何の躊躇もなくキスしたんだもん。憧れるよあんなのに。

 やがてハヤタさんから顔を離したマユカさんは、横目で僕達を見た。


「私ね……自分からキスする事ってほぼないの」


「……ええぇ!?」


 そして衝撃な一言を放った。

 え……嘘だよね? あのマユカさんが? いや、おかしいおかしい! 絶対ありえないでしょ!


「キスしようと目線を合わせた瞬間、ハヤタ君がしてくるから……」


「え……あ……あ、そういう……」


「……何、惚気話なの?」


 それなら納得する。あのハヤタさんの貪欲さと身体能力ならやりかねない。やっぱり凄いなこの人。

 ハヤタさんの方を見つめ、再関心していた僕を後目に、ドバイさんが冷たい目でマユカさんを見つめた。


「だからこうやって、ハヤタ君が寝てる時にいつもしてるのよ」


「うわぁ……」


「うわぁはやめて」


 言葉通り、ドバイさんが引いた。

 自分はしたことがないから分からないけれども……好きな人とはやっぱりたくさんしたいものなのかな。


「……どう? レン君もキスする?」


「しませんよ」


「残念」


 まるで差し出すかのように、ハヤタさんに向けて両手を広げながらそう言う。

 残念、じゃないわ。何で寝ているハヤタさんにキスしないといけないんだよ。


「やっぱりルルちゃん以外の子とはしたくないのね」


「いや、そういう訳では……最初の相手ぐらいは自分で決めたいってだけですよ……」


「でもそれもルルちゃんでしょ?」


「……まぁ……そう、ですけども……」


 言わせないでよ恥ずかしい。初めての相手ぐらいは好きな人が良いなんて当たり前の思考をして何が悪い。だからそんなニヤニヤしながら見てこないでよ。ドバイさんもニヤニヤしないでよ。


「……ルルさん……って、あの子の事ね……」


 すると唐突に、ドバイさんは美しい響きのその名前を呟いた。


「正直、あの子の何が良いのか……私には全く分からないわ」


「あ?」


「怖い怖い」


 何だこの人? は? 何巫山戯たこと言ってるの? あ、そりゃそうか。この人はルルちゃんの事をよく知らないんだから。


「良いです。ならお教えしましょう」


「ん?」


「な、何をかしら?」


「ルルちゃんの魅力についてですよ」


「え? えちょ、待って?」


 僕はドバイさんの方を向き、一つ息を吐いてから、口を開く。


「まずはルルちゃんの行動パターンの素敵さについて語りますね。ルルちゃんは授業がちょっと苦手なんですよ。だからいつも授業中にうつらうつらしてしまうんです。頑張って起きようとするんですけども、たまにガクッ、としてからの黒板を見つめる、っていうのを繰り返すんですが、それがもう、本当に最高なんですよ! 後、テスト前! テスト前は何時も僕の方を見て、分からないところを教えて、って聞いてくれるんですけど。あ、一応席が前後だっていう前提ですよ? その時の、何て言うんでしょうか、ちょっと控えめな感じ? ちょっとだけ恥ずかしいという気持ちが出てるんですよ! でも分からないから聞かなくちゃ、っていう決意が現れてる目とかもうっ! もうですよ本当に! で、ルルちゃんの休み時間! 休み時間はスマホを弄るか本を読んでるか僕とお話してくれるかのどれかが殆――


「やぁっ!」


「へぐぁっ!?」


 ルルちゃんの魅力を語ってあげてるというのに、ドバイさんが何故か唐突に、僕の左膝を掴み、朽木倒しをしてきた。

 いきなりの出来事に、僕は勢いよくベッドへと倒されてしまった。


「ちょ、いきなり何するんですか!」


「いきなりじゃないよ。何度も止めてたよ」


「凄い……この子周りが全然見えてなかったわ……」


「……んぐぅ……」


 二人が呆れた顔をして言ってくる。

 えぇ……全然聞こえなかったんだけど……嘘ついてない?


「までも、よ。そんなにその子のことが好きなら、さっさと告れば良いと思うわよ」


「……そんな勇気があるなら、とっくにしてましたよ」


「寧ろ何故勇気が出てこないのかしら?」


「……そう簡単に言わないでくださいよ」


 一世一代の告白なんだから……いや、交際だけなら、交際だけで見れば、一回二回程度では無いという人もいるかもしれないけども……普通はそんな簡単にできる訳じゃないんだから。


「……人にはバカだ何だって言ったくせに、自分は逃げるのね……」


「……うっ……」


 が、マユカさんが痛い一言を僕にぶつけてきた。


「いや……でも……ど、どんな風に告白すれば良いかも分かりませんし……」


「好きです付き合って下さい、で良いんじゃないの?」


「そうよ。難しく考えすぎ」


 難しくと言われても……そんな簡素な告白で、本当にルルちゃんに響くのかな……最悪、友達から変な関係になっちゃうかもしれないし……


「ほら。分かったら行きなさい」


「……え?」


「ルルちゃんの所よ! このままじゃ、いつまで経っても告白しないじゃない!」


「えぇっ!?」


 そして玄関を指差し、


「ほら。行け。告れ。付き合え。結婚しろ」


「そ、そんな、他人事だと思っ――


 コンコン


「んひっ!?」


 楽観的なマユカさんに抗議をしようとした瞬間、玄関から小さな音が響いてきた。堪らず声が出てしまった。

 え、何、誰? マユカさん以外に来る人は居ないはずだから……何か問題事でも起こったの!?

 マユカさんが駆け足で玄関まで近づき、扉を開けた。扉の奥には、


「……ども」


「ひぇっ!?」


 小さなお辞儀をしているルルちゃんがいた。


「ぇ! ル、ど、どうしたの!?」


「……あ、遊びに来た……よ?」


 そして僕の質問に対し、首を少し傾げながら答える。そしてスタスタと部屋の中へと入ってきた。

 え、えぇ!? ちょ、何、何で今!?


「あ、じゃあ私は失礼するね」


「私もそうさせてもらうわ」


「はい?」


 と唐突に、マユカさんとドバイさんが早歩きで玄関の奥へと消えていった。あまりに突然の事だったので、僕は反応が遅れてしまう。


「え、あまっ、ちょっと!」


「……」


「あ……えと……」


 そして騒がしい二人がいなくなり、部屋の中に静寂が訪れた。

 あの二人この……態とだ絶対……何でそんなことするんだよ酷い……いいよもう……だったら僕も頑張ってやるよこんちくしょうっ!


「んああっもう!」


「おぉう!?」


 僕はルルちゃんの方を見る。そして今のルルちゃんを目に焼きつける。

 トップスは茶色で、手首の部分が少し広がりヒラヒラとしている。ボトムスは薄い緑色のロングスカートで、細長く伸びて脚全体を覆っている。

 髪の毛は整えたからか一本一本が真っ直ぐ伸びていて前髪は眉毛を少しだけ隠しており、目立ち過ぎず控えめに輝くまつ毛と小さな目は僕を見つめ、薄い赤色をしている唇は閉じられ、白過ぎないが透き通っている柔らかそうな肌が僕を魅了する。何処を見ても美しすぎるその姿に、僕は思わず視線を床へと向けてしまう。


「……お……」


「お?」


「お……お話が、ご、ございますで、あります」


「おぉ」


 そして言葉を出す。覚悟は決めたはずだが、出てきた言葉は身震いをしていた。まだ何を言うかを決めていないのに、全身の血液が勢いよく巡回している。

 んぐっ……直視が出来ない……ルルちゃんが可愛い……呼吸がまともに出来ない……ルルちゃんが美しすぎる……


「ん……」


「……」


「ぼ、僕は!」


「ん」


 そしてなるべく直視しないようにしながら、僕は言葉を繋げる。今の僕は凄く緊張しているのが分かる。冷静になっていなくても簡単に分かってしまうほどに。

 そうだ……落ち着かないと、落ち着いて、ちゃんと自分の気持ちを伝えないと……! まずは深呼吸を……!


「すぅ……ふぅ……僕は、ずっと前、から……ルルちゃん……の、事が……」


「……ん」


「ルルちゃんの事が……す……好き……でした!」


「……に……」


 そして、長い間隠していたその気持ちを、僕は思いっきり吐き出した。が、少し怖くなって、僕は目をぎゅっと瞑る。


「一つ一つの仕草が魅力的で、反応一つ一つが美しくて、後話し方とかも凄く素敵で!」


「んん?」


「後、会話のタネをたくさん持ってるから一緒にいるだけで楽しくて、後真剣になってる時の表情とかもかっこよくて!」


「ちょ、レン君? レン君?」


「気が付いたら、恋に落ちていました! だから僕と、結婚してください!」


 そして目を瞑ったまま、勢いよくそう叫んだ。止まってしまったら、また怖気付いてしまうからと思ったから。まだまだ言い足りないけど、ルルちゃんの好きな所を少しでも多く言いたかったけど、でもちゃんと伝えたい事を……


「……」


「……」


「……ん?」


 ちょっと待って、今僕何て言った? ルルちゃんに好きって言って、好きな所を言って、僕と結婚してくださいって言って。

 結婚してください?

 結婚してください!?


「……」


「あ……あ、いや……! その、ま……」


 僕は両手を前に出し、間違いを訂正しようと試みた。

 ま、待って待って、ダメ待って! 違う、まだ結婚じゃない! まだちゃんと交際してないのに結婚とか、ちょっと待っ!

 とか思いながら、頭がおかしくなっていたその時、


「ひゃい!?」


 僕の左手に柔らかくて冷たい何かが触れた。ふと前を見ると、ルルちゃんが無言のまま右手で僕の左手を掴んでいた。

 え、何……? 何で、手……? ど、どうし――


「……」


「……ぇ……?」


 僕の左手首に、柔らかくて熱い感覚が伝わった。


「……」


「ん……んぇ?」


 一瞬何が起こったのか分からなかった。


「ん! ん!?」


 そして数秒後に、漸く脳が完全に理解した。膝立ちをしながら僕の右手を少し引き寄せ、そのまま手首の裏にキスをしている。


「……ん……」


「んぇ……ぇ……?」


 が、気が付いた時にはもう遅かった。未だ僕の右手を掴んだままだが、既にルルちゃんは僕から手から視線を離し、僕の目を見つめていた。

 ぇ……何で今、キス……唇で触れ……


「ル……」


「ん……こ……こんな、私で良ければ……」


「……ぇ……」


 そして立ち上がり、僕と目線を合わせる。


「是非……その……お、お嫁さんにして下さい」


「んっ!?」


 そして、僕の目を見ながら小さくそう返した後、
















「……ん……」


 今度は僕の唇目掛けてキスをしてきた。


「ん……!?」


 ルルちゃんの右手は僕の左手を指一本一本に絡みつけるようにぎゅっと掴み、左手は僕の背中に添えられている。


「ん……!……んんっ……」


 ん……にゃ……なにコレ……鼻をスっと抜けていく心地の良い匂いに混じる感じた事がない柔らかくて力強い感触と、唇しか触れ合ってないのに体全体の力が抜けて……


「……ん……」


 僕はルルちゃんの返事に対する喜びを感じる前に、今のこの全身を流れる不思議な感覚を存分に感じる事にした。ルルちゃんの肩に右手を置き、全てを委ねるようにゆっくりと全身の力を抜いた。


「……ん……」


「……ん……」


 ルルちゃんとキス……ルルちゃんとキス……ルルちゃんとキス……ルルちゃんとキス……ルルちゃんとキス……ルルちゃん――


「私はレンの婚約者」


「んぁっ……」


 そして一旦唇を離したかと思えば、


「にぇっ!?」


 僕のアンスロの方の耳を左手で掴み、


「私も、大好きだよ」


「みゃぁっ!?」


 微笑みながら、耳元でそう呟いた。僕は堪らず座り込んでしまった。

 好きって……! ルルちゃんが僕に……一番言われたい言葉を……ひゃぁ……


「ねぇ」


 そしてルルちゃんが再び僕に何か言おうとしたその時、


 ピシャシャシャシャ


「んにゃあっ!?」


「っ!?」


 謎の機械音が、部屋中に響いた。

 ひょっ! ちょ、ちょ、な、何今の音!?

 僕は立ち上がり音の根源……眠っているハヤタさんの方へと目を向けた。


「ん……んぅ……」


「……」


「おぉ……んぉ……」


 ハヤタさんはその機械音で目を覚まし、ゆっくりと体を起こしていた。顔を上げて首を動かしていた後、右手を前に出し、虚空からスマホを取り出した。

 未だ響くその音は、スマホから出ていたようだ。ずっと鳴っている所を見るに、多分電話だろう。

 ルルちゃんはハヤタさんの方を見ながら僕から一歩だけ離れた。が、右手を僕の左手に重ね……てる!? え、手、繋いでるの今僕ひゃぁっ!?


「あやべ、切っちゃった……」


「……」


 何してんのこの人。


「リダイヤルリダイヤル……」


「……」


「と……ん……もしもし」


 そして再度電話をかけ直し、少し気だるそうな声で電話に出た。

 ……というか……今、僕って寝ているハヤタさんの目の前で告白したんだよね……? あれ待って、聞かれてないよね!? 聞かれてないよね!


「それはごめんって……ん、ちょっと休んでただけだよ……ん、いるよ? あ、待ってて」


 するとハヤタさんはスマホをタッチし、そのままベッドの上に置いた。そして僕の方を見て、無言で手招きした。

 スマホの奥に誰がいるのかは分からないけど、話し方からして親しい関係の人かな。家族とか、生徒会の誰かとか。それと、いるけど、って言ってたから僕の事を言ってたのかな……? って事はカルソラちゃんかサリム君かな?


 ガチャ


 そして何故か玄関が開き、マユカさんとドバイさんも部屋に入ってきた。


「どしたの?」


「え……いや、急に電話が来たようで……」


「で……え、このタイミングで?」


 そして僕に近づき、質問をした。

 残念ながら僕にも分からない。急にハヤタさんの電話が鳴ったんだもん。え待って、もしかしてずっと覗いてたの……?


「ん。スピーカーにしたから大丈夫だよ」


「あ、本当ですか? あ、サリムです」


 そして機械的な声がスマホから響いてきた。予想通り、サリム君だった。


「あ、えと……な、何かあったの?」


「あ……は、はい! その……優等高校の校舎が、半壊しました……!」


「……え?」


「……ん?」


 が、焦ったように返ってきたその内容は、思っていたものとはスケールが全く違うものだった。

書類とか手続きとか、そういうのは全く無いただの口約束ですけども、レンくん君とルルちゃんが婚姻関係になりました。興奮しますね。

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