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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
48/108

1.45 偉い人には逆らえないからこその悲劇……なのか……?

頭では分かってても説明するのは大変です。

「一人足りない、と言えば、レンのとこのグループも一人足りなかったです」


「ん……」


 先程のフルキさんと同じように待っていたのか、ミチルちゃんがそう言いながら僕達の間に入ってきた。


「それは多分、ソウヘイさんかな。ならとりあえずは良いかな……」


「冷静だね。一応一人減ってるのに」


「まぁ、普通はそうかもしれませんが……」


 僕の反応が鈍かったからか、ハヤタさんは地図をしまいながらそう言った。

 というかハヤタさんも冷静じゃん。一応元クラスメイトなのに。でもあの人……


「でも……そもそもソウヘイさんは、僕達とは違う世界の人らしいので」


「……と、言うと?」


「……えっと……」


 僕は右手で頭を掻きながらハヤタさんの方を見る。これはドウルさんからみたから分かった事実。みなけりゃ分からなかった事実。


「僕達が転記だったので……逆転記……的な感じですかね?」


「なるほど……元々こっちの住人だった、という事ですね」


「あ、いえ……それも違います」


「え?」


 が、僕はフルキさんの言葉に首を振った。

 いや、確かに僕達とは違う場所出身なんだけど……


「あの人も、召喚を経て初めてこっちの世界に来た……らしいので」


「……ん?」


「えっと確か……神が沢山いる場所で生まれた、とも言ってたらしいです」


「は?」


 そして続けて放った僕の言葉に、ハヤタさんは間の抜けた声で返した。


「え何、僕達、今神と対峙してるの?」


「お、俺、俺生き残れる自信が無いんですけど……」


 そして二人ともたじろぐ。

 確かに、あの人が神様なら想像しただけで恐ろしい事だけども……

 僕は二人の顔を交互に見る。


「……神ではない、とも言ってたみたいです」


「……え?」


「……ど……え、どういう事……?」


「すみません……その、ドウルさんもそれ以上は詮索しなかったらしいので……」


 続く僕の言葉に、二人とも頭の処理が追いついていないのか、言葉に詰まりまくる。

 というか、何でこんな不思議な事言ってるのに詮索しなかったんだよこの人。気になるじゃん。


「……ま、まぁとにかく。俺達と出身地は同じだからありえない……っていう前提が崩れた、ということですね」


「……そ、そういうこと」


 僕の説明である程度は納得出来たのか、ハヤタさんは目を瞑りウンウンと頷いている。フルキさんも同じように小さく呟きながら頷く。

 もしソウヘイさんがこっちの世界出身なら、中庭擬きから吹き抜けの天井まで行くのは苦ではないだろうし、実際、僕も頑張って壁伝いに跳べばいける……とは思ってたけど……ちょっと雲行きが怪しくなったかも……


「て……てんき……って何かな……?」


「え……あ、えと……」


「大雑把に転生と転移が混じった感じ、という認識で大丈夫」


「え、あ、ありがとうございます」


 話に着いていけてなかったのか、僕の真後ろにいたルルちゃんが動揺しながら聞いてきた。が、すかさずハヤタさんがその疑問に答えた。

 その反射神経には憧れるけど、ルルちゃんにお礼を言われるとかこの人狡すぎる。いや、でも……転生と転記は似てるようで違うみたいな事を女神さんから聞いたし……転移と混じってるし大雑把なら大丈夫なのかな?


「まぁとにかく。だからこそ、どんな事もできる人、という見方に変更出来ました」


 レイトは想像力が大事。その原理さえ分かってしまえば……限度はあれど……色々なことが出来る。

 というか、みて得た情報ばっかりだなこれ……何かいけないことをしてる気分……


「そしてソウヘイさんは、自分の姿を変えることが出来る、という仮説も浮かんできました」


「わぁお」


「どうやって変えてるかちょっと気になるのです」


「まぁ、まだ仮説……予測の範疇ではあるけどね」


 実際、一番辻褄が合う仮説でもあり、僕たちにとって都合のいい仮説でもある。正直、本人に確認しない限りは何とも言えないかな……


「だからこそ、ハヤタさんを装ってセルント王を襲い、罪をなすり付けることが出来た、というのが僕の考えになりますね」


「いやぁ……そんなもん分かるわけないじゃん。推理小説でやったら炎上もんだよ」


「袋叩き待ったナシですね」


「まぁ、騎士が騙されてもおかしくはなさそうですね……炎上? 袋叩き?」


 実際に偽物を見たわけではないけど……ハヤタさんに詳しい人ならまだしも、よく知らない人が見たら、本人だと勘違いしてしまうのだろう。

 というか炎上? 袋叩き? 何が燃えるの? 誰を集中砲火するの? 推理小説の作者?


「って事は……俺が帰った直後にセルント王は襲われたのか……」


「……え……? あ、だから一緒に……」


 小さな呟きが聞こえてきた。ふとその声のした方に目を向けると、フルキさんが下を向いてボソボソと何かを言っていた。

 帰った直後……って事は、あの時騎士はハヤタさんだけじゃなくてフルキさんも目撃していたのか。だからフルキさんも捕まってたのか……


「何で……」


「んみゅ?」


「何で! ドウルさんは、セルント王を襲った男を庇ったのですか!」


「はきゃっ!?」


 と唐突に、今まで黙っていた騎士が、ドウルさんに向けて、怒鳴るようにそんな疑問を投げかけた。


「そもそも作戦だったから、渋々とか?」


「別世界の人を排除する為なら、やりそうですよね」


「何ならセルント王自体も、望んで散ったとかありそうじゃない?」


「ちょ、ちょっと黙っててです」


 僕達転記者組が各々意見を言う。のを、うるさいと感じたのだろうか、ミチルちゃんが冷たい声と共に止めて来た。

 確かにちょっと間に入りずらい空気感だったけども……でも実際そうじゃないの? 


「貴女方は昔から仲が良かったと……喧嘩一つしない、そんな関係だったと……」


 尻込みをするように、徐々に声が小さくなり、やがて静寂が訪れた。この空気の中、皆誰もが声を出さずにことを見守ろうとしている。

 そんな静寂の中、やがてドウルさんが顔を上げ、騎士や召喚士達の顔色を伺うようにぐるりと見回し、そしてため息をする。その光景に、周囲で待機していた方々が、少し不快そうな顔をした。


「皆さんは、側近がどうやって選ばれるか……知っていますか?」


「え?」


「いえ。知りませんね。試験でもするのですか?」


 小さく破られた沈黙と唐突に投げかけられたその質問に、フルキさんが冷静にそう返した。


「はい。正しく」


「……ごめん……」


「どういう謝罪ですかそれ」


 フルキさんの中では当てた、ではなく当ててしまった、らしい。そんなフルキさんを、表情を一切変えずにドウルさんが見つめている。

 投げてきたから答えただけなのに……別に謝らなくてもいいじゃん。何でハヤタさんはフルキさんの肩に手を置いてるの? 何で宥めるように摩ってるの?


「と……レンさんは、ドバイを見て違和感だなと思いませんでしたか?」


「え僕ですか!?」


 と、唐突に僕の方にそんな質問が飛んできた。唐突はやはりびっくりする。


「あ……えと、空間スキルが達者だな、と」


 あんなに空間スキルの扱いが上手……というか、普通にプロも凌駕してるであろうドバイさんが、何で側近なんかやってんだろう、って思ったけども……いや、側近「なんか」は変だけども。


「それもそのはずですよ」


「え……」


「ドバイは……いえ、ドセルもそうですが、あの二人は側近になる気は無かったんです」


「……え!?」


 僕の発言に対し頷いた後、衝撃発言をした。僕だけでなく、騎士や……一々言うの面倒だな。纏めよ……仕人達も驚いており、目を見開く人や、口を手で覆っている人もいる。


「セルントが……私達を半ば無理矢理側近に指名して……」


「あ……」


「なるほどね」


 怒りの籠った目をしながら、僕の方を見つめる。

 試験をしないで側近になる……裏口入学みたいな事なのかな……? 望まぬ裏口入学……確かに嫌だ。側近になりたくないなら尚更。


「そして、二人とは違い私は側近になるために努力をしてきました」


「あ、そうなの? じゃあ複雑な気分だったの?」


「……周りに狡をしたと言われる生活を強いられる事になったので、最悪な気分でしたね」


「っ!」


 俯きながら、今までの日々を振り返るかのように吐き出す。その声は、萎むような、なのに怒気を含んでいるようにも感じる。

 そっか……そりゃそうだ。周りからすれば試験を行わずに不合格と言われたようなものなのだから。白い目で見られてもおかしくはないのか。


「私だけでなく、ドバイも、ドセルも! 二人も苦しむことになって……」


「それだけで……何も……そんな……」


「喧嘩一つしない、と仰いましたよね?」


「……え?」


 ドウルさんは仕人達の方を向き、半笑いをする。まるで嘲笑うように、小馬鹿にするように。


「当たり前ですよ! 王子相手にそんなこと……! 考えれば分かる事じゃないですか!」


「っ……」


「セルントの事は好きでも嫌いでもありませんでした……でも……それも幼馴染補正があった故のギリギリの好感度ですよ」


「……」


 今までどれだけ苦労したのか、僕には分からない……分かることといえば、セルント王を殺める動機としては十分すぎる事。

 僕はこの人達に何を言えばいいのか分からず、その場で立ち尽くす。いや、何も言ってはいけない。否定も同情も、逆効果なのだから。


「本当なの……?」


「……そうよ……本当……」


「っ!?」


 ハヤタさんがドバイさんに近づき短く聞く。隠す様子もなく、ドバイさんも短く答える。またしても仕人達からざわめきの声が響く。


「私もドセルも、ドウルのおかげで離れられると思ったのよね……」


「……ぇ……」


 とそこで、黙ってこちらを見つめていただけのドバイさんが入ってきた。こちらは未だルルちゃんの縄で縛られているので、うつ向けで寝転がっている。


「ドウルさんのおかげ……?」


「あ……ドウルさんが側近を目指していた理由って!」


 と、そこで何かに気がついたのか、フルキさんがドウルさんへと勢いよく振り向いた。それに釣られるように、僕もドウルさんの方へと目を向ける。


「……私一人が生贄になればと思っていました……まさか全員選ばれるとは……」


「……」


 段々と声が小さくなり、顔も少しずつ俯いていく。

 高々側近……いや、幼馴染みという立場的には何も出来ない……そう考えると側近の三人にとってはまたとないチャンスに……ソウヘイさんのことが救世主に見えたのだろう。


「これから私達は何をすればいいんですかね」


「まぁ、この国の長を手にかけたんだからね。牢獄にドーンは確実よ」


「まぁ、それはそうですよね」


 ドウルさんはハヤタさんの方を見て、そう聞く。予想通りの返答だったからか、若干目を逸らしながら、静かに答える。その姿を見てから、ハヤタさんはシェフらしき人に目を向けた。


「ねぇ、お昼ご飯は……この聞き方図々しいな……まことに恐縮なのですが……」


「ありますよ! 何ですか急に、気持ち悪いです」


「気持ち悪いは言い過ぎじゃないかな?」


 時間が時間だからだろう、ハヤタさんがお昼の所在を聞いてくれた。

 そういえば訓練中は召喚士達がお昼を運んできてくれてたっけ。


「んじゃ、とりあえずは昼食だね」


 お昼は美味しいから楽しみでもある。後どうでもいいけど僕達は何処に座ろうか。地べた?


「その後は……訓練の続きでもする?」


「ん……やっぱり今日中に王城は無しなのです?」


「うん。流石に今からアポ無しはきついと思うよ」


「ですぅ……」


 ミチルちゃんの質問に対し、ハヤタさんは人差し指を立てながら答える。

 というか……素直に僕達の話を聞いてくれるのかな……?


「ドウルさん」


「はい」


「王城とは連絡とってる?」


「……いえ。そんな手段はありませんね」


 そしてハヤタさんはドウルさんへと目を向け、質問をした。それに目を逸らさずドウルさんは答えた。

 連絡手段は無い……っておかしくない? え、じゃあ今セルント王が意識不明ってのを知ってるのってここにいる人だけなの? 走って連絡取るすらしてないってこと?


「どうやって連携をしてるのです……」


「してませんね。何せ、こんな形になるだなんて思いもしませんでしたから」


 用意周到なのに大雑把じゃん。何でそんな堂々と言い切れるのか分からないんだけど。


「ブライベートな連絡先はどうですか?」


「何であると思ってるの?」


「セルントの奥様ぐらいしか……」


「何であるの!? 寧ろ何でそれ以外無いの!?」


 良かった。あるのか。マユカさんが突っかかってきたから不安になったけど……


「……周りは白い目で見てくるんですよ?」


「ごめんなさい」


 そんなマユカさんは、続くドウルさんの言葉を聞き、瞬時に頭を下げた。

 でもそっか……そもそも関わらないようにしてた、って事だよね。交渉に行くのがちょっと不安になってきた……あ、でも逆に言えば。王女様はそういう事って事だよね? なら多少は安心かな。


「なら早速、王女に僕達が交渉したい、という事を伝えて欲しいです」


「……何でしょう、今の貴方には逆らってはいけないというオーラが伝わってきます」


「何故」


「というか逆らう気があったのか」


 酷いなこの人。さっきは圧もクソもないとか言ってたくせに、都合の悪い時にそんなことを言うなんて。


「私の黒歴史を暴露したこと、一生忘れませんからね!」


「え……あ、えぇ……」


「あの詩……流石に動揺を隠せなかったわ」


「タイトルはダサすぎて笑い転げそうだったのです」


 ドバイさんも目を逸らしながら引いている。

 ……うん……いや、ね。それは僕の忠告を無視したのが悪いんじゃんさ。


「話も纏まったし、早くお昼にしよっか」


「では、私達は食事を持ってきます」


「あ、僕も手伝うよ」


 仕人が次々と外に出ていく中、ハヤタさんがそう言いながら後ろをついて行った。

 手伝いたい気持ちは分かるけど……台車があるから、ついて行く意味はあんまり無いんじゃない……?

漸くお昼ご飯を食べるご様子です。

色々ごちゃごちゃした関係になってます。自分もどっかで忘れそうで怖いな。

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