1.40 意外とまともじゃなかったドウルさん(四十代後半)
ある意味此処からが長いです。半月ぐらい場面動かないです。暫く会話ばかりのシーンって何?
ガチャッ
僕は食堂の扉を開く。少しガヤガヤとしていた食堂だったが、僕が扉を開けた瞬間にピタリと静まり返った。僕は部屋の中を見て、ミチルちゃん達が待機しているのを確認してから、
「戻ったよ」
と、先程まで吐血をしていた人が出さないほどに軽い声を出しながら扉をくぐった。
食堂の右側の扉から入った僕。手前に元クラスメイトの顔、真ん中に美男美女だらけの顔、奥にピンとこない顔、それぞれが座っていた。
「ん……」
全員が座っている中、前方に一人、ミチルちゃんがいた。が、僕たちの姿を確認した後、ミチルちゃんが無言で近づいてきた。
「……はぁ……」
そして左手を胸に添えている僕を見て、溜息をつき、そして少し怒った表情をしながら口を開いた。
「無理だけはするな、って言ったのです!」
「僕は守れそうにないって言った」
そして僕に文句を言ってきた。
酷いイチャモンだな全く。そもそも、あんな状況で無理をするなというのも無理な話でしょ。
「ムン」
そして謎の声を発しながら両頬を膨らませた。
だから、どういう感情で言ってるのそれ? 何? 僕が悪いの?
「それと童女!」
と、今度はルルちゃんの方を見ながら叫んだ。
こう言ったってことは……ルルちゃんの独断での行動だったのかな?
「イェイ」
「イェイ。じゃないのです!」
片手でピースとにっこりスマイルをするルルちゃん。可愛いすぎる。ずっと見てられる。
「っと……ルルちゃん。その三人はそこら辺に転がしておいて」
「おっけー」
「え……雑じゃないかしら?」
先程からずっと後ろにいたルルちゃんに、僕はそう促す。軽く返すその感じもイイ……
ずっと運んでもらってたし、すごい疲れちゃっただろうな……後でなにかお礼をしないと。
「えごっ!」
「しきゃっ!」
「え何でそんなに雑に痛ぁっ!」
そして三人を扉のすぐ横へと放ったルルちゃんは、小走りになって僕の前に来た。
「ありがとね」
「に」
それを確認した僕は、ルルちゃんに小さくお礼を言う。ちょっとドヤ顔になっているのも最高。
とりあえず、最後の……交渉? 脅迫? をしておこうかな……あ、でもその前に……
「えと……帰ってすぐで申し訳ないけど」
僕は振り返り、椅子に座っている召喚者達を見る。
関係がある話かもしれないけど、内容は出来れば分かりやすく纏めてから伝えたいし……今は待ってて欲しいかな……
「その……まぁ……スマートフォンでも弄って待ってて」
「はぁ……自由が過ぎるのです」
「ごめん……その、聞きたいことが沢山あったから」
そんな僕の発言に対し、ミチルちゃんは冷たい目を向けてきた。
しょうがないじゃん。こちとら命を狙われた立場なんだから。情報は少しでも多く、そして早めに手に入れておく方がいいじゃん。
「ね、ねぇ……」
「はい?」
そして視線を戻し三人に再び話しかけようとした時、小さな声でマユカさんに呼び止められた。
「えっと……やっぱり、スマホ使えるの?」
そして少し震えた声で、恐る恐る、といったふうに、そんな疑問を投げかけてきた。
「え? 使えますけども……?」
そんなマユカさんとは対象的に、僕は率直に答えた。
あれ……? 使えるのってそこまで変なことなのかな? 質問の意味は分かったけれど、一体どういう類の質問なんだろう……?
「あ、使えるアプリとかは全然違いますよ。同じやつは多分……無い……ですね」
と、そう補足する。いつの間にか、周囲のざわめきも無くなり、シーンとした空間が広がっていた。全員僕とマユカさんの会話を聞いているようだ。
そして、
「わぁ……薄々感じてたとはいえ、夢がぶっ壊れたんだけど……」
「本当にここ異世界なのかしら」
「……え、何をそんなに驚いて……」
唐突に、召喚者達が一斉に、静かにざわめき出した。
何? え、こっちの世界でスマートフォンが使えるのって変なの!?
「レン君」
「みっ!? にゃ、何かな……?」
そんな困惑している人達を見ながら困惑している僕の耳に、ルルちゃんの澄んだ声が届いた。
「ラノベ内での異世界物は普通、スマホは使えない」
「……ん? ラノ……あ、ライトノベルの事か……え、使えない……?」
そして真顔で言われた。
へ……?……え? 何それ? え、何で!? 何その不便な世界!?
「こういう時、大体は科学よりも魔法が発達している事が多いの」
「へ……へぇ……そうなんだ……」
人差し指を立て、僕の目を真っ直ぐ見ながら説明する。
な……成程……確かに僕が元いた世界だと、魔法とは無縁だったし……どちらか片方だけって考えになってもおかしくはないのか。
「違う環境で生きるのに苦労する、ってのは異世界ものでは定番ね」
「し……知りませんでした……」
静かにしていたマユカさんも、腕を組み、ウンウンと頷きながら一言加える。
この世界に来て、環境が違うから生きづらいなんて思った事無かったな……何かライトノベルに携わってる方々に申し訳ないな……
「……あ、だか……」
と、そこで僕は思い出した。
そういえばハヤタさんって、ドライヤーや冷蔵庫を見て変な反応をしてたな……成程。やっと分かった。
「ま……まぁとにかく。使えるから、スマートフォンで時間を潰してて」
未だ動揺している召喚者達に向けて言う。
大丈夫……だよね? 今はスマホがあれば大抵の事は出来るし。暇つぶしぐらいなら出来るよね?
「……ある?」
「いや、持ってないわ」
「畜生! こんな事なら部屋から持ってくれば良かった!」
……うん。大丈夫じゃなさそう……そっか。そりゃそうだ。使えるって事を知らなかったんだから持ってなくても……というか、空間スキルを扱えない皆ならむしろ持ってきてない人の方が多いか。
「あ、それなら。大丈夫」
「……?」
そんな僕たちのやり取りを聞いていたのか、全身を縛られたままのドバイさんが声を出した。
大丈夫……? 何か皆でできるゲームでもあるのかな? フルーツバスケットぐらいのものじゃないと、多分盛り上がらないと思うよ。
「全員の部屋。あれ、全部私が管理してたから。すぐ取りに行けるわよ」
「……え……?」
そして表情を一切変えず、淡々とした口調で衝撃的な告白をした。
「十部屋ずつぐらいなら直ぐにイケそうだから、ちょっと順番待ちしててね」
「……人が少ないとは思ってましたが、まさか一人でやっていたとは……」
「フフ。もっと褒めても良いのよ?」
そう言ってからドバイさんが体をモゾモゾ動かした。恐らく、部屋の扉を出すためだろう。
専門学校……だけじゃない。卒業後も相当な努力をしてきたんだろうな……考えただけでゾッとするレベルだよ。何で側近をしてるんだろう?
「それじゃ……ドウルさんからでいいや」
「私でいいやってどういう意味でしょうか?」
「え、ちょっと、もっと褒めてよ!?」
そして僕は叫んでいるドバイさんを無視し、隣に転がっているドウルさんに目を向けた。
「ここに来るまでもずっと黙り込んでましたから……これで最後の……忠告、にします」
ミチルちゃんに連れられ、奥へと引き摺られていったドバイさんを後目に、僕はゆっくりと話す。ドウルさんは何も喋らず、こちらをじっと見つめている。
「貴女方の計画の全て、さっさと吐けよ」
少しでも圧力をかけられるように、僕は低い声、そして強い言葉で、ドウルさんに言い放った。多分、ここまで低い声を出したのは初めてかもしれない。
「な……何かレン君らしくないね……」
「流石に、今のレンはちょっと怖いのです……」
後ろからもそんな声が聞こえてくる。
僕らしくないって……今までの僕ってそんなに威厳が無かったの……?
「……はぁ……」
そんなやり取りの中、ドウルさんの口が開かれた。ため息をし、観念したと言うよりも、呆れているといった顔をしながら。
「……」
「その程度で開けるほど、私の口は柔なものではありませんよ」
僕を睨むように、小さくそう言った。
まぁ、ずっと黙ってたのに急に話し始める……なんて方がおかしいか。予想通りといえば予想通りかな。
「正直、今の貴方では……圧もクソもありませんし」
半笑いで言い放った。
……強気だなこの人。自分の立場を理解した上で言ってるのなら、元々僕には威厳が全く無いってことになるのかな……もしそうなら、すごいショックを受けるよ。
「確かにそうね」
「それは言えてるわ」
「同感なのです」
「レン君は童顔」
「……」
前後から共感の声が上がった。
すごいショックを受けた。後で泣こう。いや違う。今はそこを気にしてる場合じゃない。
「……まぁ忠告もしましたし……失礼しますよ」
「……?」
「こっちは命を狙われたんですから」
そう言ってから、僕はドウルさんの目を見つめた。ドウルさんをみるために。
本当はみたくないけど……ここにいる全員の身の安全を考えると、そんなことを言ってる場合じゃないし。
「……」
「……ん? 何がしたいのですか?」
「何してるのです?」
周りの声も気にせず、僕は集中する。ドウルさんの内にある全てを知るために、じっと見つめる。少しだけ気分が悪くなっても、集中力を切らさないようにみ続ける。
そんな静かな空間が数分ほど続き、
「は?」
「……はい……?」
僕はそんな間の抜けた声を出してしまった。
「ど、どうしたの?」
「……」
後ろにいるルルちゃんが心配そうな声を上げる。こんな声が聞けるんなら、もっと大袈裟な反応をすれば良かった……
というか何……? どういうこと?
「……」
いや……これよりも先に伝えるやつがあるよね。
そう思いながら僕は立ち上がり、ドウルさんの後ろに立つ。
「タイトル、のっとせいふたつのわーど」
「……ん?」
「え? どうしたの?」
そして何の前触れも無く、そう言う。
僕はちゃんと言ったからね。苦しむのは貴女だって。だからもう、容赦なく恥ずかしいもんをぶちまけてやる。実際、こんなことする意味は全くないけども。
「どうして言えないのだろう」
「……え、待って……」
「……?」
「言う=楽になれる。分かっている。簡単な計算式のはず」
「あの、ストップ! あの、ちょっと?」
「ぇ……貴女まさか……?」
「でもその楽の意味は? 愛? それとも哀?」
「やめ、ね、お願いですから!」
「フムフム」
「分かっている。今のこれは、ただの時間稼ぎだって。ただの逃避行だって!」
「あぁ! め、おぉ! ちょ、ごぉぉっ!」
「レン君の迫真の演技って久々に見た気がするわね」
「そんな自問自答を繰り返しながら、私は人生という名前のクソゲーをプレイしている」
「のあぁぁぁぁっ!」
「す……凄い……何かよく分からないけど、一方的にボコボコにしてる……」
ドウルさんは全身を縛られている状態だけれども、唯一自由な頭をじたばたとさせて悶えている。それを見て、思わずニヤケてしまう。
何時もは冷静で感情を押し殺している、といった雰囲気の女性だったのに、恐ろしく取り乱してるな。狙い通り。
「えと……今のって……」
「ドウルさんの自作のポエムです」
「え」
そして僕の謎の行動を確認するかのように、マユカさんが質問してきた。
「あ、あんたって子は……」
「何とでも言ってください。ちゃんと忠告はしましたので」
「ひぇ……つ、次、次は私!?」
周囲が少し引いている中、僕は笑顔で答える。
知ったこっちゃない。僕だって苦しむのは貴女です、って言ったもん。そんなああだこうだ言われる筋合いはない。
「何であの人の……だっさいポエム……? 知ってるの?」
「ん……んーと……どう説明すれば……」
「だっさいはキツすぎじゃない?」
とそこへ、ルルちゃんが一歩近づき、そんな疑問を投げつけた。僕は下を向き、どんな言葉を使えばいいのか必死に考える。
心を読む……はちょっと違うから……うーん……
「相手の脳内を覗くことが出来る能力?」
「へぁっ!?」
やがて何とか導き出したその言葉を聞いた瞬間、マユカさんから謎の奇声が飛び出した。するとマユカさんがルルちゃんの肩を掴み、こちらに背中を見せてきた。
ひそひそ話でもする気かな?
「ちょちょ、ね、ねぇ! レン君があんなやべぇもん持ってるなんて、狡くない?」
「狡い」
「よね!」
「……は?」
アンスロで耳がいい僕には丸聞こえだ。
いや、狡いって何?
「そのべぇやつ、何でさっさと使わなかったのです?」
「あ……ん……それもどう説明しよう……」
と、今度はミチルちゃんが近づいて疑問をぶつけてきた。
まぁ、それもご最もな意見だよね。えっと……ありのまま伝えるなら……
「知りたい情報だけじゃなくて……相手の全部をみなくちゃいけないんだよね……」
「……というと?」
ですよね。分かりづらいよね。説明って難しいな……何で語彙に特化した授業って無いんだろう。えっと……もっと簡単に言うと……
「産まれてから今に至るまでの全部をみることになる……ってことかな……?」
「全部です……?」
「あ、でも覗くだけで、僕の方にその全部を写す事はしないから」
「……ん……?」
「あ、えっと……どう言えばいいかな……?」
頑張った。結構頑張ったよ僕は。でもあんまりピンと来てないか……何か別の言い方をすれば……うーん……いい例え……分かりやすく伝えるには……
「あ、クローゼット」
「クローゼットです?」
と、ふいに丁度良い例えを思いつき、つい大きな声が出てしまった。
「そ。クローゼットがドウルさんの脳、入っている衣服がドウルさんの記憶、取り出した服が欲しい情報、って感じで」
「あ……何となく分かった気がするのです」
よし! 何とか伝わった!
ちゃんと伝わったのか、ミチルちゃんはうんうんと頷いている。後ろにいるルルちゃんとマユカさんもスッキリした顔をしている。
「後でみえなくなるおはいえ、覗きみた時点で全部の情報がなだれ込んでくるから、あんまり使いたいとは思わなかったの」
「理解なのです」
「本当に?」
「舐めるなよ、なのです」
凄い低い声かつドヤ顔で言ってきた。
まぁ、この子も一応優等高校の生徒だからね。本当に理解はできてるのかもね。
「んで、こっから重要……セルント王の部屋。あそこ、大きな玉座があったよね?」
「え……うん」
僕は顔をドウルさんの方に戻し、ドウルさんからみたものについて説明をする。
何を企んでいるのかを知りたかった……筈なのに……
「あれ退かしたらさ、隠し扉みたいなのが出てくるみたい」
「……え?」
「で……その奥に、ハヤタさんとフルキさんがいるみたい」
「……は?」
「……は?」
そして僕の言葉を聞き、ミチルちゃんとマユカさんの二人が目を見開きながら低い声を出した。
まさかこの建物内にいるとは考えてなかった……少なくても、ハヤタさんは外に連れてかれてると思ってたから……何処かに隠し通路でもあるのかな……?
「え……いや、なん、何で……」
「二人は連行されたはずなのです……」
「それに関しては分からなかったけど……」
マユカさんとミチルちゃんが分かりやすく動揺している。
僕自身も恐ろしく動揺したからね。ドウルさんのポエムを先に曝け出しておいてよかった。かなり落ち着いたから。
「とにかくさ、ドウルさんを連れて二人を探してきてくれない?」
「……分かったのです」
僕のおねがいに対し、小さく息を吐き、半ば呆れた表情をしながらそう返した。
……少し意地の悪い言い方だったかな……? 何かフルキさんを利用した感がちょっとある……あ、それと。
「と、マユカさんも一緒に行ってください」
「え、わ、私?」
ハヤタさん関連だし、マユカさんも行ってほしいかな。
僕はミチルちゃんの後ろにいるマユカさんの方を見て言う。突然の事だったからか、それとも別の理由か、酷く動揺している。
「で……でも、私は……」
「……」
ハヤタさんに関わることだから、瞬時に食いつくと思った……のに、酷く歯切れが悪い。というより、行きたくないという空気を纏っている。
「ハヤタさんがいなくなったのに全く暴れなかったことには違和感でしたけども……」
が、そんなマユカさんを無視し、僕はマユカさんに近づく。
何となく、いつもと違うなとは思っていたけれども……勘違いでも何でもなく、多分本当に何かを隠してるのかな。
まぁ、でも。
「そんなん知ったこっちゃない、というやつです。行ってください」
「いや……」
僕はマユカさんの目の前に来て、その大きな瞳を覗き込むようにそう言い放つ。
客観的に見れば、僕の行動はあまりよろしくないものなのだろうけど……そんなことを言っている場合じゃないよね。
「……まぁ僕だって、これは単なるお節介っていうのは分かってますけど」
「……その……」
「……?」
するとマユカさんは、視線を下に向けたままだが、小さな声を発した。すぐに、僕に何かを伝えようとしているのが分かった。
「……私、ハヤタ君に酷い事しちゃったから……」
「酷い……?」
「ハヤタ君が没したのも、その、私のせいだし……」
そしてぽつりぽつりと、少し声を震わせながらそう話した。
……マユカさんのせいで……? えと……え、あれ、でも確かクラスメイトの撲殺だって……
「怖くて、ハヤタ君は、会いたくない……んじゃ、って思うと……その……」
目に涙を貯め、少し嗚咽をしながら話を続ける。
何をしたのかは分からないけど……この感じだと、ちょっとやそっとの事ではなさそう……まぁ、没した事と関係があるから、そりゃそうだろうけども……でも……何か、ね。
「ちょっと失礼しますよ」
「ぇ……?」
そんなことを言いながら、戸惑うマユカさんを見る。そして両手をマユカさんの両頬に伸ばす。
どうでもいいけど背が高いな。いつもはハヤタさんの隣にいたから気づかなかったけど……ちっ。
バチンッ
「っつ!?」
そして両手で思いっきり、マユカさんの両頬を挟んだ。態と音が鳴るほど力を込めて。
「……バカなんですか?」
「っ!?」
「ちょ、ド直球過ぎるのです!」
睨むように、そして低い声で言う。
マユカさんの言いたいことも分かったし、今の気持ちも何となくだけど分かった。けど正直……今のマユカさんはあんまり好きじゃないな。
「貴女は、誰よりもハヤタさんの事が大っ好き、何ですよね?」
「っ」
「なら、分かってくださいよ!」
この人なら気づいていると、そう思っていたのに……まるでハヤタさんのことをちゃんと見ていないみたいな言い方で……少し、イラッとしてしまった。
「ハヤタさんはマユカさんのことを見て、嫌な顔でもしてましたか?」
「ぁ……いや……れも……」
それでも尚、行こうという決心がつかないのだろうか。ずっとモゴモゴしている。
「良いですか? 臆病と警戒心が強い。この二つは、イコールでは繋がりません」
「……」
「自分の勝手で臆病な妄想で、後退なんてしないでください」
「……」
「そんなの僕は……いや……ハヤタさんやケイコさんだって望みませんよ!」
「っ!?」
強く言い放ち、僕はマユカさんの頬からゆっくりと手を離す。マユカさんからは目を逸らさずに。
「……」
「……」
「行く……わ、私も……」
やがて小さく口を開き、そう決意した。
……良かった……よね? お節介がすぎるとは思うけども。まぁ僕みたいに、本人確認を怠るって事はしないでほしかったし……
「後、これは完全に蛇足ですが」
「……?」
と、マユカさんがミチルちゃんの元へと歩き始めた瞬間、僕は呼び止めるかのように付け加える。
「マユカさんが何をしたかは、僕は知りません。でも……あのハヤタさんのことですよ」
そこで一度区切り、こちらをじっと見つめているマユカさんの目を見る。
「……多分、全部知ってたと思いますよ」
「っぁ……うん……」
僕の言葉に、また一瞬声を詰まらせたが、今度は涙を見せなかった。
というかむしろ……知らないわけがないって思うんだよね。と、そうだ。
「と、ミチルちゃん」
「ん?」
僕はミチルちゃんに近づき、灰色で丸く、そして赤いボタンと灰色のボタンがついている道具を空間から取り出す。
授業で作って、授業で使う。までは良かったんだけど、それ以降使う場面が全く無かったから、ずっと虚空の奥で眠ってたんだよねこれ。
「何ですコレ?」
「技補具。聞いた事はあるよね?」
「です。で、これがどうしたのです?」
確かにそう思うよね。少なくても
僕は技補具の側面……丸いから側面で良いかは分からないけど……に着いている灰色のボタン二つを同時に押す。
カチ
カチャ
すると小さな音を立て、技補具が真っ二つになる。僕は上の部分を掴み取り、そのまま下の部分をミチルちゃんに見せる。
上の部分って言っても、蓋みたいなものだから、中身のほとんどは下半分にくっついたままだけども。
「ん……おおぉ!」
「これ、中に罪詰みが入ってるから」
「ほぇぇ……初耳なのです」
「まぁ、これは二年で習うことだからね」
カチャ
そして金具で固定されていた罪詰みを取り出し、ミチルちゃんにそのまま差し出す。
「っと。これをドウルさんに」
「了解なのです」
罪詰みを受け取ったミチルちゃんは、ドウルさんに近づき、縛りつけたままで両手にカチャリとかけた。それを確認し、僕はルルちゃんの方を見る。
シュル
が、僕がお願いをする前に、ルルちゃんはドウルさんへと伸ばしていた縄を解いた。咄嗟に判断してくれたの凄い。流石。
「それじゃ行ってくるです」
「い……行ってきます……」
そして元気よく手を振るミチルちゃんと沈んだ表情で小さく手を振るマユカさん。そんな対象的な二人が、罪詰みをつけたドウルさんを引き摺りながら部屋から出て行った。
遠慮はしない性格なのです。だってレン君にとっての世界は彼女が彼女以外かなんだもん。偏ってんな。
因みに「みる」ためには数分眺めないといけないので戦闘中に使う事は基本無いです。もう一度言います。「基本無いです」
因みにその二。安心してください。ハヤタさんは全部知ってます。
因みにその三。ポエムは小学生からずっと作成してるらしいです。パネェ量が頭の中に入ってます。
というか契約してないのに使えるのかなスマホ?




