1.4 妖精の存在価値とは一体……
レン君は可愛いです。はい。
前書きや後書きで、書きたいことは無いけど何か書きたい時、何を書けばいいか分からねぇです……何言ってんだ自分。
その後もいろいろな話を聞きながら歩いて行くと、扉の無い部屋にたどり着いた。扉が無いので、少しだけ中の様子を覗ける。少ししか見えないから全く分からないけど。
話をしながら歩いていたからか、あっという間に感じたな。
女神さんが部屋に入って行く。僕も後を追った。
中に入ると三百六十度見渡す限り、小さな何かが光りながら飛び交っている。
なんだここ? ホタルの溜まり場かな?
「ここは妖精の巣だよ」
「妖精?」
僕はその光ってる何かに近づく。
「あっ」
近づいて分かった。小人に羽が生えたような生物だ。
生物であってるかな?
僕が近づいたのに気づくと小さく手を振ってくれた。僕も手を振り返す。
「この子達はみんな不思議な力を持ってるの。そのうちの一人だけ、その力をレン君に授けるよ」
「授けるってことはつまり……良いんですか勝手に? 彼ら自身の力なのに」
「今の所、彼らはそのためだけに生まれた生物、って言われてるからね……」
妖精たちは楽しいのかなそんな人生。
とその時、一匹の妖精が女神さんに近づいた。
「あ、どうしたのかな? うん……うん……」
コソコソ話をするように僕に背中を向けており、話の内容が全く分からない。
何故背中を向けたの……?
「分っかりました!」
「おぉう! ど、どうしたんですか?」
いきなり大きな声を出す女神さん。
ビクッてなるでしょうがビクッて……
「この子がレン君に力を授けたいって!」
「えっ?」
「こんにちは、えっと、レンさん? よろしくお願いします!」
「ん? え? あ、うん……よ、よろしく……?」
すると女神さんに耳打ちをしていた妖精が僕に近づいてきて挨拶をした。声からして女性かな?
……もしかして妖精ってあれなのかな?「ビビっときたからこいつに行くぜ!」的なタイプの子なのかな?
「えっと、良いの? 僕で?」
「イエッサーですよ! レンさん!」
「え……あ、うん……うん?」
良いってこと、だよね? なんでこんなテンション高い人がたくさん要るんだろうここ。偶然なのかな?
「……えっとそしたら何をすれば――
「あ、レン君はじっとしててね」
「しててください」
何だろう? 何するんだろう?
すると妖精が僕の胸めがけて突進してきた。
え、ちょ、いきなり何を!?
「にぇっ!?」
しかし、僕の体に当たった瞬間、そのままゆっくりと、無音で僕の体に吸い込まれていく。
「えっ? な、何ですか! 何してるんですか!?」
「大丈夫落ち着いて」
そうは言われても、流石にこの状況で冷静にいるのは難しいよ!
そして妖精が僕の体に完全に入っていった……
「え、あ、あの、これ大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。おめでとう。レン君はたった今、力を授かったんだよ」
え……こんなんでいいの? 呆気ないというか……妖精が中に入ったのに体は正常だし……
「さてそれじゃ次は――
「ま、待ってください! 僕はどんな力を授かったんですか?」
「さあ? お楽しみってやつかな?」
……だから何で教えてくれないの? あ、この人のことだから、素で忘れてるってことも――
「じゃあこっち来て、ここの台座に座って」
女神さんは部屋の真ん中にある台座を指差しながら言った。なんか開花した花みたいな形をしてる。
「こう、ですか?」
「うん。オッケー」
僕は言われた通りに座った。
どうしよう、正座しようかな。
「それじゃあ最後に。レン君。君は一つだけ何かを持っていけます。何を持っていきたいですか?」
「ルルちゃん」
急にそんなことを言い出す女神さん。
何を言ってるんだこの人は。
「即答だね」
「考える余地もありませんよ」
「本当に未練タラタラだね」
当たり前の答えだよね。むしろそれ以外の答えが思い……いや、いっその事リンとナナもお願いしようかな……
「でも流石に人は無理かな……」
……はあっ!? え……なっ!?
「な、何でですか!? 何でも良いって言ったじゃないですか! 裏切るんですか!?」
「何でもは言ってないよ……よく考えてよ。ルルちゃんを連れてくるってことは、ルルちゃんを一度殺らないといけないんだよ」
「あ……確かに」
魂を連れてくるなら一度落命しなくちゃいけない。確かにそれは嫌だな……
「流石の神でも、そこまでの干渉は危ないからね」
「そう、ですか……」
ううぅ……最後であろう、ルルちゃんチャンスが……
「露骨にがっかりしてる。本当になんで自殺したんだろうこの子……」
……というかそもそも、自殺すれば「自分」が何もかもを消えてなくなるって思ってたんだけどね。
「何も考えずに済むって、そう思って自殺したんですけども……」
「残念」
「……」
消してよだったら。せめて僕を無にしてから連れていってよ。どうせやってくれないと思うけど。
「……そうだ。もしルルちゃんが落命したら、キューブの世界に連れていけるようにするよ」
「へ……!? ほんと! 本当ですか!?」
が、そんな落胆する僕を見てか、女神さんはそんな素敵な提案をしてくれた。
「寿命死以外なら、今のレン――
「ありがとうございます! ありがとうございます! ありがとうございます! あ――
「わあぁぁっ! ストップ! うん! わかったから! 落ち着いて!」
「あぁ! 早く落命してくれないかなぁ!」
「気持ちは分かるけど物騒!」
そして女神さんの言葉に、僕は正気に戻った。
はっ! と、取り乱しちゃった。
「約束ですよ! 約束ですからね!」
「分かってるから。ウェイトウェイト」
「あ、いや、でも……好きでもない人から呼び出されるのって、迷惑じゃないんですかね……?」
「さっきまでの元気はどうしたの? ったく、そんな変な心配しなくても大丈夫よ。多分」
「多分……たぶん……タブン……メイビー……」
「はぁ……」
多分……それは、確信がないけれど一応言っておきたい時によく使う言葉。いわば保険。こういう時は大抵――
「とぉりぃあぁえぇずぅ!」
「ひょわぁ!」
唐突に、大きな声で女神さんが言った。
「むぅぅぅ……」
「はぁ……向こうの世界に行っても、まぁ、なんとかなるはずだから、頑張ってね」
「ちょっと無責任が過ぎると思うんですが」
「大丈夫。たとえ赤ん坊になっても、赤ん坊になった以外は基本的には変わらないから。記憶とか会話とか」
赤ん坊なのに喋れるのっておかしくない? 体の機能も赤ちゃんまで戻されると思ったんだけども。
「あ、そうだった。最後に一つ。自分が転記された人だってことは、周りには絶対に言わないでね」
「へっ? 何でですか?」
「いいから、ね、お願いね」
うーん……まぁ、何かしらの理由はあるのかな。
僕はそれ以上追求しようとは思わなかった。どうせ聞いても答えてくれないか忘れてるかしてそうだし。
「それじゃ、目を瞑って……ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ……フウゥワッ! ピャァ!」
待って、そんな変な感じで行くの!? 本当に大丈夫!?
そんな不安を抱えながら、僕は意識は手放していった。
あ! 走りながら「ピューーーーン」って音を出す方法を聞くの忘れてた!
「……」
「コユキ? おいコユキ」
「あ、ヘレス君か」
「あ、じゃねぇよ。んな漫画みてぇに気づかないことあるか普通。というか良かったのか? 何も教えなくて」
「良いも何も、レン君に話すことじゃないと思うよ」
「そうか? 俺は話した方が良かったんじゃないかって思ったけど?」
「……」
「現に今も、ずっとレン君のいた場所見つめてたしさ。未練タラタラって感じじゃん。レン君のこと言えないじゃん」
「それは、その……」
「言うか言わないかは本人の自由。それを深く追求するのは良くないんじゃないかな?」
「なんだよ。お前もそんなこと言うのかよ」
「確かにさ、コユキちゃんとレン君のお父さんが幼馴染ってことは、レン君にとっては驚きの事実ってやつかもしれないよ」
「ならさ……」
「でもさ、本人が言いたくないなら、それが一番。でしょ?」
「まぁ、そうだけどよ……」
「コユキちゃんも、言いたくないから言わなかった。でしょ?」
「……うん……」
「じゃあもういいじゃん。終わったことなんだし。ほら、行くよ。まだやる事は残ってるんだから」
「分かった……」
「はぁ。ったく……」
「それとコユキ。後でクルーミーハグ一時間コースな」
「へっ? 何で?」
「何でじゃないよ。さっきレン君とハグってたでしょ。あんな長い時間。嫉妬に狂うに決まってるでしょ」
「あ……えっとそれは……えへ」
「……」
「……」
「無言は怖いなぁ……」
「あ、そういえばレン君がここに連れてこられた理由を忘れたって言ってたよね?」
「え? あっ! いや、それは……」
「よし。グルーミーハグに説教追加な」
「あ、あはは。えっと、分割払い型説教でお願いできませんかね?」
「無理だ」
「覚悟していてよね」
「なぁぁぁんでぇぇぇぇ!?」
「いや、さらっと流してるけど、ヘレス君も爆裂説教があるの忘れてないかな?」
「へっ? あ、いや、それは……」
「こうなったらヘレス君! 一緒にヨーテ君を説得――
「それは無理」
「諦めて」
この神界案内三人衆。次に出るのは何時になるのかな……下手したら二度と出ないかもしれませんね。
次回から更新が牛になります。再びご了承の方をどうぞよろしくお願いします。<(_ _)>