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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
39/107

1.38.2 VS一撃が重いくせに素早くて尚且つ見えない攻撃をしてくる女性

この展開、ちょっと無理あるんじゃね? って思ってます。ツッチーこの世にいないくせに何でツッチーの職業はまだ有効中なんだよって。

「ぁ……ぁぁああ!」


「ひっ!」


「はぁ……はぁ……」


 アキレス腱を撃ち抜かれただけ……だというのに、今までに無いほどの悶える声が、女性の口から放たれた。

 レンは息を整えながら左手を胸に当てる。またしても左手が青色に輝く。


「気づいてなかった、と……はぁ……思いますが……」


 そして途切れ途切れな息のまま、ゆっくりと、数十m離れている女性に、胸を抑えながら足を動かした。先程までは吐血をし、息も絶え絶えになるほどの重傷を負っていたはずなのに、しっかりとした足取りをしている。


「貴方のアキレス腱に……はぁ……「弱点」、の……はぁ……文字がありましたよ」


 そして、未だ痛みで転げ回っている女性を、見下ろすように言い放った。


「っぁ、ぁあっ! つぁ!」


「魔法使いは……漢字を叫ぶイコール詠唱……はぁ……だから多分……ツッチーが残してくれた魔法ですね」


(だったらせめて、弱点だけでも! 弱点さえ、どうにかできれば!)


「だから僕は……確認と見やすさの二つの意味で……貴方のスカートを短くしました」


「はぁ……んぐっ……はぁ……」


「あ、そうだったんだ」


 痛みが治まったのか、女性は四つん這いになり、息を整えながらレンを睨むように見つめた。


「普通に考えて、蹴りを封じるとかいう、変な理由、なわけないじゃないですか」


「まぁ……それもそうね……」


「それと、察してくれてありがとうございます。やっぱり尊敬します!」


「いや、でもすんごい緊張したわ……」


 マユカの方を見て、無邪気な瞳で感謝を伝える。キラキラという音が聞こえてきそうだ。

 というかもう息が乱れていない。腹を抑えているとはいえ、回復早いな。


「はぁ……ん……っ……」


「っと。僕は……貴女と違って優しくないので……」


 すると徐に、自分の足元にいる女性の左腕を右手で掴み、


「貴女のように、休ませる気はありませんけどもっ!」


「っ!」


 ブンッ


 そのまま振り回すように、女性と共にぐるりと回り、


「ぅらあっ!」


 ブォン


「テヤァッ!?」


 女性を大きく投げ飛ばした。およそ人が人を、それも片手で投げたとは思えないほど、軽々と。しかもまだ腹抑えてるし。

 そして間髪入れず右手を横に伸ばし、


 ズォッ


 右の掌から大量の鏡を出した。一つ一つが大きく、真後ろにある大きな扉とほぼ同じ大きさをしている鏡を十八個、一列に横に並ぶように創り出した。

 そして右手を振りかぶり、


「っらぁ!」


 ブォッ


「……ぇ?」


 空中で体勢が崩れている女性目がけて、一つずつ、タイミングをずらして飛ばした。


「だぁっ!」


 ビュンッ


「なっ!?」


 上手く着地できるようにと、ゆっくりと体勢を直していた時、ふと目に入った異様な光景を見て、女性は驚きの声を上げる。


「ふにゃ!」


 ブアッ


「っ!」


 が、すぐに真剣な顔に戻り、そのままの体勢で右手を素早く薙ぎ払った。


 ビュッ


 すると、飛んでいた鏡が一つ、払い落とされるように、あらぬ方向へと進路を変えた。


「んきっ!」


 ズヒャッ


 直後、今度は左手を払う。またしても一つ、鏡があらぬ方向へと飛んだ。


「くっ!」


 カシュッ


 小さな声を出しながら、右手を、左手を、交互に振り回し、鏡を払い落としていく。

 が、やがて、


 ゴッ


「っが!」


 捌ききれなかったのか、鏡が右腕に当たった。堪らず攻撃の手を止めてしまった。


 ズゴッ


「ぎっ!」


 ガゴッ


「つぁ!」


 鏡を弾き飛ばす手段が無くなったその一瞬のうちに、鏡が女性の身体に次々と衝突する。

 そして、


 ドサッ


「っ!」


 女性は受身をまともにとれず、背中から床に強く打ち付けた。


「痛ったぁ!」


 顔を歪めながら、体をゆっくりと起こし、顔を上げた。


「ぅらぁっ!」


「っ!? んぐっ!?」


 瞬間、女性の目の前にまで、レンが迫っていた。右手を後ろにやり、左手で未だ腹を抑えながら、既に振り抜く寸前だ、というように。

 がしかし、


 ブンッ


「ぇ……?」


 レンの拳は女性には当たらず、女性の目の前で空を切った。


 ドサッ


「んがっ!」


 そして勢い余ったのか、そのまま転倒してしまった。


「っ」


 咄嗟のことで、一瞬呆然としていた女性だったが、すかさず馬乗りになる。そしてレンの両腕を掴んだ。


「貴方……掌からしか、鏡は出せないのよね?」


「っぁ!」


「こうすれば反抗はできない、と」


「んぐっ!」


 そしてレンの両手を合わせ、そのまま動かないようにと自分の手で拘束する。

 流石にやばいと思ったのだろう。拘束から逃れようと、焦る様子で、全身をじたばたと動かそうとするレンだったが、


「っが! ぁああ!」


 唐突に、大きな声で、まるで痛みに悶えるように叫んだ。声だけが響いており、体は動かない。


「……左手で、痛みを抑えてたのね」


「っぎぁ! ふぅ、んぁっ、はぁ……はぁ……げほっ!」


 ピチャッ


 叫び声が少しずつ小さくなった、かと思えば、口から血を吐いた。そしてもう力が入らないのか、微動だにしない。

 

 トスッ


「……ひんっ!……ぇ……?」


 その時、優雅に、そして軽やかに、左手と右膝を床につきながら、小さな音だけを出し、真上から誰かが降りてきた。

 真上……ということは、あの吹き抜けている所から、あの恐ろしいほどの高所から降りてきたのだろうか……?


「どうも」


「っ!?」


 そしてレンは、未だ片膝をつき、目線だけを向けてくるドウルの姿を見て、固まった。両腕が鳥の羽のようになっているドウルを見て。


「ありがとね。お陰様で乗馬出来たわ」


「いえいえ」


 ドウルは立ち上がり、両腕を人の腕に戻してから両手を前で組んでから、短く返す。


「フェザー……だったんですね……!」


「……えぇ。まぁ」


「何っ……何を、したんですか!?」


「……」


 女性とドウルのやり取りから、ドウルがレンに対して何かをしたのは明白。だが、何をしたのか分からない。

 レンは思っていたことを、率直に、ドウルに叫ぶように聞く。ドウルはチラリとレンの方に目を向ける。


「レンさんの脳内を少々弄らせていただきました」


「……は……?」


 レンの問に対し、自分の頭につけた黒いカチューシャを指しながら、さも当然のような言い方でドウルは返した。

 もちろん、その程度の説明では分かるはずがなく、レンは小さな声で呟く。


「レンさんの前頭前野の働きのみを、他よりも早くした、ということです」


「……は……?」


「そうですね……」


 レンの反応を見て、ドウルは詳しく説明した。が、それでもやはり反応は著しくない。

 実際、自分もよく分からない。


「これを使えば、実際は五mしか走ってないのに、五十m走ったのと同等の疲労を感じさせることが出来る……ということです」


「……何となく分かりました。螺旋階段を上った時、僕とハヤタさんが何で疲れたのかを」


「流石レンさん……と言った所でしょうか」


 レンは少し語気を強めながら言う。ドウルはようやく伝わった事に、少し安堵の息を漏らした。

 自分は未だによく分かってないや。


「では、私はあの人を捕らえてきますね」


「っ!」


 そして二人を一瞥し、ゆっくりマユカの方へと歩き出した。

 マユカは体を震わせながら、腕を女性の方へと向けていた。撃とうとしたのだろうか。


「あら、何から何まで。有難いわね」


「っぁ……」


「マ、マユカさんっ!」


 マユカは腕をドウルの方へと向け、そして小さな叫び声を出して、後退りをする。

 そんなマユカとは対称的に、ドウルに焦った様子は全く無い。現地人故の余裕、なのだろうか。別世界の住人を捕まえるのなんて訳ない、と思っているのだろう。


「まぁまぁ。今は痛くはしないつもりなので、ご安心下さい」


「ひっ……」


 小さな子を宥めるように、優しい声色でマユカに話しかける。

 マユカは恐怖に怯える表情をしながら、前に出している右手から、


 ズンッ


 光の球を出した。


「……」


 が、ドウルはそれを無言で、体を少しだけ動かして避ける。


「ぁ……」


「そんな在り来りなものをバレバレなやり方で……そりゃ簡単に避けられますよ」


 ドウルは呆れた、という顔をしながら、ゆっくり歩く。対し、マユカは半分諦めたような顔をしながら、ゆっくりとへたり込んだ。


「マユカさん! ん、がっ……!」


「はいはい。事が済むまで黙っててね」


「んぐっ!」


 両手を拘束されていて、叫ぶことしか出来ないレン。そのせいか、またしても血を吐いてしまう。先程よりは動けるようになったとはいえ、力の差がありすぎるのか、どんなに暴れても女性が退く様子が全く見られない。


「だ、ったら……ぇ……」


 と、その時、レンの体が止まった。


「……あれ……!」


「ん? どうしたの?」


 何かを感じ取ったのだろう、少し興奮した様子を見せる。まだレンしか感じ取れていないのだろう。女性はそんなレンの姿を見て、ハテナを浮かべる。


 シュルルッ


「っぇ?」


「え?」


「……ぇ?」


 すると唐突に、小さな音を立てながら、セルント王の部屋から黄色い縄のようなものが伸びた。やがてその縄は、


 シュビッ


「んぁ!」


 ドサッ


 ドウルの両足に巻きついた。

 唐突に巻きついてきた何かに、ドウルは驚きながら、まともな受身を取れずに顔から転んでしまった。


「ぇ……嘘……嘘!」


「何……何で……!?」


 その光景を見て……いや、感じ取って、レンは驚きと興奮の声を出した。

 セルント王の部屋から、右手から縄を出し、額に大きな絆創膏を貼っているルルが、静かに出てきた。


「何で……! ルルちゃん、どうやって……」


 周りは空間スキルで囲まれており、出入りなど出来ない筈なのに……と、そんなレンの問いには答えず、ルルは顔を動かさず、無言で左手を伸ばし、


 シュルル


 再度ドウルへと縄を伸ばした。


 シュビビッ


「っ!」


 そして今度はドウルの全身を縛るように巻き付けた。


「なっ!? ほ、どけない!」


「ド、っ、マジ!?」


 そしてそのまま、驚いている女性の方へ右手を向け、


 シュルル


 縄を伸ばした。


「っ!」


 それを見た女性はレンの体から離れ、大きく右へと避けるように飛んだ。


「何で、貴女がここにいるのよ!」


 そして着地をし、ルルの方を見ながら、叫ぶように疑問をぶつけた。

 空間スキルを利用し、レンとマユカを隔離するように分断をしたのにも関わらず、自分の目の前に現れた少女。焦るのも無理はないだろう。


「別にどうでも良いじゃん」


「っ! 良くないわよ!」


 ダルそうな声色でルルは返す。もちろん、そんな返答を望んでいない女性は、強い口調になった。


「ルルちゃんが良いって言ってるんですよ! 素直に受け入れてください!」


「貴方もさっき、何で、って呟いてたじゃないの!」


 いつの間にやら起き上がり、腹に左手を添えているレンにも返されてしまった。

 ちょっと哀れだ。


「そ、れより! 大丈夫なの!?」


 そんな哀れな女性なんぞ気にも止めず、レンはルルの方を向いて目の前まで一瞬で駆け寄り、心配の声をあげる。


「ん……ぇ……耳? っ! 血!」


「え……?」


 が、ルルはレンが目の前に一瞬で迫ってきたことには一切驚かず、頭に付いている耳と服についた赤い血を見て、大きな声を上げた。


「だ、血! 血が!」


「あ、これ? これは大丈夫だよ」


「ぇ……」


 自分の体に右手を添え、少しオドオドした声色でそう言う。

 ルルは少し不服そうな表情をしているが、それ以上は何も聞かなかった。


「いやそれよりも! 大丈夫なの!?」


「……今のレン君に言われたくない……」


「だって! さっき、おでこ、から……」


 取り乱すレンに対し、冷静な話し方でルルは返す。


「……平気。心配ありがと」


「ひゃぁ……いや、にゃ、なら、良いけど……」


「……ん……」


 少し不服そうな顔をしながら、そう返す。その姿を見て、さっきまでとは違い腑抜けた声を出すレン。


「……ぁ……えっと……あ、あいつはどうすれば良い?」


 ルルは話を変えるように、縄で繋がっているドウルをあいつ呼ばわりしながら聞いた。


「あ……じ、じゃあそのまま動けないようにお願い」


「了解」


 ギュ


「んがっ!」


 レンの言葉を聞き、ドウルに巻き付けていた縄を、より一層強く絞めた。


「……」


「……」


「……まだかしら?」


「……」


 それを確認したのか、今まで黙っていた女性が声を発した。

 声を聞き、レンは振り向く。腰を落とし、恐らくファイティングポーズをとっていたであろう、女性が怪訝な表情でレンを見つめている。


「おかしいでしょ……あんなゆるっゆるな会話なのに、隙が一切無いとか」


 そして再度、無言で見つめ合う。

 が、やがてレンはマユカの方に顔を向けた。


「マユカさん。ドウルさんを連れて、部屋の中に入っててください」


「はぇ! あ、う、うん!」


 先程まで恐怖しかない空間だったから、その落差に呆然としていたのだろう。未だ地面にへたり混んでいたマユカの口から、変な声が出た。


「なるべく……ドウルさんを壁にするように運んでください。攻撃されないように」


「っ!?」


「ぇ!? えぇ、え、わ、分かった」


 マユカはレンの発言に大きく動揺している。恐らく躊躇いがあるのだろう。

 女性は無言で、鋭く、睨むようにレンを見つめる。


「……貴方もなかなか酷いことを言うわね」


「さっき言いましたよね? 僕は優しくない、って」


 そんな会話を尻目に、マユカはドウルにゆっくりと近づく。

 少し腰が引けている。


「し、失礼します! 動かないで、動かないでよ!」


「……はぁ……」


 そして強く警戒しながら、ドウルを立たせ、後ろに隠れながら、部屋へと歩き出した。

 対し、ドウルは呆れたようにため息をついた。まだ何処か余裕そうな顔をしている。


「に!」


「……」


「ぎっ!」


「……」


「ぎっ!」


「あの子、大丈夫なの?」


 ドウルを抱え、盾にするように歩くマユカ。顔が歪み、一歩進む度に変な声を上げ、顔を真っ赤にしている。如何にも辛そうに運んでいる。


「あ、あり、ありがとね」


「い、いえ。無事で良かったです」


 そしてすれ違う時、ルルは左手から伸ばしていた縄をマユカへと渡し、マユカはそれを受け取りながら、小さな声でお礼を言った。


「ルルちゃんも。中で待ってて」


 それを確認したレンは、今度はルルの方を見る。危険だ、という理由だからだろう。そうお願いするレン。


「やだ」


「……へ?」


 しかし、視線を前へと戻した瞬間に聞こえた返答に、素っ頓狂な声を出しながらルルを二度見した。


「い、いや、危ないんだから!」


「レン君も危険じゃん」


「っ……にゃ、そう、だけど! そうじゃなくて!」


 ルルの言葉に対し、強く反対する。

 もう完全に背中を向けている。女性のことなんか全く見えていないであろう角度になっている。


「……じゃあ後でその耳と尻尾、弄る」


「え……?」


 やがて諦めたのか、それだけを言い残し、ルルは部屋の中へ入っていった。


「ちょ! 待って、まさぐ、えぇ……!?」


 ルルの背中に向けて、叫ぶように声を出したレンだったが、既に部屋の中に入ったのを見て諦めたような声を上げた。


「後」


「ひゃっ!?」


 が唐突に、ルルが扉の影からひょっこりと顔を出した。レンから変な声が出る。


「……すごく遅れたけど、HBD……」


「……え……あ、ありがとう……」


 数日遅れの祝福をした。レンは少しぎこちなくお礼を言う。それを確認したルルは部屋の中へと身を入れ


「……それと」


「んぇ?」


 ようとしてまた顔を出した。

 さっさと部屋入れよ。


「私、彼氏いない歴イコール年齢だから」


「……へ?」


 少し顔を赤らめながらそれだけを言い、ルルは部屋の中へと、今度は扉を閉めながら引っ込んでいった。レンはその言葉の意味を考えようと俯いた。

つまりそういう事です。

ルルちゃんはモテn(°ε°((⊂(`ω´∩)

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