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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
38/107

1.38.1 VS一撃が重いくせに素早くて尚且つ見えない攻撃をしてくる女性

戦闘回。

この物語が「異世界(恋愛)」にならなかった一番の原因であります。


2023年3月追記

あいに溢るるを見返して、「どう考えても戦闘よりもイチャイチャの方が重要だ」と思い、「ハイファンタジー」から「異世界(恋愛)」に変更しました。

 十一時半頃。

 真上は空、真下は大穴という不思議で広々とした部屋。時間が時間なので、季節的にもありがたい太陽の直射日光が、部屋中を照らす。そしてその中央にいる女性から、静かな殺気が盛れだしていた。


「もうOKかしら?」


「……」


 そしてその女性に向かって、レンがゆっくりと近づいている。


「……」


「……」


 そして数mという所で止まった。静かな空間の中、お互い無言で見つめ合う。


「えと……」


 そんな中、マユカ一人だけは、どうすれば良いのか分からずにオドオドしている。


「マユカさんは……近くだと危ないので、できるだけ離れていてください」


「でも……」


 レンはそんなマユカをちらりと一瞥してから、そう促す。マユカはまだこの世界になれていない。だからこその忠告だろう。しかし、マユカ自身もレンの身が心配なのか、なかなか離れたがらない。


「あら? なら私は、その女の子から狙っちゃおうかしら」


「っ!?」


 そんなレンの気遣いとマユカの葛藤に割って入るように、女性が最低な宣告した。


「あんた……!」


「うふふ」


 レンは目を見開き、女性に若干の嫌悪感を抱きながら睨む。


「悪魔かよ……」


「じゃあ私は……」


「そばにいてください。僕が護りますから。後、防弾チョッキのやつも」


「わ、分かったわ」


 頷き、マユカは未だ女性を警戒するように見つめているレンのすぐ後ろまで近づく。そして、無言でレイトを使用し、薄い膜のようなもので自分の全身を守るように覆った。無言な空間が広がった。

 そして、そんな空間が続くこと数十秒。


「ほっ!」


「っ」


 前触れも無く、女性がレンに向かって走り出した。二人の距離は数メートル。故に、


「んくっ!」


 一瞬のうちに、二人は接触した。

 女性はレンの腹を狙って右手で殴るように振り抜き、レンは両手をクロスして女性の拳を受け止めた。


 キキッ


「んがっ!」


「レ、レン君……!」


 勢いがあったのか受け止めた瞬間、レンの体が少しだけ押された。


「まぁ……無理よね」


「……っ、何だこれ……!? やばっ!?」


「ひっ……!」


 止められたのに少し余裕そうな表情で小さな声を出す女性。レンは苦い顔をしながら、警戒しているのか、女性を睨むように見つめている。

 次の瞬間、女性は距離をとるためだろうか、大きく後方へと飛び退いた。


「……ふりゃっ!」


 そして着地した瞬間、回し蹴りをした。

 着地と同時なので、その足は少し離れていたレンにまでは全く届いていない。のだが、


 グオッ


「ぁがっ!?」


 レンは右から来た謎の衝撃を受け、吹き飛んだ。


「……ぅぇ!? レン君!?」


 一瞬遅れ、マユカが叫ぶ。レンはそのまま床に触れずに飛んでいき、


 ゴガッ


 扉がたくさんある壁にぶつかった。


「んぐっ!? いっつぁ……!」


 ぶつかった音とレンの反応から、致命傷ではなさそうだ。

 レンは背中をぶつけたが、すぐに、ゆっくりとだが立ち上がった。


「レン君! だ、大丈夫!?」


 レンの方を向き、大きな声で心配の声を出すマユカ。しかし当然、


「あなたね……今の自分の身の心配、したらどうかしら?」


「っ!?」


 女性がそんなスキを見逃すはずもなく、呆れたような声を響かせながらマユカに歩み寄る。そしてゆっくりと両手を握り、自分の頭の上まで上げる。


「ふっ!」


「ぁっ」


 そしてマユカの脳天目掛けて振りかぶった。マユカは自分の体を守ろうと、目を逸らしながら両手を顔の前に翳した。


 ガッ


「っ!? なっ!」


「んぐ……ぇ……?」


 が、その両手は届かなかった。

 マユカは謎の音と女性の驚く声を聞き、ゆっくりと目を開けた。

 そこには、女性とマユカの間に、まるでマユカを守るかのように何かが割り込んでいた。


「これは……レイト……?」


「な……何、この鏡……?」


 マユカは、目の前の何かに自分自身が映っている光景を見て、それが小さな鏡だと気づいたようだ。

 対して女性は、その鏡の存在にハテナを浮かべていたが、


「っ! まさかあの子!」


「ぇ……?」


 やがて何かに気がついたのか、レンが吹き飛んでいった方へと目を向けた。それを見て、マユカも同じ方を見た。


「ふんっらぁ!」


 が、先程まで遠くの壁にいたレンは既に女性の目の前にいた。そしてそのまま右腕で勢いよく、女性の胴体に拳を打ち込んだ。


 ゴッ


「んぐぁっ!」


「ぉっ!?」


 女性は咄嗟だったのでガードもできず、鋭い一撃を受けながら、数mほど体が飛んだ。


「レ、レン君!? 何……あ、いや、それより大丈夫なの!?」


「いっつぅ……!……ふぅ……はい。僕は大丈夫ですよ」


「え、本当!?」


 目の前のことに驚きつつも、先程吹き飛んだレンの身を確認する。レンは言葉通り、ダメージすら受けていないようにも見える。


「む、無理して……る……ぇ……」


 とそこで、マユカはレンの頭とお尻にあるモノに目を向けた。


「な、何で耳……と、え、尻尾?」


 頭頂部には、レンの髪の毛と同じ茶色をしており、縦にピンと伸びていて、まるで狐が持つように毛で覆われている耳。

 お尻には、白く覆われた毛先以外は、耳と同じように茶色い毛に覆われ、自分の身の丈の半分ほどの大きさの、少々細くそして長い尻尾が、ズボンから飛び出ている。


「あ、えと、すみません、後でお願いします。今はあの人をどうにかしないと」


「え……まさか獣人……いや、え……」


 状況が状況だからか、詳しい説明はせず、女性の方を見ながらマユカの前に守るように立った。


「……わ……かった……後で聞く」


 その光景を、自分のために戦ってくれているのだという姿を再確認したマユカは、口を閉じた。

 吹き飛ばされた女性は既に立ち上がっており、無言でゆっくりと近づいていた。


「……耳と尻尾……ね……」


「……」


「……あなた……」


 そして立ちどまり、レンの目を見ながら少し驚きの交じった声色で話し始めた。


「異物なのに、何でアンスロの耳と尻尾があるのよ……!?」


 予想外の展開だったのか、女性は少し声を荒らげながらレンに聞く。もちろん、レン自身も知らないことなので、


「そんなの、僕だって知りたいですよ」


「っ!? そう……まぁ別に良いわ」


 レンは曖昧に流した。それを聞いた女性は深く追求はせず、虚空から赤い、掌サイズの水晶玉を取り出し、レンに向けるように翳した。


「どうせ、異物には変わりないんだもの」


「……? 何それ……?」


 すると水晶玉が真っ黒に染まった。それを見て、女性はニヤリと微笑んだ。


「ねぇ。アンスロ……って、何?」


「……あ、えと、すみません、後でお願いします」


「え、ちょ、それを後ではキツイわ私」


 そんな中一人、話についていけてない人がいた。それもそうだろう。マユカからすれば見慣れている姿だが、それが謎の名称で呼ばれているのだ。一瞬で頭の中はハテナで溢れてしまっただろう。

 頑張れマユカ。今は我慢だ。


「……状況からして、凶禍かしらね、あれ」


「……」


 水晶玉を虚空に戻し、女性は静かに身構えるながら、レンの現状について冷静に分析している。レンも同様に、腰を落としている。

 またしても無言で見つめ合う二人。攻めるタイミングを伺っているのだろう。


「っ」


 キュッ


 そして前触れもなく、レンは無言で床を蹴り、一気に距離を詰めた。ガラスでできた床が小さな音を立てる。


 ゴッ


 そして右手で女性の体を振り抜いた。が、女性は顔色を一切変えず、それを左手で受け止めていた。鈍い音が響いたというのに、何ともないといった顔をしている。


「んぎっ……!」


「なるほどね。見えてれば余裕だわ」


「……っ……らあぁっ!」


 そして嘲笑うように言う。レンは少しイラついた表情をしたかと思えば、次の瞬間、矢継ぎ早に拳を突き出した。


 バゴッ

 ガギッ

 ドグッ


 一発一発が素早く、大きな音を響かせていることから鋭い一撃を放っていることが分かる。が、女性は余裕の表情でそれを全て受け止めている。右から来れば右手で、左から来れば左手で。冷静に拳を受け止めている。


「っらぁぁぁっ!」


 パシュッ


「っ!?」


 やがて飽きたのか、女性はレンの左手を右手で掴んだ。逃さないように、強く握る。


「それで本気なのかしら?」


「いぎっ……!」


「パワーもスピードも圧倒的格下、って感じね」


「っ……」


 まるで煽るようにそう言ったかと思えば、目の前で歯軋りをしているレンの腹目掛けて、


 ゴスッ


「あがっ!?」


 右足で思いっきり蹴り上げた。レンの体は勢いよく、くの字になりながら真上へ飛んでいった。天井は吹き抜けなので、太陽にギラギラと照らされている。


「レ、レン君!」


「なら、受けはどうかしらね!」


 やがてレンが三階部分まで飛んでいった時、女性はレンを見上げながら、上げたままにしていた右足を振り下ろした。


 ズンッ


「ぎにゃっ!?」


「レン君!?」


 瞬間、レンの体が、今度は海老反りになりながら勢いよく落ちてきた。これもまた、見えない何かなのだろうか。


「受けも甘いわね」


 そしてレンが目の前にまで来た時、女性はさらに回し蹴りをした。


 ガツッ


 ドサッ


「っ!?」


「っが! いったぁ……」


 が、今度はレンの体は吹き飛ばなかった。レンのすぐ横に、守るように、レンと同じぐらいの大きさの鏡が出現したからだ。

 鏡と何かがぶつかる音と、レンが床に接触した音、ほぼ同時に響く。


「レン君!」


「……なるほど応用力は悪くないわね。まぁ……それだけだけど」


 マユカは、女性から数m離れた位置に落ちたレンに近づき、身の心配をする。女性はレンの行動を冷静に分析している。尚も余裕そうな顔だ。


「ごはっ!」


 ピチャッ


「……ぇ……」


「……はぁ……はぁ……確かに……ん……パワーは、下かもしれませんね」


「っ! レン君!? 血が!」


「ん?」


 すると、レンがうつ伏せのまま声を発した。思いっきり蹴られたからか、床に打ち付けられたからか、吐血をし、さらには声が途切れ途切れになっている。


「でも……はぁ……スピード、はぁ、僕の方が圧倒的格上、ですね」


「いやいや。どこが? 目で追えたわよあれ」


 女性は、何言ってるの、といった声色で……いや、やれやれといったようにお手上げのポーズをした。

 レンは仰向けになり、左手を胸に当てた。すると左手から青い光が放たれた。恐らくレイト、なのだろう。


「だ、大丈夫!? さ、支えるね!」


「いえ……だ、いじょうぶです……」


「え……あ……む、無理はしないで!」


 マユカが心配な声を上げながらレンに近づいたが、左手を胸に添えたまま立ち上がるレンを見て、レンの右肩を支えるように掴んだ。


「……ん……」


 瞬間、マユカに全体重を支えるかのように、ガクッ、と体勢を崩し、その場にしゃがみこんでしまった。


「っ! レン君!」


「すみ、ません」


「……ぇ……」


「え。何?」


 レンはマユカから離れてから片膝をつき、薄茶色の布を虚空から取り出し、女性に見せた。小さな長方形をしている。


「あなたの、そのマキシ丈のスカート、勝手にミディスカートにしました」


「え嘘」


 そして女性はレンの言葉を聞き、自分の足をぺたぺた触った。


「うぇぇ!? いつの間に!?」


 確認が完了したのか、自分の足に目を向け、響き渡る声で叫んだ。全く気づいてなかったのか、今までに無いほどの声量だ。


「……さっきの連撃中、一緒にあなたのスカートも短くしてました」


「ま……嘘……」


 レンの言葉を聞き、女性は一歩下がる。少し引き気味な顔をしている。レンは、女性が何を考えているのか察したのか、心外だ、といった顔をする。


「もし見えていなかったのなら、僕の方が圧倒的、で良いですかね?」


 右手を腰に当て、少しドヤ顔をしながらそう言う。嬉しいのだろう。尻尾が左右に揺れている。


「レン君……エッチ……」


「は?」


 マユカも引き気味に言った。


「ま、まさか素手でこれを!?」


「はぁ!? いや、違いますよ!」


 レンは予想外の返答が来たのか、ドヤ顔が崩れてしまった。そして布を虚空にしまうと、すぐに今度は短刀を取り出し、右手で見せるように前に突き出した。


「これです!」


「え、何それ……?」


「いや何って……ただの短刀ですけども」


「短……!」


 女性はレンが提示したものを確認し、絶句した。

 恐らく、短刀を使用した瞬間が見えなかったのだろう。


「……」


 すると、レンは徐に、後ろにいるマユカの方をちらりと見て、短刀を虚空にしまってから、自分のアキレス腱を右手でトントンと指さした。


「……え……?」


 戸惑うマユカを後目に、そのまま女性の方へと右手を翳した。

 瞬間、


 ズアッ


「っ!?」


「ぇ!?」


 自分の目の前に、巨大な鏡を出現させた。今までとは全く違う、壁のように立っている。少し傾いているように見える。


「っ」


 同時に、レンは鏡の後ろから飛び出した。横へ飛び、女性と鏡の間に入らないように。


 キュ


 そして床を蹴り、右手を大きく振りかぶりながら、女性へと突進した。

 防がれてしまうような一撃に見える……もしかして、何か策があるのだろうか?


「っ!」


 ゴッ


 しかし、振り抜いた拳は女性の左手によって阻まれてしまった。先程と同じ、余裕そうな表情だ。


「……何のつもりかしら……?」


「っ!?」


 女性はレンの方を見て、冷たく、少し怒りを含んだような声で言った。


「マ、ジか……」


「それはこっちのセリフよ!」


 怒鳴るように言い放った直後、女性はそのままレンを引き寄せ、


 ゴッ


「げふっ!」


 ビチャッ


 レンの腹に、右手を思いっきり打ち込んだ。レンの顔が大きく歪む。

 同時に、またしても吐血した。透明な鏡の上に、赤い血が広がる。


「レン君!」


 ビュッ


 そしてレンの体が、風を切る音が聞こえてくるほど勢いよく飛んでいき、


 ズガッ


「あがぁっ!」


 そのまま、見えない壁に勢いよく背中をぶつけ、床に倒れた。


「何なの? 素早く動けるからって調子に乗ったの?」


 女性はレンに向かってゆっくりと歩く。

 その光景を眺めながら、レンは左手を腹に添えながら、ゆっくりと立ち上がる。


「ねぇ? どうなの!」


 女性は歩きながら、怒号と共に、左手を広げ、勢いよく前に突き出した。と同時に、右手の拳を握り、思いっきり前方へと突き出した。


「っぁぁああ!」


 と同時に、レンの体は何かに押さえつけられたかのように、全身を伸ばしながら壁に張り付いた。大きな声で、悶えるように叫んでいる。

 そして女性は左手を突き出したまま、今度はビンタするかのように、右手でを何度も振り抜いた。


「ふがっ! んごぁっ!」


「ぁはっ! そういえば、あのツチヤって子も、こうやって殺したわね!」


 高笑いをするように、何度も右手を振り抜く。


「がふっ!……ツッチー……!」


「あの子のこと大好きなのよね? なら、同じ死に方も良いんじゃないの?」


 煽るように言い放つ。自分の有利は揺るがないと確信しているのだろう。レンの苦しむ顔を見て、興奮しているようにも見える。


「はぁ……はぁ……ツッチーの……」


「……あら?」


「職業は、魔法使い、です……」


「……は?」


 女性はレンの謎の言葉に対し、意味不明だ、と思った瞬間、


 ズピュ


「っ!?」


 女性のアキレス腱に、光の球が飛んできた。


 ドサッ


「っがぁっ!?」


 女性は急に来た鋭い刺激に、倒れ込んだ。その隙にレンは女性の束縛から逃れる。


「っと……ひがっ……はぁ……はぁ……」


「ふぅ……」


 女性の後方数十mで、マユカが右手を拳銃の形にし女性の方に向け、左手をポケットに入れるようなポーズをしていた。まるでたった今、撃ち抜いた、とでも主張するかのように。

凶禍とは、普通の人間以外の人種なら「誰でも」扱えるヤツで、大雑把に身体強化という認識でOKです。特徴として、(アンスロの場合は)獣耳と獣尻尾は強制的に出してしまいます。

つまり、獣耳や獣尻尾が出てないやつは基本凶禍してないです。だから凶禍してるレン君の攻撃や素早さに同等以上に渡り合えるこの女性って強いんですよね。



多分戦闘シーンに興味持ってる人少ないだろうから戦闘シーンの時は更新頻度ちょっとだけ上がります。




2023年3月追記

というか「あいに溢るる」ってタイトルなのに何でジャンルを「異世界(恋愛)」しなかったんだろう……この作者今まで何考えてたんだ……?

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