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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
35/107

1.35 推理じゃなくてただの凡ミスよなこれ?

ここまで頭使うのは多分最初で最後だと思います。

 虚無。

 そんな感情を持ちながら、僕は今日も訓練を始める。


「じゃあ、えっと……今日、は……」


 消え入るような声を出した。僕の変わりように周りは気づいているのだろうけども、何も言ってこない。


「どうしたんですか? 消えそうな声ですけども」


「え……? あ……い、いえ! 何でもありません!」


 そうだ。今は訓練中なのだ。目の前の事に集中しないと! 集中……できる自信がないけど……


「あの。ツチヤ君……だったよね? がいないし、普通にレイトの訓練で良くないですか?」


「俺もそっちがいいです」


「そう……ですか……まぁ、そうですよね……」


「そんなに職業教えたかったの?」


 そんな僕の心境なんて梅雨知らず、僕の元クラスメイト以外の人達がグイグイ来る。

 今更かもだけどさ、結構フレンドリーだよねこの人達。


「まぁそれもそうだよな……実際、あいつの付き合いでやってたようなもんだし」


「……そ、そんな言い方しなくても……」


「言い方も何も、事実じゃん」


「あいつのこと好きすぎだろお前」


 対し、僕の元クラスメイト達は冷徹だ。

 本当に何で……ツッチーはこんなに嫌われるようなことをしたんだろう……


「……では、防弾チョッキの方からやりましょうか」


「ええぇ。俺らビーム打ちたいんだけど」


 ……でも、いなくなっただけで、何処かにいるはずだよね。そうだ。絶対そうだ。今夜辺り、ドウルさん……以外の側近と話をしようかな。







 訓練もあっという間に過ぎていき、十一時頃。元々ハヤタさんが教えていたから、レイトを感じることができる人がほとんどだった。というより、ほぼ全員が問題なく感じていた。

 こうしてみると……本当にツッチーだけ、だったんだ……確かに注目はされちゃうのかも……


「レンさん」


「ぉっ!?」


 防弾チョッキを上手く再現出来ていない人にコツを教えている時、不意に背後から声が聞こえた。

 えっと誰だうわぁソウヘイさんじゃん……


「レンさんって、昨晩どこに居たんですか?」


「え……?」


 ソウヘイさんは小さな嫌悪感を抱く僕にお構い無しにそう聞いた。

 何その質問。何でそんなことを今聞くの?


「いや、何ですか急に」


「別に……とにかく教えてくださいよ」


「本当に何なの……えっと、昨日は……」


 自分の不都合を隠そうとでもしているのか、何故か催促してきた。

 えっと、昨晩部屋に戻った後は……お風呂に入って、で夕食を食べて、その後ミチルちゃんの部屋に……


「……ずっと、自分の部屋にいましたよ」


 いたけど……素直には言いたくない。だって怪しいすぎるんだもん。

 僕の返答を聞いたソウヘイさんは、一度右手を口元に持っていき、


「部屋ですか?」


「はい」


 やがて僕の言葉を確認するかのように繰り返し、そして一歩、近づいてきた。


「……嘘ですよね?」


「なっ!?」


 そして声のトーンを落とし、事実を突きつけてきた。

 何で……確かに嘘はついたけど、どこで確信を……!?


「いや、な、何でそう思うんですか?」


 もちろん、僕はその疑問を素直にぶつけた。気がつけば、僕達のやりとりを聞くためか、訓練の手を止めて聞き耳を立てる人がちらほら出てきた。

 怪しすぎる……嘘をついたのは事実だけど、何で急にこんなことをするんだ……?


「普通に……部屋から、出てきたところを見たから」


「っ!」


 動揺しまくる僕を他所に、ソウヘイさんは呆れた、といった顔で答えた。

 マジで!? 嘘! 見られてないって、誰もいないって思ってたのに!


「多分、王の自室か女子部屋のどっちかに行ったはず。そうですよね」


「……っ」


「その反応からして、何かやましい事でもしてたんですか?」


 周囲にも聞こえるように、なのか、少し大きい声で、かつゆっくりと説明している。


「それなら王の自室が怪しいですね」


「……」


「大方あいつのために、何かしたかったのでしょうか」


 名推理、といった感じで、僕の目を見ながらドヤ顔をした。少しウザイ。

 ……確かに。今の僕なら何か証拠が無いかを調べるために、こっそり行ってたかもしれないな……昨日は行ってないけども。


「違いますか?」


 質問した時とは違い、少し強い口調で、問いただすように聞いてきた。

 なるほど……不正解だけど、有り得る展開かもな。本当に頭は良いんだなこの人は。でも……違う。


「……墓穴を掘る、ってやつかな……」


「はい? 何のこ……いや、自白ですか?」


「そうですね。自白しましょうか」


 正直に、今度は嘘をつかないで。嘘をついたけど、おかげで良いことも分かったし。


「えぇ、そうですね。昨晩は、外室していました」


「やっぱり。何で嘘をついてまで隠してたんですか? まさか……証拠隠滅ですか?」


 ……今この人の頭の中はどうなってるんだろう……さっきはハヤタさんのためとか言ってたのに、今度は証拠隠滅って。ちょっとおかしくないかな? まぁ、今はそんなことよりも。


「ソウヘイさんは、ハヤタさんのことが嫌いでしたよね?」


「はい……? いや、急に何ですか?」


「いえ。もしハヤタさんがいなくなったら、ソウヘイさん的には嬉しいんだろうな、と」


 分かっている事だけど一応聞いておく。

 そうじゃん。動機を考えると、この人が一番有り得る人じゃん。


「さっき、言いましたよね? 「王の自室か女子部屋に行ったはず」、と」


「はぁ? い、言いましたけども」


 僕は聞く。

 さっき自分で言っていたことなので、ソウヘイさん自身も否定はせず、あっさりと認めてくれた。


「そしてその後すぐに「王の自室が怪しい」、とも」


「いや……何が言いたいんですか? それで話を逸らしてるつもりですか?」


 なるほど。しらばっくれるつもり……いや、もしかしたら気づいてないのかな。なら良かった。


「実はですね。僕は螺旋階段なんて使ってないんですよ」


「……は?」


 僕の声に、意味が分からない、言った顔で聞き返してきた。周囲で聞いている人達も分かっていないのか、少しざわついた。


「いや、何言って……だって、そこを通らないと――


「僕が使ったのは食堂ですよ」


「はい……?……っ!?」


 僕の一言を聞き、ぽかんとしたかと思えば、すぐに驚きの表情。気づいたみたい。


「男子部屋と女子部屋は、階段を使わずとも食堂を経由すれば直接行けるんです」


 つまり、そういうことだ。

 僕は昨晩、螺旋階段は使わずに食堂を経由し、ミチルちゃんの部屋を訪問したのだ。


「つまり、本当に僕を……食堂方面に向かう僕を見たのなら、「王の自室に行く」という結論には絶対にならないんですよ」


「っ!」


 してやられた、という顔をした。

 そして周囲も理解したのか、いっそう大きなざわめきが訓練所に拡がった。


「い、いや、それならそっちが、レンさんが嘘をついているってことも――


「ありますね」


 逆に言えば、僕が嘘をついた、という可能性も普通に有り得る。


「でも簡単ですよ」


 それの証明はすぐにできる。だってそこには……王の自室の前には……


「王の自室の前には、騎士がいるはずです。その方々に確認してもらえばすぐに分かりますよ」


「っ!?」


 あそこは、夜には四人ほど騎士が待機している。だから本当に僕がそこを通ったのなら、絶対に見ているはずなのだ。

 というかむしろ、見られたくないからこそ、食堂の方を通ったんだけどもね。夜中に目が合った時、なんか気まずかったから。


「そ……れは……その……」


 言葉に詰まるソウヘイさん。僕はそんな動揺して目が泳いでいるソウヘイさんを、じっと見つめる。

 だから言ったじゃん。墓穴を掘った、って。


「ソウヘイさんが昨日、本当は何をしたのかは気になりますけど……」


 昨日のこともそうだけど、もっと気になることが……というかこの人……もしかしてよく考えないで喋ってるのかな……?


「それよりも重要なことが、たった今分かりました」


「……はい……?」


 ずっと目を逸らしていたソウヘイさんは、ゆっくりと、僕の目を見るように顔を上げた。たった今、この人はまた墓穴を掘った。分かりたくなかったし、気づきたくなかったことだ。


「騎士は、夜にしかいませんよ?」


 夜中に王の部屋の前を通った人しか知らない事実に。


「……は……? ぁ……ぁあ!」


 僕の言葉に一瞬だけ考え、そしてすぐに顔を青くした。

 そう。騎士は夜にしかいない。昼間は……何故かは知らないけど、王の部屋の前にはいないのだ。


「何で居ないはずなのに、いると知っていたかのような反応をしたのですか?」


 居ないのは多分、皆が寝ている間に不審者が出ないか、とかのための……見張りみたいなものかなって思ってるけど。


「よくよく思い出してください。ソウヘイさんは、何時、何処で、騎士を見たのですか?」


 僕はソウヘイさんに一歩近づく。

 夜にしかいないはずの騎士の存在を知っている。つまり、夜に王の部屋の前を通ったことがあるということだ。用もなく通るわけも無い。なら……


「これは完全に、僕にとって都合の良い考え方ですけども……」


 可能性はあるけど限りなく低い。それでいて、僕が最も望んでいる展開。


「まさか……一昨日の夜、セルント王の部屋の前で……なんて言いませんよね?」


 ソウヘイさんを見上げながら、今度は僕が、突きつけるように言い放つ。


「っ!」


 どうやってハヤタさんに化けたかは分からないし、もしかしたら間違ってるかもしれない。つまるところ、ただの妄言に近い。でも……そうであって欲しい……


「……もし違うなら、ソウヘイさんがセルント王を殺めていないのなら、本当のことを教えてください」


 僕はさらにソウヘイさんに近づく。手を伸ばせば届くほどの距離まで。ソウヘイさん何かを考えているか、険しい表情をしている。


「……っ」


「……え……?」


 すると徐に、ソウヘイさんは全力で走り出した。中庭の出入口に向かって。


「あ、ちょ、待ってください!」


 一瞬遅れて、僕も反応する。

 まさか……逃げるつもりなの!? いや、だとしたら逆効果じゃない!? だってそれじゃまるで……自分が犯人って言ってる様なものじゃん!


「っ」


 いや、考えてる場合じゃない!

 僕も同じように、全力でソウヘイさんの後を追った。


 ソウヘイさんは道中にいる男子たちにお構い無しに、真っ直ぐ中庭の出入口に向かっている。皆は巻き込まえたくないのか、そもそも事情を飲み込めていないのか、近づいてくるソウヘイさんを避けている。


「あ、あの」


 そして反対に、僕に事情を聞こうとしたのか、近づいてくる人がいた。のだが、


「すみません、今は通してください!」


 申し訳ないけれど、今はそんな余裕はない。ソウヘイさんの足が速いのだ。全速力で走っているのに、差は縮まるどころか開いていく。

 やがて、広い中庭の外に、王城内に、ソウヘイさんは消えていった。








「はぁ、はぁ……」

 

 ソウヘイさんから大きく遅れて、僕は王城へと入った。廊下に出た時に一旦止まり、周囲を見渡した。ソウヘイさんらしき人影が見えなかったことを確認した後、中庭擬きへと続く扉の目の前まで歩く。

 多分、こっち、だよね……


「……ふぅ……」


 小さく深呼吸をし、目の前の扉のドアノブに手をかけた。


 ギギギィ


 小さな悲鳴をあげながら、大きな扉を開ける。そして中庭擬きへと一歩歩みを進めた時、


「……は……? え……? な、何……?」


 中庭擬きの真ん中で、ポツンと繰り広げられている光景に思わず足が止まった。

 状況が理解出来ず、無意識に僕は呟いた。今僕は、異様な光景を見ている。


 ガラス張りの床の上で、足をこちら側に向けてうつ伏せになっているソウヘイさんと、その上に人影が……誰かが、ソウヘイさんの上に、跨るように乗っかっていた。

頑張ったよ。自分頑張ったよ。でもこれ投稿される頃には忘れてるから、読み返して「こんなのよく思いついたな」って自画自賛します絶対。

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