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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
34/108

1.34 手遅れ……?

人体って不思議だなと思いました。

 僕は現在、元クラスメイトの男子が滞在している部屋の前、三階の廊下にいる。ミチルちゃんとも相談し、男子全員を僕が担うことになった。今は男子が廊下に出てくるのを待っているところだ。


 そんな中、やはり僕はハヤタさんのことを考えていた。


 もし、本当にハヤタさんがセルント王の部屋を訪問したのなら、何かしら理由があるはずだ。それは多分……


(どうって……追放ですけども)


(彼がレイトも扱えぬ無能、ということをですよ)


 直談判、かな。もし、追放が昨日の時点で決めていたことなら、ハヤタさんが黙っているはずがない。


(いえ。紛れもなくこいつらでした)


 それと……紛れもなくこいつ「ら」か……ずっと気になっていたけど、フルキさんもハヤタさんと同じように連行されたと考えるのが一番自然かつ可能性が高いかな。

 なら簡単だ。セルント王を殺めた本当の犯人を見つければ、両方とも助けられる。それだけの話だ。あれ、簡単かこれ?


「んぅ……」


 いや、どちらにしろやらなくちゃいけないな……僕にできるかは不安……いや、ダメだ! 弱気になるな!……そういえばハヤタさんに言われたな。考えすぎも良くないって……とりあえず今は、今のことを優先して考えよう。


「よし。それじゃ、人数の確認をするから、ちょっと動かないで待ってて」


「おう」


「了解」


「えっと」


 廊下が少しざわつき始め、周囲に人が集まってきたのを確認し、僕は人数を数えた。


「ん……? あれ?」


 そして、一人足りないことに気づいた。


「えっと……まだ部屋から出てきてない人って分かる?」


 僕は少し声を張り、全員に聞こえるように質問をした。同じ部屋にいる人なら、誰が部屋にいたか、とかは多分分かるはずだよね。


「ん? いや、いないと思うけど」


「僕のところも。僕で最後だったし」


「全員部屋から出たはず」


 ……はず、なのに……何故か誰も心当たりが無いらしい。


「僕の数え間違えかな……? それなら……」


 そう結論づけ、再度人数を確認しようと片手を再度上げた時……気が付いた。


「あれ? ツッチーは?」


 群衆の方に目を向けた時、ツッチーがこの場にいないことに気が付いた。

 トイレとかお風呂とかかな? それとも髪型がなかなか決まらないとか?


「ん? いないの?」


「え何その言い方」


 すぐ目の前にいたタツヒロ君(多分)が、そう聞いてきた。

 えっと、その問はおかしいよね? ここにいないにしろ、部屋のどこかにいるなら誰かは知ってるはずだよね?


「えっと……この中でツッチーと同じ部屋の人っている?」


 「いないの?」って聞かれても……少なくても分かる人はいるはずだよね? 何でそんな意外そうな――


「……」


「……」


「……」


「……は?」


 顔をする意味が分かった。

 誰も手を挙げなかった。

 誰も声を出さなかった。

 しーん、とした空気が流れた。


「え、待って……本当に誰もいないの?」


「そういや誰も相部屋にしてなかったな」


「……え……? はぁ!?」


 そんな中聞こえてきた声に、僕は大きな声で反応してしまった。

 誰もって……え、何で? 七,八人は入れる部屋だったよね!?


「いやいや。そんな驚くこと?」


「いや、え……逆に何で……皆、普通のことみたいに……」


 僕の反応とは正反対の、さも当然かのような表情で皆が頷いている。


「……あぁ! やっと分かったわ!」


「えっと……な、にを?」


 未だ理解が追いついていない僕をよそに、一人の男子が声を上げた。


「そっか。よくよく考えたら、僕達もレンがいなくなった後に知ったからね」


「レンが知らなくてもおかしくないわな」


 そしてそれを皮切りに、周りも何かが分かったのか、ウンウンと頷いたり、腕を組んだりしている。

 え……? 何の話……? いなくなってから、ってことは、自殺した後のこと?


「レンってさ、昨日あいつに言ってたよな」


 不意に一人の男子が僕の方を見ながら声を出した。

 えっと……確か、ヒロタ君だっけ……? というかさっきからやばいな……ツッチーとルルちゃん以外の人とはあんまり話さないから、二人以外の名前がうろ覚え……


「え……っと……?」


「確か、「ツッチーとルルちゃんの邪魔は絶対にしないから」だったよね」


「あぁ……あれを言った意味がやっと分かったわ」


「あ、うん。言った、けど……え、何がおかしいの?」


 分からない。一体何がおかしいんだろうか……だって二人はそういう関係だってツッチーから聞いたし……


「あのさ……あいつら、別にそういう関係じゃないからな?」


「……ん?……!? んぇ!?」


 え……!? そういうって……え、え!? どういう、え、えぇぇ!?

 ヒロタ君の発言に対し、理解は出来ているのに追いつかず、パニックになる。


「い、いや、でも、ツッチーは付き合ってるって……! お、俺の彼女だ、って!」


「流石にバカだろ」


「俺、寧ろ嘘だって聞いて納得したんだが」


「俺はすぐ嘘だって分かったぜ! ルルさんがツチヤを選ぶわけないってな!」


 いや……いやいやいや! そんなはず、だって、そしたら、それが本当だったらだって、そんな!?


「え……じゃあ、え、何!? もしかしなくても、僕ってただの自殺損だったなの!?」


「ん、ちょっと待って」


「え? はぁ!?」


「お前の自殺の理由マジでそれだけだったの!?」


 僕の自殺の理由に対し、周囲は驚きの声を上げる。いや、僕の自殺なんてどうでもいい。ツッチーが、何でそんな意味不明なことをしたのかの方が重要だ。


「あのさ……いくらお前にとっては大好きな親友だとしても、確認ぐらいしてから自殺しろよ」


「自殺を催促するのも何か違うでしょ」


 でも……何で? 何でツッチーはそんな嘘をついたの……?


「まぁつまり。皆そんな最低なヤツと一緒にいたくないの。クラスメイト全員嫌ってる」


「そ……そう、だったんだ……」


 ……これはどう反応すればいいんだろ……

 嫌われてること自体、衝撃的な事だけど、まさか嘘をついてたなんて……


「とりあえず点呼もしたいし……嘘の理由も知りたいし、直接部屋に行くしかないや……」


 ツッチーに聞くしかできない。僕じゃ正解なんて導き出せないし。


「確かあいつの部屋ってあそこだったよな」


 ヒロタ君(仮)が一番奥にある部屋を指さした。それに合わせ、周りにいる人達も皆、小さく頷いた。


「あ、ありがとう。ヒロタ君」


「おう」


 僕の言葉に対し、短く答える。そしてそれ以上は何も言わなかった。

 ……良かった。ヒロタ君で合ってた。


「えっと……」


 僕は一番奥にある扉の前に立ち、一度振り返った。皆が僕のことを見ている。


「それじゃ」


 それを確認した僕は、目の前の扉を、


 コンコン


「ツッチー?」


 小さくノックをし、ツッチーの名前を呼んだ。少し前まではザワついていた全員が黙り、ノックの返答を待っている。待っている……待ったのだが、物音一つ聞こえてこない……


「出ない……」


 何となく分かってたけど、やっぱり出ないか。寝てるのかトイレにいるのか……いや、どっちにしろ直接確認するしかないかな。


「ツッチー? 入るよ? 入るからね?」


「……え? 鍵は――


 僕は最後の確認をし、目の前の扉を一切の迷いもなく、


 ガチャリ


 開けた。

 目の前は例のごとく、大きなベッドが置かれている部屋だ。


「……ここにはいない……」


「マ? うわ、すごい静かじゃん」


 この静かな部屋にはツッチーの姿はなかった。というより、物音が全く聞こえてこない。お風呂の方からも聞こえてこないから、そっちにもいないのだろうか。


「そもそもここにいるのかな……?」


「お出かけ中?」


「……零とは言いきれないからね」


 もしかしたら外出している可能性もあるかもしれないな。いや、僕みたいに話し相手が別の部屋にいるならまだしも、今この状況で外出するのはちょっとおかしいけども。

 えっと、ツッチーの行方を探すなら……手っ取り早いのは匂いかな?


「居ないなら居ないで良いんじゃないの? あいつを探すのとかダリィよ?」


「ん……」


 僕はこの部屋の匂いを、全て鼻に入れる気持ちで嗅いだ。ツッチーの匂いを思い出しながら。


「ん? あれ……? この匂い……」


 そして鼻に神経を費やしていたその時、僕は鼻に届いてきたその匂いに違和感を覚えた。


「どうしたの?」


 僕の呟きを聞いたのか、すぐ後ろにいた眼鏡をかけた……ユウキ君だっけ? が聞いてきた。

 ツッチーの匂いは分かった。分かったけども……これ、もしかして一人じゃない……?


「いや……ツッチーの、男らしくて落ち着く匂いと一緒に、別の匂いもあるんだよ」


「……お前そんなに鼻良かったか?」


「いや。こっちに来てからだけど」


 そっか。僕の五感が優れてるのって、アンスロだからだっけ。何故かこっちの世界でしか機能してないけども。


「……というかあいつの匂いの説明をした意味は?」


「お前……よく嗅げるなそれ」


「むさ苦しい……」


「え、そこまで言う?」


 何故かツッチーの匂いを罵り始めた。

 嘘ぉ……僕的には結構落ち着ける匂いだと思うんだけども……言葉だけじゃ伝わらないのかな……?


「えっと、とにかく。ツッチーの匂い以外にも……何だろこれ……良い匂い、なのかな?」


「良い?」


 この匂いを伝わるように説明するのは難しいけど……ざっくり言うなら……


「誰のかは分からないけど……若い女性の匂いがする」


「え?」


「な……何で若い女性匂いなんて知ってるの?」


「変態!」


「お前……ついに、そんな淫らなことに手を……!」


 伝わるように努力した結果、罵倒で返答してきた。

 酷ぇよおい。若い女性の匂いだって分かっただけでそこまで言うか普通。


「いや、そうじゃなくて。若い女性って、良い匂いがするの」


「変態」


「むっつり」


「……」


 酷ぇよおい。会話が全然進まないよ。会話がループしてるよ。


「ちょ、話が進まなくなるから一回黙れ!」


「え、あ、うん」


 一人の男子の一声により、周囲の声が止んだ。

 ありがとう、ルイ君。止めてくれて。ルイ君で合ってる?


「……一応、若い女性から良い匂いがするっていうのは化学的に解明されてるよ」


「……え、マジで?」


「そ。マジで。一応、匂いを再現したボディソープもあるぐらいだし」


「嘘ぉ!?」


 一体何がおかしいのか分からないけど、僕の言葉一つ一つに大きく驚いている。

 残念ながら本当のことだよ。受け入れて。


「……いや、この匂いのことは後で考えよう。今はツッチーの行方。新しめの匂いがあるから、まだここにいるかもしれないよ」


「本当……何でそこまでして……」


 何でと言われても……心配してるからとしか言えないよ。皆が嫌ってても僕は嫌いになれないし、なりたくないんだから。


 その後、僕達は部屋中を探し回った。大きな部屋じゃないから五人ほどで。

 探し回った……のだが、ツッチーの姿どころか、ツッチーがいたという痕跡すら僕達は見つけることが出来なかった。

「前世はなんじゃろな選手権」

「タイトルコール要ります?」

「えっと……曰く」

「曰く」

「曰く」

「……ツッチー、最初は救いようのない屑にする予定だったみたい」

「……え?」

「……ん?」

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