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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
30/108

1.30 魔力ではなくマリョク、もしくはMARYOKUなのです

扱いづらすぎるで有名な職業がついに登場っ!

「では今日はスキルではなく、職業に関する訓練をしましょう」


 僕は全員の前という位置に戻り、言う。ドウルさんは後方で腕を組み、値踏みをするかのように僕を見つめている。


「あの……大丈……あ……」


 一人の男子が僕の顔を見ながら聞いてきた。誰かは知らないけど心配をしているのだろうか。何に対してかは分からないけども。


「職業はスキルとは違い、マリョク、という力を使います」


「おぉ!」


「やべぇ。興奮してきた」


 僕の言葉に、先程の重々しい空気から打って変わって、歓喜の声が広がった。

 んと……僕、まだ何も説明してないんだけど……どの部分で興奮してるの……?


「マリョクとは、MARYOKU」


「……ん?」


「え待って。何そのアルファベット?」


「Minimum」


「え、ちょ、続けるの?」


「最低限? え?」


「Auto」


「無視!? 俺らついて行けてないんだけど!」


「自動? え、何が言いたいの!?」


「Resistance」


「どういう……えぇ……」


「抵抗……だよな?」


「Yabai」


「おい! 今はっきりと、おい!」


「ヤバイなんて英語あったか……?」


「ねぇよ!」


「Operation」


「待て待て待て! 何しれっと続けてんの!?」


「操作……? は……?」


「Kuzenzetugo」


「また来た紛れ込んだ日本語!」


「この並びで空前絶後とか何かだせぇ……」


「Utilization」


「やべぇ……普通の英語に安心感覚えちゃったよ」


「えっと……使用?」


「あ……あの……レンさん……?」


「レイトと違い、正式名称は少々長いですね」


「長いですね、じゃねぇよ!」


「んぉっ!?」


 えぇっ!? ちょ、なに急に!? え、何でそんなに興奮してるの?


「ど、どうかしたのですか?」


「何でそんな顔で聞いてこれるんですか!? どうかしてんのはそっちの方ですよ!」


「えぇ!?」


 そして勢いよく、貶された。

 何で!? ただマリョクの名称の由来について説明しただけだよ!


「あの……巫山戯るのはやめて、そろそろ訓練の方に移りませんか?」


「いや、一切巫山戯てないのですが……」


 一体何に……いや、そんなことは今はどうでもいいや。


「と、とにかく! 名称にもありました通り、職業は最低限の動きを自動で行います」


「めい……は?」


「例えば魔法使いの場合は……」


「え、ちょ、だからついて行けてないんだってば」


 僕はそう呟き、虚空から短剣を取り出し、右手に持つ。


「え、何それ」


「そういうのをやりたいんだけど俺」


 短刀とは違い、刃と柄の間に、ガードという名前の少し出っ張っている部位がある。

 そして誰もいない方向を向き、


「水」


 と小さく唱えた。

 すると


 シュババッ


「へ……」


「お……わぉ……!」


 風を切る音を立てながら、短剣を持った僕の右手が空中に『水』という漢字一文字を描いた。そして、


 ブォン


 と音を立てながら、『水』の漢字から本物の水が勢いよく飛び出した。壁に当たり、


 ビシャッ


 と音を立てる。


「と……このように、詠唱のみで全てが行われます。例えるなら……何だろう……プログラムとかかな……?」


「へ……?」


「何か……思ってたのと違う……」


「……はいっ!?」


 一人の男子の呟きに、変な声で反応してしまった。周囲を見渡すと、呟いた男子以外の皆も「何か違う」といった目で見ている。

 え、違う!? 嘘!? 僕的には結構良いって思ってたんだけど!


「え……えぇ、ちょ、何ですかその目は!」


「いや……魔法使いだったら、杖から魔法を出すかと思ってたからさ」


 えぇそれだけで……確かに、生前の魔法の知識に乏しかった僕でも想像できるビジュアルだけど……それだけでそんな落胆する……?


「それに何で杖じゃなくて短剣でやってるの……?」


「短剣の方がカッコイイからです!」


「短剣で魔法を使うって何かコレジャナイ感があるんですけども……」


 え……嘘!? 短剣ってかっこいいじゃん! 短剣でこう、シュバシュバってやるの凄い良いじゃん!


「と、とにかく!」


 周りが不満のような声をあげていくので無理矢理遮る。

 皆目を輝かせながら興奮してくれると思ったのに……失敗したよちくしょう……


「この魔法使いに限らず、職業というものはスキルと比べ少々不思議な代物です」


「代物て」


 僕は短剣を仕舞い、一人一人と目線を合わせるように視線を動かしながら、職業に関する簡単な説明を始める。


「呪文の詠唱が完了すれば自分の体が勝手に動き、動作を最後まで起こす、というものです」


「え、何それやばっ!?」


「実際僕も今、詠唱後の『水』は自分の意思で描いていません」


「待って! 本当に僕が思ってたのと全然違うんだけど!」


 驚きすぎじゃない? 向こうの世界には無かったものだし、流石にオーバーリアクションな気がするんだけど。


「えと……つ、つまりこれなら、レイトを感じ取れなかったツチヤさんでも扱えるのです!」


 不思議だ。何故か落胆の声が訓練所を駆け巡っている気がする。

 僕はそんな声を聞き流し、隅の方にいるツッチーの方を見て言う。対するツッチーは俯いて目を合わせてくれない。

 やっぱりショックなのかな……


「ではまずは……移動をしましょう」


「え。移動?」


「はい」


 周囲がざわめく。訓練をするのに訓練所を離れる。不安なのだろう。

 僕はそんな不安そうなざわめきを聴きながらドウルさんの方をちらりと見る。ドウルさんは先程とは違い、無表情でこちらを見ている。ちょっと怖い。


「それでは着いてきてください」


 僕は少し早足になって訓練所を出た。

 少しでも長い時間、訓練ができるように。

これの為だけに頑張って英単語をかき集めました。褒めてください。というかそれを即答出来るとか、レン君の通ってた学校のレベル高ぇな。

因みに、自分は今回のように巫山戯ない限りは基本的に「セリフは一度に三行以下」「会話のラリーは六回以下」という謎の縛りをしています。

soregadoushitahlhlhl☆

でも執筆時と実際に投稿される時では一行に入る文字数が違うからか、時々四行のセリフがあります。何故統一されておらぬのじゃ。

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