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あいに溢るる  作者: 手石
共愛を求め狭隘な心を持った狂愛な少年
26/107

1.26 三度目のお風呂

必然的な疲労をしているレン君。

というかこんなハイペースでお風呂入る二人。いつかバスタオル姿でのバトルシーンとか出てきそうだなぁ。チンチラしてくれないかな。そんな予定無いけど。


 久々に、疲れた。


「はふぅ……」


 太陽が西に傾き、やがて沈み始めた頃に訓練が終わり、自室に戻った僕は一目散にベッドに向かい


 ドサッ


 と音を立てながらベッドに倒れた。

 全員がレイトを感じることが出来た後、防弾チョッキを作る訓練をした。予想通り今日一日で自分の体に纏わせる人はほとんど居なかった。最終的に実践レベルの防弾チョッキを創れたのはマユカさんだけだった。次点でルルちゃんとあの女だった。

 流石マユカさんとルルちゃん。惚れ惚れする。そしてあのアマ。地味に優秀だからムカつく。


「重たい足取り。想像以上にお疲れのようだね」


 同じくベッドの上に座っているハヤタさんが声をかけてきた。

 今思えば何でこの部屋ってベッドしか無いんだろう? 唯一外へ繋がる扉がある部屋なのに。


「んーどうする? 今日は一緒にお風呂に入るのやめとく?」


 いつもより少し間延びした感じの声色だ。ハヤタさんも多少は疲れちゃったのかな。


「いや、それ以前に一緒に入る前提での質問はおかしくないですか?」


「まるで僕と一緒なのが嫌みたいな言い方だね」


「……何で二日連続で入っちゃったんだろうなぁ……」


「後悔してももう遅いよ」


 二日目に至ってはナチュラルに隣にいたし。あの時の僕はどうかしてたのかな。というかなかなか起き上がれない。息が上がってるとかじゃないのに力が入らない。

 

「一体何をすればそんなに疲れるのかな? 僕様気になる!」


「そうですね……人に何かを教える、という行為自体は好きでしたけど、得意ではなかったですし……」


 友達と呼べる友達があんまりいなかったから……特に前世はルルちゃんとツッチー以外にはやってこなかったし……それにあの二人の対応も大変だったしなぁ……もっと上手に教えられるようにならないと……

 あれ……もしかしてメリダさんも分かりずらいって思ってたのかな……?


「あとはケイ……ハヤタさんの元クラ……ケイコさんとマナ――


「何で態々言い換えるのって聞こうとしたのに何で態々言い換えるの」


「いえ、気にするかなと……」


「気にしないよ別に。あ、何があったかは言わなくても良いよ。何となく分かる」


「流石ですね」


 やっぱり同じクラスだっただけのことはある。まさしく一を聞いて十を知る、だ。かっこいい。


「やっぱりキレがないなぁ……今日は早めに寝たら?」


「いえ、今日は夜に用事があるので、すぐには寝れません」


「用事?」


「はい」


 僕は訓練中に「相談がある」ってマナブさんに言われたことを思い出しながら話す。

 昼間じゃなくて夜にって言われたから、何か他の人には聞かれたくないようなことなのかなって思うけど。

 というか本当に何でだろう。受け答え一つもダルいと感じてくる。


「ふーん。じゃ、早めにお風呂は入っちゃおうよ」


「そうします」


「おいおい。いつものキレッキレなレン君はどこにいったんだい!」


「いつもの僕はどんだけキレてたんですか?」










 ハヤタさんの肩を借りながら脱衣所へと何とか辿り着いた。「脱ぐの手伝ってあげるよ」とかいうハヤタさんの戯言を無視して「無視しないでよもぉ」自分で服を脱ぎ、浴室へ入っていった。


「頭でも洗ってあげようか?」


「何故そんなにスキンシップをしたがるんですか」


 ことある事に僕に近づこうとしてきてるよねこの人。人懐っこすぎない?


「……そういえば、ハヤタさんの方は僕のクラスメイトを召喚していたんですね」


「そそ」


 椅子に座り髪の毛をとかし、お湯で髪を濡らした後にハヤタさんに聞いた。ハヤタさんは僕の隣に座ってから短く返した。

 ルルちゃんがいるのが分かったあの時、一通り興奮した後で、ハヤタさんが何であんな変なタイミングで転記してきたって告白したのかが分かった。やっぱり優しい人だな。


「お気遣いありがとうございます」


「んいやぁ、お礼なら体で払って欲しいなぁ」


「おかげで訓練中でも気兼ねなく、同じ世界の僕として振る舞えました」


「あれ? 無視?」

 

 そんなハヤタさんの言葉を右に流し、僕は頭皮を優しくマッサージをするようにシャンプーをする。

 そういえば訓練中は僕とミチルちゃんしかいなかったな。護衛とか監視とか、そういう人達はいないんだ。別世界の人達を嫌ってるから警戒してるかなって思ってたけども。おかげでクラスメイトとも普通に話せたけれども。


(本当にあのレン君……?)


(そうだよ。えと……ミユウさん……?)


(……合ってるよ……そんな恐る恐る聞くなよ……)


(えっと……そんなに意外なの?)


(当たり前だろ! 今ココ別世界だし、自殺したって聞いたし……それに……)


(それに?)


(……性別を履き違えてると思った……)


(……この髪型じゃ何を言っても無意味な気がするからノーコメントでお願いするよ)


 引いてたな皆……そりゃそうだ。今まで男子として接してきた人が急にツインテール何ぞに手を出したんだもん。よし。決めた。いつかハヤタさんの髪をモヒカンにでもしてやろう。


(……どう?)


(……あり)


(よね? 前も良かったけど、今の方も……)


 何故かあの時、大きな悪寒と小さな殺気を感じたのは気の所為だろう。うん。


「ハヤタさんの方こそ。今日マユカさんを見た時はどう思いました?」


 逆にハヤタさんの方はどう思ったんだろうか。気になる。

 小さなタオルを使って体を洗っていたハヤタさんだったが、僕の質問に対しその手を止め、


「興奮した」


 真顔で答えた。


「流石です」


「流石はおかしいよね?」


 ハヤタさんらしい反応で安心した。無反応だったら逆に怖いけども。今度二人っきりにさせられるように色々考えておこうかな。


「んで、今日は何があったのかな? あそこまで疲弊したレン君は久々に見た気がするし」


「何が……えと、そうですね……」


 そこで一旦区切り、シャンプーを洗い流す。

 ちょっと待ってて。流しながらだと喋りにくいから。

 シャンプーの洗い残しが無いのを確認し、話を再開する。


「今日はルルちゃんの新たな一面に驚きと動揺と興奮が溢れまくった一日でしたね」


「すげぇ子だね」


「雑な返しですね」


 一体何を言ってるんだこの人は。ルルちゃんを「すげぇ」の一言だけで表していいわけないでしょうが。


「こっちは男子だけで、なんというか、シンプルにだるかったなぁ……」


「……一体どんな訓練をしたんですか?」


 髪を纏めながら聞く。

 あのハヤタさんにダルいと言わせるとは……何をすればそうなるんだろうか。凄い気になる。参考にしたい。


「聞いてくれる? いいや聞いて!」


「ぉん?」


 タオルにボディソープを付け、体を洗おうとした時、珍しく荒らげるように話し始めたハヤタさんの声に、僕は変な声が出てしまった。


「男子の皆さ、ワガママすぎるんだよ! ド派手に敵をぶっ飛ばしたいからってビームの練習ばっかりしたがるんだよ!」


「お……おおぉ……」


「僕が「先にレイトっていう力の説明からさせてね」言ってるのに全く聞いてくれないしさ!」


「ハ、ハヤタさん? お、落ち着いてください、あの?」


 うわぁ……凄い、ハヤタさんのこんな叫ぶように吐き出す愚痴は初めて聞いたかも……


「「あれ、出ねぇぞ! 何で!?」じゃないよ何度も言ってじゃん感じ取るのが先なんだってさぁ!」


「ちょ、おち、落ち着いてください?」


「あまつさえ、セルント王も爆笑しながら「精進してるな」だってよ! こっちの苦労も知らないでさぁ! がぁぁもぉぉぉ!」


「ストップ! えと、シャラップ、ハヤタさん!」


「んぉ! はぁ、はぁ、ん、はぁ」


 取り乱しすぎでしょ!? マジで何をしたらあのハヤタさんをこんなまでにできるんだよ!? 男子怖いわ!


「……もうやだ。レン君と同じように女子の方行きたい」


「そんなことをしたらセルント王が何て言うんだろう……」


 フルキさんの負担が大きくなりそう……ミチルちゃんに移動してもらうのかな。いや、そんなことしたら僕達を男女別に分けた意味がなくなっちゃうじゃん。ん? 男女別?


「明日女装してセルント王に直談判しに行こうかな」


 思考回路ぶっ壊れてるのかなこの人。

 間の抜けた声じゃなくて、真剣な声がしたよ今。


「諦めましょうよ。女装程度でセルント王が許可するわけないですし」


 体を洗い流し、湯船へと向かいながらハヤタさんに言う。

 女装だけでどうにかなる予感は全くしないんだけどなぁ……どうにかならないと分かっていてもハヤタさんなら本当にやりそう。


「……せめて女装だけでもしたいなぁ?」


「何故ですか!?」


 別にハヤタさんがしたいならすればいいだけの話だし、僕に実害が無いから反対しないけど、何故女装「だけ」はしたいの!?


「レン君も一緒にいかが?」


「いや、やりませんよ!」


 真正面から実害を与えようとしないで! 嫌に決まってるよそんな苦行!


「そっか。そうだよね。存在自体が女装だったもんね」


「……かっ飛ばしますよ?」


 存在自体が女装って何? 何もせずとも女っぽい見た目だってかやかましい。というか良かった。少しずつだけどいつも通りのハヤタさんに戻ってきた。戻らなくても良かったけども。


「そだそだ。レン君はさ、ツチヤ君って子は知ってる?」


「ツチヤ……?」


 ハヤタさんも体を洗い終え、前髪を結んでから、僕の隣に座るように湯船に浸かった。

 ツチヤ……ツチヤって言われても、僕の知ってるツチヤ……ツチヤ!?


「あ! え、えと、はい! 知ってます、けども……」


 唐突に聞かれたその名前に僕は驚きの声を上げる。


 ツチヤ……僕はツッチーって呼んでるその人、僕の数少ない友達が、まさかハヤタさんからその名前が……何でだ……?


「ツ、ツッチーがどうかしたんですか!?」


「ツッチー……がね、実はさ……」


 何か問題でも起こしたのだろうか。だとしたら……


「セルント王に目をつけられた。悪い意味で」


「悪い意味……で……? んと……?」


 悪い意味で目をつけられた……と言われても、そんな簡単に答えが出せるわけないんだけども……何でそんな曖昧な言い方をするんだこの人は! 直でサラッと核心を言ってよ!


「男子の中で唯一、無理矢理ですらレイトを感じ取れなかったんだよ」


「……はぁ!? ゆ! え、唯一ですか!?」


「そ。だからセルント王が、「近いうちに対応せねばな」って言ってた」


「そんなにベラベラと言えるんだったら、最初っからベラベラ言ってくださいよ」


 何のための悩みタイムだったんだ。

 というか近いうちに対応……と、言っても……


「その、僕には分からないんですが……」


「……え?」


「それのどこが悪い意味、何でしょうか?」


「……やっと分かった。レン君ってそっち側の住人なんだね」


「そっち側? えと、何の……?」









「そう言えば、フルキさんは良い子だよね」


「はい?」


「いやぁ、直談判を代行してくれるんだもん良い子だよ」


「え? 直談判……? 何のですか……?」

体を洗う時の説明がなかなかに諄いと自分でも思いました。あと「諄い」って漢字があることにびっくりしています。

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